やめる?やめない?やめられない?! 社長との共闘

地域に耳を傾ける社長の スーパーマーケット

今回の関与事例はスーパーマーケットです。
チェーン店ではなく、社長個人が経営を続けているトップダウン式のお店です。
地域密着型で、生鮮・惣菜などの商品はどれも「高品質」。お客様の声を常に売り場に反映するなど、地元で愛されるお店でした。

関与時の状況: -競合店続出!借金増大!!-

しかし、地域に大型チェーンが次々と出店。
また、円安で仕入高が高騰し、経営は徐々に苦しくなっていきました。
銀行からの借入は億単位でリスケ中。社長自身は年金暮らしができる年齢でしたが、地域のため、従業員のためにも閉店に踏み切れず、会社への貸付金を膨らませていたのです。

分析 -儲けの意識が全然足りてないですよ-

震災直後は利益が出ていたものの、売上は減少傾向にありました。さらに社長自身が高齢のため、体調を崩してしまうことも。
各部門責任者の自覚が欠如する人的要因、仕入高・諸経費の圧迫などが、経営の悪化に拍車をかけていました。

人情味のある社長さんなので、これまでリストラや賃金のカットに踏み出せなかったようです。まずは、経営再建の基本である、経費の絞り込みから始める必要がありました。

対策 -「粗利益って…?」社員を巻き込む経営会議-

毎月2回は社長と会議を行い、様々な対策を提案し、実行に移していただきました。
リスケ、支援法申し込みのアドバイスをはじめ、苦渋の決断ではありますがリストラや賃金のカットも実行していただきました。

仕入先の変更や値下げ交渉、売り場では販促企画や総力祭を打ち出すなど、売上のアップにつながる施策もすべて実行。
さらに無駄な経費、つまり出血を抑えたことで、ようやく従業員にも危機感が芽生えていきました。その後は、各部門責任者も交えた経営会議を行います。

経費削減には限界がありますので、いち早く売上の向上と、同時に「粗利率」の維持向上に目を向け、経営会議を繰り返しました。
近隣は大型チェーン店が囲んでいますので、価格競争では負けてしまいます。つまり、単純な売上増加ではなく、「付加価値をつけること」「粗利率の維持向上」を念頭に置き、「粗利益」を意識した経営にシフトする必要がありました。

ここで書いたのはほんの一部です。会社再建のため、あらゆる方策を用いました。

結果 -資金ショートを日別に把握。苦渋の決断。-

関与を始めた年に、一時は黒字化したのですが、徐々に赤字へと戻っていきました。
大型店の進出や円安といった外的要因があまりにも強く、個人商店の限界が見えてきたのです。

私たちは将来に渡って日々の売上や出費を可視化する日別の資金繰表の作成を指導しました。資金ショートのタイミングをリアルに把握できたことが、「これ以上の資金注入は難しい」という社長の判断の決め手となり、結果としてはお店を閉店することとなりました。

破産の最悪なケースでは、個人財産を注ぎ込むだけ注ぎ込み、空にし、首が回らなくなり自殺をされることもあります。
そうなる前に、「このままだとどうなる?!」という将来のビジョンを示し、「会社を続けない」という選択肢を提供することも、我々の役割だと考えます。

社長とは何でも話し合える関係性を築き、数年ではありましたが、共に走り続けてきました。
お店は閉店となりましたが、社長は「やりきった」という満足感を得られたそうです。
最後に社長からは「ありがとう」というお言葉をいただきました。

担当税理士からのコメント

消費税の増税を目前に控え、今後の資金持出がより増える可能性もあり、閉店は避けられませんでした。
しかし、たとえ悪いゴールが待っていようと、それまでにやれることが沢山あります。
社長とヒザを突き合わせ、やれることをすべてやりきったことで、社長が納得いくかたちでゴールを迎えられたのだと思います。

社長によると、私たちの前の担当税理士はFAXで数字を送ってくるだけだったそうです。
私たちは「会って話をする」ことをモットーにしています。税理士と経営者である前に、まずは人と人との信頼関係を築くことが大切だと考えています。

「お金が回らなくなってきたけど、どうしたら良いか分からない」
「このまま会社を続けていっても良いのか」
迷っているけど話せる相手がいない、そんな時こそ当法人にご相談いただきたいです。
後で振り返ったとき、「良かった…。」とホッとできるような道を一緒に探していきましょう。