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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第63号] 金融機関との関わり方
2019年12月4日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の63】
『どういう財務内容を目指すのか?』
資本主義の力は「金」である。
無借金経営、もちろん賞賛すべき状態だ。しかし大事なのは、使うべきときに使える金がきちんとある状態だ。
資本元がどうあれ金に困らない状態を作ることは、経営において一つの到達点とも言えるだろう。
昨今の統計では黒字企業35%と出ているが、そのうち何割が銀行のための黒字であろうか。
役員報酬や減価償却の調整、不良債権にインチキ在庫と枚挙に暇がない。
儲けを出し、使えるゼニを貯める。シンプルではあるが、これが黒字企業の王道である。
貴社の目指す財務内容とは?改めてじっくりお考え頂きたい。
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今日、ほとんどの会社が金融機関との関わりなくして経営を考えることができないのではないかと思います。多くの会社が、設備投資資金や運転資金を金融機関からの融資で調達しています。
立場の違い、文化の違い
融資を受ければ将来返済が待っている訳です。通常であれば借入の返済は事業を通して捻出した儲けでしかできません。ですから我々は社長に「なんとしてでも儲けてください」ということをお話しております。儲けて税金を納めた後のゼニで借入の返済をする、という流れは融資を受けた以上当然の義務となりますが、「なんと殺生なことするのか」と感じることもございます。
一方、金融機関は「1円でも取りっぱぐれないように」と考えます。決算書のチェックや社長とのミーティングなどを行い、将来の返済に対する担保を得ようとしている訳です。
マエサワ税理士法人の顧問先に、欧米系の方が経営されている会社が何件かございます。こういった会社では基本的には金融機関からの借入というものを念頭に置いていないケースが多いように感じます。サービス業が中心ということもありますが、欧米系の経営者はそもそも金融機関から融資を受けて事業資金とするという考え方ではないのです。自分が持っている資金で会社を立ち上げ、儲けを増やしていく中で徐々に会社を拡大していくという文化なのかもしれません。彼らはうまくいかないと判断した時点で会社は畳み、再起は別会社を立ち上げてリスタートするのが普通と考えていらっしゃるようです。日本では一度会社を畳んだ人は信頼を失ってしまい、リスタートのチャンスはほとんどありません。このあたりの文化の違いも聞いていると興味深いものがあります。
自己資本比率への意識
さて、少し脱線してしまいましたが、事業というものは儲けを出さなければならないというのは古今東西どこでも同じ話です。ただ日本の中小企業であれば基本的には金融機関からの融資を軽視することはできません。融資を有利な条件で受けるためには、まずは自己資本比率(自己資本÷総資産)を30%に持っていくことが重要です。自己資本とは貸借対照表の純資産、つまり資本金+資本準備金+利益準備金+繰越利益剰余金の合計のことです。資本金と資本準備金はまさに社長が出資した部分ですので、社長にとっては持出し部分です。繰越利益剰余金は会社が過去に稼いできた儲けの集積です。自己資本比率を上げるには増資などによって持出し部分を増加させるか、儲けを出して繰越利益剰余金を確保するしかありません。いずれにせよ30%まで自己資本比率を上げられれば、金融機関の方から融資のお願いをされるようにもなるでしょう。借入利率も現在であれば1%を当然のように切ってきます。
変化する金融機関との関わり方
それともうひとつ。無借金経営は経営として一つ目指す目標にはなってきます。では(A)借金はあるけれど同じだけの預金があるという実質無借金の経営と、(B)借金なしですが預金もないという無借金経営とは、どちらが好ましい状態なのでしょうか。他の事象がすべてイコールであるなら、(A)の借金はあるけれど同じだけの預金があるという「実質的無借金経営」の方が経営上望ましいといえます。
なぜ(A)なのでしょうか。経営とはいくら石橋を叩いて渡っているつもりでも、ときには想像だにしないことが起こりえます。そんなとき、とにもかくにも現金を持っていれば当座の資金は回ります。そうなった時に金融機関がそれまでと同じように融資を引き受けてくれるかは不透明と言わざるを得ません。今まで良好なお付き合いがあったとしてもです。
ですからいざという時のために、現預金を月商の2か月分くらいは持っていたいものです。たしかに借金をすれば利息はかかってきます。しかし無借金経営に近い状態であれば利率も1%を切ってくるはずです。利息は保険料と考え、万が一に備えて現預金を手元に置いておくことを考えられてはいかがでしょうか。
借金をしていたとしても約定通り返済している限りにおいては、今借りている分をまとめて返済するということにはならないわけですから。
ところで現在、金融機関は都市銀行が5行、地方銀行は102行あるそうです。しかし地方銀行の純利益は近年減少傾向にあり、歯止めがかかっておりません。最近では地方銀行同士の合併なども出てきていますし、先日はSBIホールディングスが福島銀行、島根銀行と資本・業務提携を始めました。SBIホールディングスは全国の地方銀行と資本提携する連合構想を掲げているそうですが、地方銀行からすれば融資では収益が上がらなくなってしまったので、SBIと提携することで手数料収入を増やそうとしているのでしょうか。対するSBIも地方銀行の持っている情報に魅力はあるでしょうし、今であれば経営状況の芳しくない地方銀行との資本提携であれば、費用対効果が良いと感じているのかもしれません。
こうした金融再編のニュースに触れると「今後社長の皆様それぞれはどの金融機関とお付き合いしたらいいのか考えます。会社で借りている金融機関が合併されれば、それまでの条件などは全てなかったものになり、次回の融資が今まで通り同じ条件で受けられるかどうかは分からなくなります。対策として調達を複数行から行ってリスク分散を図るのもひとつの選択となります。信用金庫から借りているのであれば、地方銀行からも借り入れる、などといったことを考えられても良いかもしれません。
このあたりはマエサワ税理士法人の担当者にもご相談してみてください。今回もお読み頂きましてありがとうございました。