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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第82号] 人材とは何なのでしょうか
2020年8月26日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の82】
『相手が求めるものに重きを置く』
一般的には、何事にも真面目さは大切であり、努力は必要であると言えよう。
ところが場面が資本主義・経済社会に変わると、時として真面目さが仇となることや、ズレた努力をしてしまうことがある。
資本主義・経済社会においては、まず”儲ける”という視点で、真面目さも努力も発揮のしどころを考えるべきだろう。
自分がこう思うではなく、金を払う相手が求める真面目さ・努力をすることが、結果お互いの儲けにも繋がるものだ。
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税理士業界の人材動向
私どもの業界の話になってしまい恐縮ではありますが、先週(8月18日から20日)税理士試験が実施されました。今年は新型コロナウイルス感染防止対策もあり、普段試験会場となっている私立大学は使用できず、幕張メッセなどの代替会場にて試験が執り行われました。試験会場といえばどうしても3密(密閉、密集、密接)になってしまいますから、主催者側は気を使わざるを得ません。
受験者も心穏やかではなかったと思います。税理士試験は国家試験です。5科目の合格が必要となりますが、1科目の合格を勝ち取るだけでも大変です。税理士事務所に社会人として初めて入社する時点で5科目揃っている人は極々稀です。ほとんどの人が一部科目合格の状況で社会人となっていきます。
ですから社会に出れば、会社で働きながら平日の夜、あるいは土日に専門学校へ通い、残っている科目の合格を勝ち取るための勉強に励むことになります。ちなみに5科目合格するまでの勉強時間は短い人で2500時間、長い人で5000時間から6000時間だそうです。つまり1科目あたり500時間から1000時間程度の時間を割いている訳です。
そんな状況に置かれた受験生にとっての新型コロナウイルス感染症は本当にやり場のない怒りに他ならなかったと思います。専門学校の授業も普段とは違った部分もあったでしょうし、何より試験日程や試験会場がいつもと変わり、勉強以外に気を遣う部分も多かったことでしょう。とはいえ、客観的に見れば、これらのことは等しく受験生全員に起こったことなので、これらを乗り越えて頑張るしかなかったわけですが。
そして先週末、マエサワ税理士法人にとっても年に2回の重要なイベントがございました。就職説明会兼入社試験です。税理士試験が行われた先週の週末に執り行われました。マエサワ税理士法人では、大手専門学校が主催する会計事務所入社希望者向けの就職説明会に30年来参加しております。今年は新型コロナウイルスの影響で、大手専門学校2社のうち1社が就職説明会開催を断念されたので、残り一社の専門学校主催の就職説明会のみとなりました。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、近年、税理士受験生は減少の一途を辿っております。受験者数が多かった2010年には実人員ベースで5万人を超えておりましたが、2019年には3万人を割り込みました。
景気がよいと上場会社が大幅に求職者を増加させ、求職者もこれに呼応して上場会社志望が増加します。資格業はいわゆる「堅い職業」だという見方をされるので好景気だと求職者は少なく、不景気になると増加する傾向にあります。最近まで上場会社の業績は良かっただけにその影響で税理士業界に人材が流入してこなかった部分はあると思います。ただ最近の大幅な税理士試験受験者数減少の主な要因は、税理士試験を5科目合格するために相当の努力を要するにもかかわらず、それに対する将来の対価がそれほどではないようにみえる、つまり税理士業界自体の魅力が他の業界に比してなくなっていることが挙げられるのだと思います。
何が魅力的でないかといえば、やはり給料面が大きいと思います。上場会社に入れば中小企業と比べて平均給料は高い。私は監査法人時代にある上場会社にほぼ毎日のように行っている時がありました。主に財務経理の方とのやりとりでしたが、この方たちの中で夕方7時、8時に帰る人など皆無でした。さらに激しい競争が垣間見えました。病気に倒れる人、心の病に倒れる人、様々な人を見ました。財務経理でこれです。営業といったら何をか言わんやです。当たり前ですが上場会社だから儲かっているのではなく、徹底的に儲けに執着することで最終的に儲けを残しているのが上場会社なのだと感じました。
よき人材に求めること
そこから見ると税理士業界はまだまだ儲けに対して貪欲とは言えません。自分たちが儲けるためにお客様にできる限りのサービスを提供しているか、お客様にとってのパートナーになっているかと問われれば、そのレベルに達するのは至難の業です。たとえば記帳代行を会計事務所に頼んでいたとして、社長はその事務所の税理士に経営上の相談をするでしょうか。私だったら自分の会社の経理を任せている人に最も重要な相談をしようとは思いません。
我々業界には真面目な人が多い、と感じます。決められたことはきっちりしますし、仕事に必要であれば知識を吸収することに労を厭いません。我々の業務が法律業務であることを考えると、この真面目さは必須です。
しかし、問題解決のための提案や将来事象に対する準備などについては、この真面目さが邪魔にさえなるときがあります。こういったことに基本的に正解はありません。強いて言うのであれば実行した結果、社長が思った方向に行けば正解なのかもしれません。我々は社長に役立つ提案をする、これが基本的には会社の儲けにつながるはずだからです。
我々は知識を持っているがゆえにそれを過信し、「こうあるべきだ」と考えてしまい、社長に「こうすべきだ」と言ってしまいがちです。しかし、判断されるのはあくまで社長。私は社長の経営上の悩みに「こういった方法があります」という提案をすることこそ、我々がすべきことだと考えております。
結局、我々にとっての「よき人材」は知識をどん欲に吸収でき、その知識で正確な申告書を作成できる能力と、知識を提案という形に変え社長に提案をし、その提案のメリットデメリットを説き、社長が判断する一助となる能力、それぞれの能力の高さと互いのバランスを兼ね揃えた人です。
マエサワ税理士法人は、これからも「儲けのための提案」ができる人材を育てることを最重要課題と考え、精進してまいります。これからもマエサワ税理士法人および職員一同、宜しくお願い致します。