マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

『我々は経済界で生きている。従って経営者の考え方をするべき』

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第2号] 『我々は経済界で生きている。従って経営者の考え方をするべき』

2017年7月26日 配信
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マエサワ税理士法人では『月次監査訪問時に社長と必ず話をすること』を徹底しています。

毎回お会いするたびに膝を突き合わせて話をすれば「社長の人となり」、「当方担当者の人となり」をお互いに理解していきます。

そんな中でこちらのご提案が社長に理解され、実行して頂いた結果、社長が「うまくいった」とお感じになられたとき、絶大なる信頼関係が構築されます。

社長を相手にした「提案」の難しさ

こちらが良かれと思ってした提案でも、社長からすると「・・・」だったり、時にはお叱りを受けることもございます。

我々が犯しがちな過ちとして『税務会計の視点のみでご提案をしてしまう』ことが挙げられます。
経営者たる社長からすれば確かに税務会計も経営の一部ではありますが、社長の一番の仕事は売上を立て利益を生み出し続けること。
この部分を忘れたご提案は「・・・」になる可能性が非常に高い。

そこで我々にとって重要になってくるのが、冒頭の「我々は経済界で生きている。従って経営者の考え方をするべき。」という言葉なのです。
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◆◆マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の2◆◆
『我々は経済界で生きている。従って経営者の考え方をするべき。』

我々のサービスの対象は社長である。日本に260万社の会社があるとするなら260万人の社長のみを相手にしていることを忘れてはならない。

日本の人口が1億3千万人とするなら経営者は100人に2人しかいない。100人に2人の考え方をしている特殊な人たち、これが社長である。

社長は常に「いかにして儲けを出すか」について年がら年中頭で考えながらそれを実行に移し続けている。

我々はこの社長に儲けに結び付く提案をしていかなくてはならない。
さもなければ社長は我々に価値を見いだせず、税務顧問契約は破棄されてしまうからだ。

我々にはその社長と同じ土俵に立って会話をする必要がある。枝葉には人それぞれの考え方があるだろう。しかし「いかにして儲けを出すか」という命題はすべての社長に共通である。

「利益が出たのか、出なかったのか」で勝負をしているところ、それが経済界である。
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社長の悩み→我々に望むこと

顧問先様での我々の1年間の仕事の流れを簡単に言えば、

① 毎月1回以上会社へお邪魔し、経理が入力している伝票・証憑類のチェック、修正
② 社長への月次の財務数値を報告
③ 決算時に経理の数値をまとめ、法人税・消費税の申告を行う
④ 会社が法人税・消費税を納税する

となります。

一方で、社長は経営に関して会計事務所の人間に何を望んでいるのでしょうか。

1.いかに利益体質を維持していったらいいのか
2.赤字体質からどうやったら脱却できるか
3.事業承継をしたいが承継候補者(息子)との関係がうまくいっていない
4.事業承継者もおり事業承継をしたいが、株の評価額が高騰し株式譲渡がうまくできそうにない
5.事業承継者がいないから会社を閉めたいが、どう閉めたらいいのか
6.どうやって節税対策をしていけばいいか

等々、挙げるときりがありません。

しかしこういった悩みの相談は誰にでもできる訳でなく、それこそ全てをさらけ出さないと聞けるものでもありませんし、逆に全てをさらけ出さないと聞けないので、結局誰にも相談できず考え込む社長が多いかと思います。
最初に挙げた「我々の仕事」はたしかに我々のやるべきことではあります。
しかし我々はこれだけしか社長に対してサービス提供ができない存在なのでしょうか。

毎月の数字から見える改善点

我々は社長の会社へ行けば、通帳から帳簿から目を通します。
ですから数字に関する部分に基づき経営改善点を見つけることができます。

・粗利益率が異常に低い商品
・粗利益率が異常に低い部門
・多額に発生している固定費 等々

これらは会社内の他の商品や他の部門との比較であったり、同業他社比較であったりするわけです。
また財務経理以外の話でも、社長や奥様や親族の方からも様々な相談を受けますので
社長以外の親族の方のことも理解しております。
もしかするとある意味、我々が社長一家のことを一番知っている一人かもしれません。

利益を出すための提案をすべき

つまり財務数値はもちろん、社長のご家族であったり、取引先であったり、金融機関であったり、と我々は多くの情報を社長と共有しております。
ですから、税理士は単なる月次監査と決算の申告書作成だけのためだけの専門家としてではなく、経営のため、つまり「利益を出すため」の提案を引き出す対象として利用して頂きたいです。
従って我々も税務会計の知識だけで現在の財務数値を正しく算出して決算申告すればよいだけではない、ということを自覚しなければなりません。

利益を出したその先に

例えば、私がお邪魔している会社でも製造業を営み、親子二代にわたり、黒字化を続けて来られた会社があります。
経営環境が変わりつつあるものの、黒字化を維持すべく激変する経営環境に合わせて事業を成長させております。

ただ、いざ三代目に株式を引き継ごうというときに、会社の株式価格が元の価格の20倍にもなっており、今の状況では容易に親から子へ株式譲渡ができない状況でした。しかも、株主構成を見ると初代社長が多くの子供、孫に株式を分けていたので株式自体が拡散しておりました。これも三代目次期社長からすると将来の経営権取得を考えるとやっかいな問題になりかねません。早急に手を打つ必要がありました。

一方でこの会社には大きな工場があり、その工場の敷地と建屋に多額の含み損がありました。
つまり工場建設に要した土地・建物の取得費用が今の時価から見るととても高く、今この時点で工場の土地・建物を外部に売却すれば、多額の損失が発生するような状況でした。

この含み損を顕在化させることで(つまり売却することで)、実際に譲渡損失を出せば、節税につながりますし、株式評価も下げることにもつながります。
ただ工場では今まで通り製品製造を行う訳で、実際に他人に工場や敷地を売ることはできないので、管財会社を設立し、管財会社へ工場を売却しました。
これにより、会社の株式評価が下がり、親族が所有していた株式も次期社長に譲渡することができました。
そして本業も過去最高益を記録しましたが譲渡損失があったおかげで、節税にもつながり、この資金を工場の設備更新に使うプランが立てられております。

経営者の考え方=利益をどう生み出すか、に対する我々の対応は?

我々はあくまで会計事務所ですから、売上を直接的に伸ばすようなコンサルティングはできません。そんな能力があるなら自分でやっているはずです。そこは社長のお仕事だと考えています。
ただそうはいっても、我々は多くの会社のことを知っており、他社の経営情報は豊富に持っております。ですから月次でお邪魔している会社と他の会社と粗利益率や生産性がどれだけ違うか、についていろいろな角度でお話できます。

もちろん、守秘義務がありますので、その義務を順守した上でのお話になりますが。
原因は財務数値から把握できます。

例えば、月次監査の時に、「1.商品別の粗利益率分析」「2.取引先別の粗利益率分析」「3.部門別の粗利益率分析」などを行います。

これらは分析に時間を要しますが、効果は絶大です。
数は出るけれども粗利益率が低い商品、取引先などはよくあるのではないでしょうか。目先の資金繰りを考えると、数が出る商品・取引先は有り難く感じます。しかし長い目で見れば、粗利益率が低いと「労多くして益少なし」の状況に陥りがちです。
どこかのタイミングで切っていかなければならない商品ないし部門であるかもしれません。

なぜ利益が出ないのか、を社長とひとつずつ明らかにしていき、今後どのように利益を出して行くかについてご提案をしていくことで会社が利益を出すための一助になっていく。
これこそが我々の仕事であり、我々自身も経済界に生きていることに他ならないのだと思っております。

今回も長文になりましたが、最後まで読んで頂きましてありがとうございました。