マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

会社全体で「儲ける」という信念を共有することの難しさ

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第43号] 会社全体で「儲ける」という信念を共有することの難しさ

2019年2月27日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の43】

『「儲ける」という信念の共有』

会社は儲けなくてはならない。
どの時代においても、どのような政策下にあろうとも、資本主義経済に身を置く以上、儲けを第一に考えることが社長の使命であり、会社のあるべき姿と言える。
組織として事業を行う以上、社長が持つ「儲ける」という信念は、社長から経営幹部を通じ、会社全体で持ち続けることが必要だ。
いま一度後ろを振り返ってほしい。どこまでの層が「儲け続ける」という意識を持てているだろうか?
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これを書く三時間ほど前、私は顧問先で定例の経営会議に出席しておりました。
弊社では顧問先様からご依頼頂き、その会社に一歩踏み込み経営会議に参加させて頂くことがございます。
本日はその経営会議の重要さと、同時にその難しさについても実体験に即してお話させて頂こうと思います。

数字を活かし、どう儲けに繋げるかが会議の肝

出席者は顧問先会長、社長、幹部の方5名と弊社より3名。会議の主題は「どうやって儲けるか」です。この顧問先の売上高は数百億円にのぼります。

会議は冒頭、会長、社長のお話から始まり、弊社から直近の業績についての分析結果をご報告させて頂きます。我々は財務数値を見ることには慣れていますが、それぞれの顧問先の事業の具体的な現場をすべて把握できているわけではありません。そこでまずは前年比較、予算対比あるいは同業他社比較をすることで現状、会社の置かれている状況を数値面で俯瞰的に説明していきます。もちろん「儲け」につながる粗利益率や一人当たり生産性にも言及していきます。

例えば、前期と比較して1億円利益が減少していたとします。その原因は材料費が1億円増加したことによるものとします。我々は全体を見て、「売上が変わらないにも関わらず、材料費が1億円増加したことで粗利益が1億円減少し、粗利益率も○○%下落してしまいました。」というような説明をします。

それに対して社長は、「確かに仰る通りですが、部門別に見ていくと新規事業を始めたX部門でほとんど売上が立たずに材料費だけ2億円かかってしまった一方で、既存のA部門・B部門は仕入先との交渉で値下げに成功し、材料費は1億円改善しているのです。だからA部門・B部門は改善結果がある程度出ています。早急な改善が必要なのはX部門なのです。そのための営業戦略を練り込む必要があります。」というようなことをお話しされます。

前段の我々の説明は、見る人が見れば数字からすぐに分かることです。あくまで数字としての事実確認に過ぎません。分かりやすい例を挙げましたが、同じ資料でも人によって見ているポイントは異なるため、単純な数字の共有といえど疎かにはできません。

これを踏まえてさらに大事なのは後段の社長からの説明であり、このお話で数字の背景とその意味が見えてきます。
事実と背景、数字の表と裏が整理されたところで次はそれらをこの先の儲けにどう活かすかの話です。分かりやすく言えば「改善の施策」という話に段階が進みます。

その会社でも会長、社長を中心に「何を、いつ、どうやって改善していくか」を非常に具体的に話し合われました。我々も皆様の会話の交通整理をしながら会議は進んでいきます。毎回の会議は1時間半から2時間でしょうか。

主体的に臨むということの難しさ

最後に必ず行われるのが、参加者全員の意見感想です。全員に意見感想を求めるのは、今日行った会議を他人事ではなく自分事として今日からの仕事に落とし込んで頂きたいためです。

今日の会議の意見感想の中で、ある幹部の方が次のような感想を述べられました。
「私は経理部に所属していて、正直これまで会議資料を必死に纏め上げるだけで精一杯でした。またそれをやることが経理の役割だとも思っていました。しかしそうではないのですね。経理は経理の立場から会社改善のための意見を言っていかなくてはならないということを自覚しました。」

この方の名誉のためにも申し上げますが、会議資料はかなり細かな分析資料です。それこそ片手間仕事でできるような資料ではありません。実際に資料をまとめ上げるのは非常に骨が折れることと思います。

しかしです。単なる義務感から、数字を整列させることを完成として行う資料作成と、「会社の儲けのためにこの資料から何が読み取れるか」を考えながら行う資料作成とでは、全く違う資料が出来上がります。後者の姿勢で臨めば、資料の一つ一つの数字が意味を持ってくるようになります。

様々な会社で会議をしていて感じるのは、社長以外の方があまり乗り気でない場合があるということです。我々が会議の質を高める工夫が足りないという反省点がある一方で、会議参加者全員が自分事として参加している意識を持たないと会議の意味をなさない、と私は考えます。

参加者の意識が「社長が会計事務所とやっていることに巻き込まれている」という他人事では、当然のことですが、結果を伴わない会議となるでしょう。会議自体も早晩なくなります。そうなったときにやれやれと思う幹部ばかりでは困りものです。

「儲ける」という信念の共有

会議の重要な意義の一つは社長の信念の共有です。「会社は儲けなくては駄目なのだ」という信念を幹部の皆様と共有する、ということがあげられます。もちろん会議ではできるだけ具体的な話をしております。前回会議で話された施策の進行具合、結果についての分析を行い、さらなる改善策を話していきます。

これらも実務的には非常に重要なことですが、社長が今後どのように儲けていくのか、そのために何をするのか、ということを幹部の皆様に理解して頂き、社長の信念を共有することだと思います。そこで共有された信念が幹部の皆様から現場の人たちに具体化された形で伝わっていく、そしてそれが社員全員に浸透した時に初めて会社全体で「儲ける」信念が共有された、ということにつながるのではないでしょうか。

当然のことながら会社において「儲け」に対する意識が最も高いのは、経営者です。自分の人生がかかっていますから当然です。次に幹部の方々となるわけですが、だいぶその意識は社長より弱くなります。社長ほどには会社に人生がかかっていませんから当然です。しかしそれでも、幹部の方々には「他人事」でなく「自分事」としてなぜ会社が儲けなければならないかを感じて頂く必要があるのです。

今日伺った顧問先の社長も「改善しようといろいろな施策を試みているが、それがまだまだ成果として出ていないことを心の底から悔しく思う」と仰っていました。本当に心底悔しいという表情をされていました。会社が儲からなければ皆が安心して働ける場でなくなるかもしれない、ということをどうやって「自分事」として幹部の方々に感じて頂けるのか。儲けのための会議の難しさを感じた一日でした。

会社によってそれぞれ会議の形はございます。
貴社の経営会議にマエサワ税理士法人という外部のパートナーを交えることが、会社全体としてより儲けへの意識を高める一助となることもあろうかと思います。
様々会社に合ったやり方を持っておりますので、是非担当者にご相談ください。

今回も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。