マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

社長の苦悩2

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第86号] 社長の苦悩2

2020年10月21日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の86】

『潜在する問題と真摯に向き合う』

経営上のリスクは考え出せばキリがないが、厳しい言い方をすればそれは企業の弱点とも言える。
その一つ一つのリスクに対する向き合い方で、窮境時の命運は大きく分かれる。
窮境に陥った際に浮き彫りとなった企業ごとの問題を「コロナだから仕方がない」で流さず、前向きに立て直し次に備えて頂きたい。

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月次監査の際、ある社長が「うちの会社の仕事は社員一人一人にぶら下がっているので、配置転換が容易ではない。」と仰いました。また、その社長は「うちの役員クラスは65歳から70歳になろうとしている人達ばかりなので、できればこの1,2年の間にこの人たちの仕事を若い社員に引き継いでもらいたい。」とも仰っていました。

どちらも社長の本音だと思います。
「仕事が人についている」というのは、その社員とお客様との間に強い信頼関係があるということです。しかし信頼関係は常にある種の「もろさ」を内包しているように思います。
最初のうちはお互いに遠慮がありますから、適度な緊張感をもちながらコミュニケーションが取られます。しかし付き合いが長くなり慣れが出てくると、例えば少し無理な注文をしたり金銭の授受が雑になったりといった、ちょっとした甘えのようなものが生まれてくることがあります。。それでも一方はせっかく築いた信頼関係を崩しても仕方ないと考え、我慢をします。しかしもう一方は相手に我慢を強いていることも露知らず、自分にとって都合のよい仕事をし始めます。そうなると一方は我慢の連続となり、何かの問題が引き金となり最悪、取引が終了してしまいます。こういったことは実は日常茶飯事に起きています。

評価は金を払う側が決めるもの

顧問先の皆様もマエサワ税理士法人も経済という世界で事業を営んでいます。商品やサービスを提供することでその対価としてお金を頂き、儲けを生み出しております。儲けを多く出せるか否かはすなわち「商品やサービスの付加価値が顧客満足を上回るか否か」です。その判断や評価はお金を出す側が行う、という原理原則があります。ところがその原理原則を踏み外してしまい、自分が考えるやるべきことをやっているはずだから問題ない、と考えてしまえば次第に客は離れていきます。

繰り返しになりますが、お金を払っている人が自分をどう評価しているかを考えなければなりません。ところが仕事に人がついている場合には、時間が経つにつれてお金を払っている人が自分をどう評価しているかよりも、自分がやるべきと考えていることしかやらなくなる傾向にあるように思えます。「このお客であればこのくらいの金額でこのくらいのことをしておけばいいだろう」と。相手のことを考えた上でそのようにし、お客様にも満足頂いていれば問題ありません。しかし評価はお客様がするもの。満足頂いているかどうかはわからないことが多いものです。

我々税理士にも全く同じことが当てはまります。「税理士っていうのは税務会計のことだけを話すもんだろう」「商売のことを聞かれても商売の専門家ではないからわからないよ」というのは同業者の発言でもよく聞きます。発言者は深く意識せずに発言しているように思います。しかし「これくらいでいいだろう」の心持ちは言動にダイレクトに表れているのです。

そういった言動は敏感な経営者にはいとも簡単に見透かされてしまいます。経営者の商売に対する考えと我々の言動がずれていれば、経営者は非常に不愉快な思いをされているはずです。そもそも本当に我々が信用に足るのか、ということにもなりかねません。

コロナで浮き彫りになった問題に目を向ける

話が脱線してしまいましたが、人に仕事がついており、その仕事が年長の役員クラスの仕事であれば、それを自ら引き継ごうと思う社員などいるはずもありません。そもそも役員も仕事を譲る気などないのですから。私は社長に「社長がいったん役員の持っている仕事を全て引き上げてくるしかないのではないでしょうか。」とご提案申し上げました。

実はこの社長はまだ30代。歴史ある会社を継がれたばかりです。私が見る限りでは前社長が急逝し、現社長はまだ経験不足であることもあり、会社の中では孤立している状況です。社長というのは売上を創り、儲けを出さないと社員には認めてもらえません。売上を創って儲けの出ている社長の会社では、些末な問題を飲み込む勢いがあります。しかし、思うように儲けの出ていない社長の会社では傍から見ると小さなほころびが致命的な問題になってしまうように感じます。

この社長にも売上を創り、儲けを出すという結果が必要なのではないか、と感じました。役員が持っている仕事ですから、その引継ぎは社長も難儀することと思います。しかしこれがうまくいき、若い社長自身で仕事を軌道に乗せることができれば社員の見方は変わるはずです。そして難儀すること自体が社長にとっても良い経験につながるはずですし、仕事に人がつくという感覚を体得することができるのではないでしょうか。

コロナ禍で売上を思うように挙げられず儲けが出ずに苦労されている経営者の方々が多くいらっしゃいます。しかし、事業がうまくいかない原因はコロナ前から内包していたものの、コロナ禍によってその原因の顕在化を止められなくなった会社もあるように感じております。そういった「直すべきところ」を直すという意味ではこの非常事態は絶好のチャンスともいえます。あくまで前向きに苦境に立ち向かい、自社の改革を進めている経営者が、確実にいらっしゃるのです。

マエサワ税理士法人もこういった顧問先様と社長の考え方を共有し続けられるようやってまいりますので、引き続き宜しくお願い致します。