マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

どうやって生き残るか

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第87号] どうやって生き残るか

2020年11月4日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の87】

『迅速な資金繰りが選択肢を守る』

短期的には生き残ることを第一に、中長期的には儲けを取り戻す。
そのために耐え忍ぶのか、やり方を変えるのか、会社の実情により戦略は分かれる。当然に事業を続けるのか、やめるのかといった話も出てくるだろう。
言わずもがな最優先は資金繰りだ。一時的に落ち着いても気持ちは引き締め、採れる選択肢を失わないように心掛けたい。

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コロナ禍での資金捻出

「これからの私の人生は借金返済で終わるな。」A社の社長がおっしゃった言葉です。年間売上数十億、従業員も400人を超える会社です。コロナ禍で壊滅的に売上が減少しました。事業継続のために借入金で運転資金を捻出するしかありませんでした。社長は非常に前向きですし、どういう状況に陥っても冷静に判断し、行動される方です。諦める方ではありません。それだけにこの言葉を聞いたときにはこの社長の置かれている現実の厳しさを感じずにはいられませんでした。

B社ではコロナ前まで月の売上が40億から50億でしたが、コロナ禍で売上が落ちたこともあり、コスト削減を徹底的に断行し、損益分岐点売上を35億円まで下げました。それでも現状では利益が出ない状況にあり、さらに損益分岐点売上を30億に引き下げるためのコスト削減の施策を実施しようとしております。売上が上向きになった時には仕事が回らなくなるかもしれないとわかりつつも現状では損益分岐点売上を下げることでとにかく利益が戻ってくることを第一に考えてコスト削減を断行されております。

イベント業を営んでいるC社は、イベントを主催している上場会社と太いパイプでつながっています。コロナ禍によりイベント会場で集客する従来の形式のイベントは開催できなくなってしまいました。webイベントなど新しい形での実施はございますが、本来からは程遠い売上しか上げられずにいます。まだまだ世の中の雰囲気はたくさんの人を集客してイベントを実施することを許容していません。上場会社もそういった雰囲気でイベントを強行するのはリスクは冒せないのです。C社は計画的な休業や雇用調整助成金の申請を行いつつ、とにかく余計な支出を抑え耐え忍んでいる状態です。

一方で今のところはコロナ禍の影響を大きく受けずになんとか売上を維持できている会社ももちろんございます。医業も(内科はまだまだ厳しそうですが、それ以外のところでは)かなり患者さんの数が戻ってきているところもあります。スーパーもコロナ禍でむしろ売上を伸ばしております。そしてコロナに関係ない業種、たとえば地方で採石業を営んでいる会社や信用情報を扱っている会社の業績は順調です。

中長期的には厳しい経済環境

短期的な状況はこのように様々な様相ですが、中長期的に考えると日本の経済環境はより厳しいものになると考えられております。根拠はコロナ禍に見舞われる前から言われていたことですが、人口減少、高齢化社会の深刻化です。

世界を見れば人口を伸ばしている中国とインドが今後GDPを伸ばしていくと予想されています。この2国では(政治体制はともかく経済は)完全に資本主義が貫かれています。日本の経済は世界から見れば社会主義的に見られているようです。コロナ禍であるにもかかわらず中国のGDPは既にプラスに転じているそうです。外的な環境変化に素早く対応しています。日本はといえばなかなか素早い対応とまでは行けていないようです。

これからも経営をしていくためには中長期的には儲けが絶対に必要です。そのためにはやはり社会に受け入れられる商品・サービスを持つことが必須です。しかしコロナ禍において短期的には儲けではなく目の前の売上をとる必要がある場合もあります。追加融資による支援が期待できない場合には、持っている資金が全てです。いつ止むか知れないコロナ禍が過ぎ去るまで、その資金を食いつぶしていくしかないという会社もあると思います。

早め早めの資金繰り予測を

そういった会社では粗利益云々の前にある程度の売上を確保しなければ、急激な売上減少による資金繰りの悪化を招いてしまいます。あるいは製造業では工場を回して売上に繋げないと工場の固定費が賄えなくなります。こういう状況ではどこの会社も少しでも売上を立てようと安値で取引することになります。会社は資金ショートすればその瞬間終わってしまいます。苦しい判断ではありますが、目の前の売上を取りにいくしかありません。危機的な経済状況に置いて助けになるのはやはり金です。

平時であれば安売りをして粗利益率を下げるよりも何とかよい商品・サービスを創り、粗利益率の上昇につなげましょう、ということを申し上げておりました。しかしコロナ禍において十分な経済活動が戻ってきていない今、そしてコロナ融資が一服してしまい更なる融資が期待できなくなってきた今、持っている会社経営にとって金が全てです。

厳しい経済環境がまだ続きます。短中期の資金繰り予測がますます重要になってきます。様々な可能性ということを考えられての経営となりますが、我々もその一助となるべくやってまいります。どうぞ宜しくお願い致します。