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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第74号] お金の怖さと難しさ
2020年5月7日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の74】
『危機を乗り切ったその先に』
コロナによる経済的打撃に対し、国から資金繰り面の補助・助成・融資の策が次々と打ち出されている。
もらった金は返す必要はない。しかし借りた金は返さなくてはならない。
書けば当たり前の話ではあるが、現実にそれが出来る出来ないは別だ。
正しい正しくない、良い悪いの話ではなく、我々は資本主義に生きているということを忘れてはならない。
経済危機の渦に巻き込まれてもなお生き残れた企業は強い。
この難を乗り切り、儲けを取り戻し、更なる成長を目指そうではないか。
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当初5月6日までとされていた緊急事態宣言は、5月末まで延長されました。
この1か月間もさまざまな顧問先経営者の方々にお会いしました。コロナ禍が事業に及ぼす影響の大小には違いがあるものの、それぞれが緊急事態宣言に様々な対応をされておりました。どういった対応が正しいとか正しくないということではないかと思います。やはり置かれている立場や考え方でそれぞれの正しさは全て異なるはずですから、それについて改めてお話することはありません。
コロナウイルスに対する顧問先様の対応としては、
・積極的にテレワークを取り入れて会社へ来る頻度を減らしている会社
・緊急事態宣言によりお客さんが激減したため店舗を休業した会社
・コロナウイルスに細心の注意を払いつつ通常通り活動を続けている会社
などがあります。
今回のコロナウイルスの影響で人の流れは完全にストップしているので、特に営業系の仕事は通常の形ではできなくなっています。そしてサービス業は飲食業を含め、おそらく戦後最大の悪影響を受けている業種になるかと思います。
中長期でどのように返済をしていくのか?
会社が生き残るためには資金を回さなければならないので、自己資金だけでこの3,4か月が回せなければ、この3、4か月分+αは金融機関の融資を受ける必要があろうかと思います。こんなことは私が言うまでもなく、どの経営者もまずはこのことを考え、既に金融機関へ融資申請を行っていらっしゃることと思います。
筆舌に尽くしがたい現実ですが、融資を受けてもいずれ借金は返済しなければなりません。冷徹ではありますが、借金は将来の事業の儲けで返済するしかありません。
一方で今回の融資を金融機関の立場で考えると、セーフティネットであれば保証協会の保証が80%ないし100%ついていますので、万一融資が焦げ付いたとしても金融機関の痛手は20%ないし0%で済みます。ですから保証協会で保証の枠がつけば、こういう状況ですから問題なく融資に応じることになろうかと思います。問題はその先です。
今後、ワクチンや特効薬が開発されコロナウイルスが終息した後、さらに2年、5年、10年と経過した後、もし返済額に見合う儲けを会社が出していなければ、会社は返済不足分を金融機関から融資を受けなければなりません。
しかしこの頃になれば、コロナウイルスの制度融資はなくなっているでしょうから、金融機関からの通常の融資になってくるはずです。通常の融資というのは、融資が焦げ付くリスクを金融機関が負う融資です。当然、金融機関は融資に対してより厳しい目を向けてくるでしょう。
金融機関も資本主義で生きている
厳しい目とはつまり「この会社に融資をしたとして、返済できるだけの儲けをこの会社が継続して上げ続けられるか」という目線で評価されるということです。
今や金融機関自体が厳しい生き残り競争にさらされております。現状106行の地方銀行がありますが、これが集約されていくことになるでしょう。
例えば、御社で融資を受けている金融機関A銀行が別の金融機関B銀行に吸収合併されたとしましょう。これまでは当たり前だった折り返し融資を念頭に置いて「今回も宜しくお願いします」と言ってもB銀行には融資を断られる可能性があります。御社が融資を受けていたのは吸収合併される前のA銀行であって、今やその銀行は存在していないということなるからです。
借り入れを約定通り返済している限りにおいて、金融機関が何か言ってくることはありません。しかし、何らかの理由により約定通りの返済ができなくなり条件変更のお願いをする時、あるいは折り返し融資のお願いをする時に、吸収された側の金融機関から融資を受けていた場合は、そういったことへ対応してもらえない可能性があるということを考えておくべきです。
やはり我々は、儲けを出し続けること、一人当たり生産性を落とさないことを目指さなければなりません。そうすれば自己資本比率は上がっていきます。そのためにはなんとしてもお客様に手に取って頂ける、そしてそれなりの報酬を頂ける商品を創ることが最重要課題になってきます。
金融機関選びも難しくなります。今良いからといって将来も良いという保証は一つもない訳ですから。ひとつの金融機関よりは複数の金融機関から借りた方がリスク分散にはなります。信用金庫よりは地方銀行、地方銀行よりはメガバンクの方が一般的な信頼性は高いと思われます。ただし、金利は一般的にはその逆になるでしょう。
会社が現預金を持っているということはお金を遊ばせているだけだから、様々な投資をすべきという考えもありますし、一面ではその通りだと思います。しかし、やはり現預金はある程度持っていた方が経営上の万一への対応がよりしやすいのは事実です。あとは投資とのバランスだけです。そういう意味で金利も大きな負担でなければ、今回のような事態に備えるための保険料だと考えるのもひとつかもしれません。
まだまだ会社経営が通常状態に戻るには時間がかかるでしょうし社長の皆様の悩みも深いものがあると察しますが、従業員の皆さんの前では是非、元気にやっていきましょう。