マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

社長の苦悩

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第85号] 社長の苦悩

2020年10月7日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の85】

『社長の悩みに寄り添う』

社長とは悩み多き生き物である。
誰彼かまわず胸の内を話せるわけではなく、このコロナ危機は抱える辛労辛苦が絶えないことであろう。

月次監査の場は会社の未来を話す場ではあるが、同時に社長から様々な話を伺える場でもある。
経営をはじめとした様々な社長のお悩みを一緒に考えられる立場であり続けたい。

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新型コロナウイルス感染症の発症が中国武漢で確認されたのが今年の1月あたり。その頃はまだ対岸の火事としか感じていなかったのが、わずか3か月で日本でも急速に広がり始め、緊急事態宣言が発出されたのが4月7日。それから1か月、今までにないくらい人の動きは止まり経済活動も停滞しました。拡大をほぼ抑え込めたという判断からゴールデンウィーク明けの5月6日に緊急事態宣言が解除されました。

しかし残念ながらその後再び感染が拡がり、最近では感染爆発には至らないがぎりぎりのところで推移しているようです。

将来どう動いたら良いか?を考える場であるべき

新型コロナウイルス感染症をどう捉えるか、どう対応するか、は本当に人それぞれであるように思います。コロナ禍であっても月次監査は必ず来てほしい、来てもらって構わない、という社長もいらっしゃれば、やはり健康不安があるので月次監査はコロナの様子を見ながらいったんお休みしましょうという社長もいらっしゃいます。
この点は我々の月次監査に対する考えを広げていくべきところであります。顧問先様のご要望に合わせ、直接お会いできない顧問先様についてはweb会議を導入するなどして対応させていただいております。

ただし、月次監査は単に数字を見て良かった、悪かった、を社長にお伝えする場ではありません。そもそも前月の数字の良し悪しについては多くの社長はほぼ正確に予想されているように思います。重要なのはその数字を確定、確認した上で社長とお話をさせて頂き、経営の状況を共有し、将来に向けてどうするか、その策を作っていくことです。

ですから直接お会いできても、web会議でお会いしたとしても、そういったことを社長と我々が共有できる場が実現できるのであれば問題はない、と思っております。逆に、数字の表面をなぞるだけの月次監査であるならば、たとえ直接お会いできてもほとんど意味はありません。

人事を尽くして天命を待つ

今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延の間に月次監査を行って感じたのは、非常事態における社長の皆様の冷静さと苦悩です。経営の結果は冷徹にも全て数字に出てきます。だからこそその数字を冷静に分析し、いつまでにいくら資金が必要か、そのためにはいくら融資を受けなければならないか、を冷静に叩き出します。そこまでの動きもその後の動きも素早いのが儲かる経営者、社長です。規模が大きい会社ほど、出ていく資金も大きなものになります。資金がストップしてしまえば、そこで商売が終わってしまいますから、時間が勝負です。このような短期間での決断の連続を何人もの社長がこなされていました。そのおかげで売上が半減、会社によっては8割減の状況でもコロナ禍をほとんどの会社が生き抜こうとしております。

我々が社長とお話する時は我々と社長だけで話すことがほとんどです。社長の本音をお伺いすることになります。「当面の資金繰りの目途はついた」とはおっしゃるものの、売上が依然としてコロナ前とはかけ離れており、いつコロナが落ち着くのかが分からないという現状において、社長にかかる重圧は並大抵ではありません。

規模の大きな会社では固定費が多くなり、売上が一定以上上がらないと固定費回収がままならないので、固定費削減により損益分岐点売上を下げる、ということを考えます。固定費削減で最初に挙がるのが人件費です。

経済が回復した際にはまた復帰してもらうといっても一度解雇してしまうとそれも難しく、一方で社員を休業させれば、雇用調整助成金で給料分は補助を受けられるので、思い切って休業状態にしている会社もあります。

また、中には協力業者を切ることで固定費を削減し、損益分岐点売上を下げようとしている会社もあります。経済が不調な今、まずは損益分岐点売上を下げ、できるだけ外注に頼らず自社で賄うようにシフトし、コロナ前の売上の7割でも利益が出る体質に会社を変えようとされています。

多くの社長が苦悩している今ですが、すごさというか精神力を感じる社長がいらっしゃいます。深い悩みがあるにもかかわらず、カラカラっと笑い飛ばしている感じです。今、3か月後、半年後と深く考え、できる対策はした上でもう現状やれる手は打ち尽くしたから、あとはコロナが収まるのを待つのみ、まさに人事を尽くして天命を待つの心境であるように見えます。もちろんそうはいってもいろいろ考え、悩み、きりがない時間を過ごされているのだろうと思います。しかしそういう苦悩している姿を社員にはおろか我々にも見せない、というのは本当にすごい経営者だと思います。

いま、全ての経営者は未曾有の経済状況に果敢に挑んでいらっしゃいます。我々も少しでも皆様に役立てるよう尽力してまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。