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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第21号] ますます厳しくなる金融機関からの融資
2018年04月25日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人専務理事の前沢寿博です。
今回は、弊社内の研修でも取り扱った記事を題材に、日本の金融機関の現状について「融資」という視点から書かせて頂きます。
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の21】
『ますます厳しくなる金融機関からの融資』
我が国の金融機関の融資の実情は、数少ない財務状態の優れた企業の取り合いである。
事業を評価して融資しようという流れはあるが、現状では過去の利益と不動産を担保に融資をしている。
将来、資金調達で困らないために、オリンピック前の2年間は儲けを貯めるチャンスである。
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実情は「正常先」の奪い合い
経営者の皆様、日本にどれくらいの金融機関があるかご存知でしょうか。
メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合をすべて合計して500行程度あるそうです。 日本の人口は約1億2千万人ですから、24万人に1行という割合になります。
ちなみにアメリカは5万人に1行(金融機関6000行に対し人口は3億人超)、ドイツは4万人に1行(金融機関の数は1900行に対し人口は8000万人超)という割合です。
元々、日本は諸外国と比べて人口に対しての銀行数が少ないのですが、「日本はオーバーバンキング状態に陥っており、新たな貸出需要創出は難しい」という話をよく聞きます。
しかし前述のとおり、アメリカやドイツと比べると、必ずしもオーバーバンキング状態に陥っているとは言えないのです。むしろ、アメリカやドイツの方が金融機関1行当たりではずっと人口が少ないのです。
ではなぜ、日本はオーバーバンキング状態になっていると思われているのでしょうか?
その記事では「500の金融機関で正常先に対する貸出競争が繰り広げられているからだ」と書かれていました。
正常先とは、金融機関が貸し出す取引先を区分している名称の一つで、会社の財務状況により
①正常貸出先 → ②要注意貸出先 → ③要管理貸出先 → ④破綻懸念貸出先 → ⑤実質破綻貸出先 → ⑥破綻貸出先
と分けられている中の、会社の財務状態が一番優れている①の貸出先です。
いつも書いておりますが、日本の法人の3割しか黒字がなく、その中でも文句のつけようのない会社はさらにその1/3程度ではないでしょうか。
申告法人が270万社あるとすれば、たった27万社の正常貸出先を500行で争奪しているということです。
明日を見る借り手、今日を見る貸し手
社長の方々であれば、金融機関から融資を受けるのに様々な経験をされていらっしゃると思います。
そもそも融資を受けるのは資金が必要だからであって、その意味で金融機関は多くの経営者にとって非常に重要な存在です。これを否定することはできないかと思います。
ただ一方で「晴れている日に傘を貸してくれるが、雨が土砂降りの時には傘を取り上げられる」といった表現をされることもあります。
「本当に融資が必要な事業者は無視されており、広大な金融排除が広がっている状況にある」とその記事にも書かれております。
私も顧問先様の月次に伺う際にそういったお話を聞いたり、実際に顧問先様と金融機関に行ったりする中で、融資を受けようとする際に非常に厳しいお話を金融機関からされることがありました。
例えば会社設立当初、経営者に手持ち資金が少なく、また担保となる不動産を持っていない時に、それこそ融資を受けたいので事業計画書を持っていき一通り説明をすると、次のような話をされました。
「この事業計画は間違いなく達成できるのですか?」と。
「100%かどうかはわからないが80%程度は最低でも行けるはずです。」と回答すると、
「どうしてやってもいないのに80%行くとわかるのですか?」と聞かれました。
次に聞かれたのが、「社長は何か不動産を持っていないのですか?ご家族でも構いませんよ」と。
そして融資が受けられたとしても当然、連帯保証人に社長の名前を連ねなければなりません。
となると最初の事業計画書はなんだったのだろう、と思う訳です。
現在のところ、事業の将来性に対して評価を受けることは難しいように感じます。
貸したい会社の姿とは
もちろん、金融機関はボランティアではないので、どんな会社であっても必ず融資をしてほしい、などというつもりは毛頭ありません。
事業の見通しが明るくない会社に対してリスクテイクする場合は高金利で融資を行うことになるでしょうし、それでも危ない場合は担保を取り、連帯保証に社長を入れることもあるかと思います。場合によっては融資を断ることもあるはずです。
ただ、日本の金融機関の少なくない部分で、会社の事業評価ではなく、担保となる不動産評価のみで融資をされているところがあるように思えます。
ここ数年、それを打破しようと国が中心となり金融機関が融資にあたり、会社の事業評価をしようとしていますが、現場で見ているとなかなか実行されていないのが現実のような気がします。
結局、融資を受けられる会社は過去に利益が潤沢にでており、自己資本比率が高い(できれば30%以上)という会社だったり、担保価値が十分にある不動産を所有している会社くらいです。
そうなるといつもの話になってしまいますが、自己資本比率30%以上を目指して、儲けていくしかありません。
儲けていけば純資産はその儲けた分だけ増加していくので、基本的には自己資本比率は上昇します。
資金調達で困らないために
オリンピックまであと2年足らずとなってきました。もしオリンピック後に大不況が待っているとしたら、今が儲けをあげるための大事な時となります。
もし私の言っていることが間違っていて、オリンピック後に好景気が来たとしたら、前沢の奴は嘘を言っていたということになりますが、それならばそれで済む話で、会社として儲かっていれば問題はない訳です。
経営には時には大胆な判断がつきものだと思いますが、基本的に儲かっている方は皆様、非常に慎重で物事を考える際には厳しい状況を想定して動かれているように思えます。
またもうひとつの事実として、実際の顧問先様の数字を見ていると、自己資本比率が30%を超えてくると実は、融資を必要としないようになってくるのです。
そうなると金融機関に「是非ウチで借りてくれませんか?」と非常に低金利でも融資をされるようになります。なんだかモヤモヤした感はぬぐえませんが、実際にはそういったことが起きています。
余談ですが、金融機関も、融資についてはそれなりに低金利で貸し出しているので、融資での利益はほとんど出ていないようです。
もっと言えば投資信託や保険、あるいはM&Aなどの手数料収入が大きな収益源になっているそうです。経営者の皆様にもそういった商品のご紹介が多数あったことと思います。
今存在している地方銀行は107行あるそうですが、それもこれから30行程度に収斂されることになるそうです。
メガバンクといわれる金融機関も従業員数を大幅に減らし、支店も閉鎖しています。
従って、融資に際して会社を評価する目は今以上に厳しくなってくるものと思われます。そしてその目は、第一義的には本業で儲けた利益そのものに向けられます。
是非ともその目に耐えられる数字を作って行って頂ければと思います。
その一助になれるよう我々も力を尽くしてまいりますので、どうぞ引き続き経営の相談相手としてマエサワ税理士法人スタッフ一同をお役立てください。