マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

限界利益の伸びを伴わない人件費の伸びは絶対に避けなければならない

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第9号]限界利益の伸びを伴わない人件費の伸びは絶対に避けなければならない

2017年11月08日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人 専務の前沢寿博です。

10月下旬に日経平均が16営業日連続で続伸となりました。珍しく景気のいいニュースとなりました。

ですが…、こうした景気のいいニュースを聞くたびに思うのは、中小企業がこの好景気を肌身に感じているか、ということです。

今回は、会社の儲けが積み上げていくのに望ましい循環が出来ているかどうかを、数字面から見ていきます。是非、ご参考にして頂ければと思います。

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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の9】
限界利益の伸びを伴わない人件費の伸びは絶対に避けなければならない

損益計算書を見るとき、重視すべき項目には様々なものがある。

前期比較や前月比較、各月の趨勢を確認していく際には、
限界利益の伸びと人件費の伸びを確認することが必要だ。
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変動損益計算という考え方があります

本日話の中で、「限界利益」「人件費」というワードが出てきます。
「人件費」はともかく、「限界利益」という言葉をご存じない読者の方もいらっしゃるかもしれませんので、非常に簡単にですが紹介させて頂きます。

皆様の会社の成績表である「損益計算書」、ここには
「売上」-「原価」=「売上総利益(粗利益)」と記載がされています。
「粗利益」より下には「販売費・一般管理費」が載り、「営業利益」が算出されます。

本日出てくる「変動損益計算書」の考え方は、
ざっくり言いますと、「売上」→→→「営業利益」までに引かれる
「原価」と「経費」を「変動的なもの(変動費)」「固定的なもの(固定費)」と分けて考えるものです。

日々の営業では様々な原価や経費が出てきます。
大きく『経費を節減するぞ!』と掲げても、その中には節減できる経費と節減できない経費があります。
つまり従業員ではコントロールできるものと、できないものがあり、それを明確に意識するために役立ちます。

また、本日は「限界利益」と「人件費」という言葉が出てきますが、

「限界利益」とは「売上」-「変動費」のことを言います。
この「変動費」には「原価」以外にも売上に比例して係る諸経費が含まれます。

対して「人件費」は限界利益から差し引かれる「固定費」に含まれます。
一般に人件費と言えば、「役員報酬」「社員給与」「アルバイト給与」と様々ですが、変動損益計算においては、これら全てを「固定費」としたうえで、「コントロール可能」「コントロール不可能」と分けます。
分かりやすく言えば「役員報酬」と「社員給与」は「コントロール不可能」。「アルバイト・パート給与」は「コントロール可能」ということです。

もし最終利益が0なのであるならば、「限界利益=固定費」という図になります。
「固定」と一口に言ってもその中でコントロールしていかなければ黒字化はできませんし、上記で「コントロール不可能」と挙げたものでもコントロールせざるを得ない場面もあるでしょう。

本当は図を用いたいところなのですが、メールマガジンという形式上、言葉を並べるだけとなってしまいます。
ご不明点は遠慮なく弊社の職員にご質問ください。変動損益計算は、伸び悩みを抱える会社への一筋の光明となる考え方かもしれません。

話の中でも繰り返し述べますが、
*「売上に比例しない変動費の伸び」
*「限界利益の伸びを超える人件費(固定費)の伸び」
は危険信号です!
是非その点を意識してお読み頂きたいです。

景気がよくても、儲けが増えないのはなぜ?

好況で日本経済が全体的に上向きなのは、非常に喜ばしいことですが、残念ながら多くの中小企業ではそれをはっきりと実感できていないことかと思います。

その最たる要因として、売上こそ維持すれども、実入り、つまり儲けが減っていることではないでしょうか。
これまでと同じ働きをしているのに売上が維持できず苦しんでいる中小企業が世の中には多数存在します。

そこで多くの中小企業では今までの売上を維持するために、商品を値下げすることでより多くの商品を売る。そのため人手・時間・販売コストなどがが今までより増加する。結果として売上は維持しているものの限界利益(売上から変動費を差し引いた利益)が減少している会社を、私自身少なくない数見てきております。

もちろん値下げをしたくてしている会社など存在しません。取引先からの圧力であったり、あるいは注文数が減っているので仕方なく商品単価を下げていることがほとんどでしょう。
これは日本でここ20年以上ほとんど所得が増加していない状況と高齢化による現役世代の減少が進んだ結果だと感じます。

消費者として「同じ価値なら少しでも安いものを購入し、極力無駄な支出を抑えたい」あるいは「今の自分の生活を維持するだけでも大変」という状況にある人が日本では圧倒的に増加しているからなのでしょう。
残念ながらこの先の日本はさらに厳しい状況に進んでいくものと思われます。

限界利益と人件費の関係から、自社内外の問題を察知する

そこで自社のことにもう一度立ち返ってみましょう。

もし売上と限界利益は社長や従業員さんが一致団結してなんとか維持できたとしても、確実に増加している経費があります。そのひとつが人件費です。
残業が前期よりかさんでいることで人件費が伸びているのか、あるいは新しい人材の登用で人件費が伸びているかどうかは別として、結果的に売上・限界利益確保のために人件費が増加しているのは間違いないのです。

この状況を変動損益計算の形で当期と前期を比較してみましょう。売上高と限界利益は前期と同じだとすると前期比100%と算出されます。ところが人件費は例えば120%といった感じになってきます。

前期であれば売上200、限界利益100、人件費50という数値だったものが、今期は売上200、限界利益100、人件費60となっているということです。
つまり前期は人件費50というコストで限界利益100を稼げていたものが、今期は人件費60をかけなければ限界利益100を稼げない状況に陥っているということです。
実際のところ、従業員の皆様が一生懸命働いてくれたからこそ、人件費60はかかったものの限界利益100を維持できたのです。しかし数字から言えば従業員さんがサボっていた(=非効率)とも言えるのです。

私の言っていることが矛盾しているじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。一生懸命従業員が働いたから限界利益100を維持できたのも事実。しかしその結果、前期は50で済んでいた人件費が今期は60かかってしまったのも事実なのです。
すると、前期は50の人件費で達成できていたことが60必要になったのだから、「その分だけ手間がかかった」と言うのか、「従業員さんがサボった」と言うのかの違いであって、事実として前期より今期は確実に稼ぎづらくなったということなのです。

この状況が起きているとすると、その会社は危険信号です。稼ぎづらい方向に事業が進みつつあるということですから。

原因を突き止め、対策を講じる

何度も申し上げておりますが、会社は儲けを出してなんぼです。どんなに立派なことを言っても赤字会社では信用されませんし、黒字会社だからこそ信用されるのです。そもそも赤字ということは世の中が自社の提供するサービス・商品をそれほど高い価値がないと判断していることに他ならないのです。黒字であればその逆です。だから皆、付加価値の高いサービス・商品を開発しようと躍起になる訳です。
もちろん言うは易し、行うは難しというのは私も重々承知した上での話です。

ですから人件費が限界利益の伸び以上に増えてしまった時には、その原因の徹底的な追究が必要になります。

そもそもの商品力が弱くなっているために、商品単価を下げざるを得なかったのか、仕入商品の価格が上がったにもかかわらず販売単価に乗せられなかったのか、あるいは運賃等の変動コストが上がったためか、はたまたこれら複合要因が重なったものか、このあたりの追究です。

原因が分かれば、仕入業者・運送業者へのタフな価格交渉が待っているのかもしれませんし、得意先との同じくタフな交渉が待っているのかもしれません。もしかしたら新たな商品開発をしなければならないかもしれません。確実に言えることは「何もしなければ、自社の営業成績が好転していくことはありえない」ということです。

東京オリンピックまであと3年を切りました。オリンピック後にオリンピック前の景気を維持できた国は過去ありません。なんとしてもこの3年という時間を大事に使っていきたいものです。
今日、書かせて頂いたことはマエサワの担当者も、情報として皆様に提供していることと思います。もし不十分であればなんなりとお聞き頂ければと思います。

今回もお付き合い頂きまして、ありがとうございました。