マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

1929年の世界恐慌とは

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第88号] 1929年の世界恐慌とは

2020年11月18日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の88】

『過去から学び、未来に活かす』

経営において将来を予測し儲かる方向へ舵取りをすることは何より大切だ。
その思考では過去の数字はもちろん、経営者の成功や失敗の経験が土台となってくる。
未曽有の危機ではあるが、自社の歴史から学べる対応はもうないだろうか?
今と過去は違うと安易に切り捨てず、改めて成功や失敗を振り返り激動を乗り越えて頂きたい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新型コロナウイルス拡大による経済への影響は「世界恐慌以来」などと言われております。ジャーナリストである池上彰さんと増田ユリヤさんの共著『コロナ時代の経済危機』という本に、その世界恐慌についてわかりやすく纏められていました。

世界恐慌とコロナ危機

1929年10月24日にニューヨークの株式市場(ウォール街)での株価暴落をきっかけとして大恐慌が始まりました。その後、工業生産の急落、企業の倒産、商業・貿易の不振が一挙にすすみ、銀行などの金融機関の閉鎖や倒産が相次ぎました。そして労働者の4人に1人が失業。

ちなみに失業者数で見ると世界恐慌時にはおよそ1300万人が失業したのに対し、今回のコロナ危機ではこの数か月で2000万人以上が仕事を失ったそうです。

1918年の第一次世界大戦終結はアメリカに好況をもたらしました。ヨーロッパ諸国に貸し付けていた多額の戦費の回収が寄与していたようです。

好景気の下、労働者たる消費者は高額な不動産をローンを組んで購入するようになりました。このブームがやがて不動産バブルになっていきます。つまり住むために不動産を購入するだけでなく、投資対象にもなってきたのです。これと同じように株式も投資対象になってきました。

株式投資ブームが高まっていた1928年8月にアメリカ中央銀行のFRB(米連邦準備制度理事会)が公定歩合を引き上げています。これはこのブームの高まりを落ち着かせるためのメッセージです。金利を引き上げれば株式投資をするための借り入れが心理的にしづらくなります。

これからもずっと株価は上がると信じていた人がFRBの公定歩合引き上げを見て、もしかすると株価は落ちるかもしれないと不安に駆られる。そうであるならば株価の高い今のうちに回収しておこうということになる。それが一気に起きたのが1929年10月23日だったわけです。そして損してでもこれ以上の損を食い止めるために厖大な売り注文が入ったのが10月24日。

ただこの日をきっかけに不況局面に入ったものの、株価はこのまま一気に落ちてはいかず、多少持ち直す場面もありつつ、1933年2月に底値をうつまで徐々に下がり続けたそうです。

不況時における政府の関わり方

当時、アメリカのフーバー大統領は経済に介入しない方針を取っていたそうです。政府が民間のことに口を出すべきではないという「小さな政府」が望ましいと考えていたからです。結果から見れば、平時は「小さな政府」が望ましいとしても、緊急時は本来、国が主導していかなくてはならなかったのでしょう。

さらにフーバー大統領が財政均衡主義をとったことも不況が長期化した原因の一つだそうです。つまり税収に見合った予算しか組まなかったということです。それが普通ではないかとも思われますが、不況下においては国債を発行してお金を集めることで公共事業を推進し、雇用を創出し、賃金を支払い、その賃金で税金を支払ったり、消費財を消費したりして、とにかくお金を回すことが重要になってきます。当時のアメリカはそれをしなかったということです。

またフーバー大統領はアメリカ産業を守るために輸入品に高関税をかけました。これが不況を長引かせたさらなる一因になりました。自分の国の経済を守るためとはいえ、この頃には既に世界中で貿易が発達しており、自国だけで経済を回せる規模ではなくなっていたということです。

高関税をかけられていた相手はヨーロッパ諸国。自国商品に高関税をかけられては商売になりません。そうなると今度はアメリカに対して高関税をかけていきます。いわゆる報復関税です。これはまさに今、アメリカと中国がしていることそのものです。

当時は結局、資源や植民地を持てる国であるアメリカ、イギリス、フランスなどが自分たちの経済圏を作っていきました。これがブロック経済といわれるものです。これにより世界貿易はさらに縮小していきます。

そして持たざる国である日本、ドイツ、イタリアは資源を求めて近隣諸国へ侵略することになっていきます。これが第二次世界大戦につながったそうです。

変革期を力強く乗り越える

あらためて世界恐慌の流れを俯瞰すると、「歴史は繰り返すものだ」と感じずにはいられません。日本でもあと1,2年のうちに本格的な不況がやってきて、今コロナ禍の影響をまともに受けていない事業にも悪い影響を与える可能性が高いと思われます。

ただ当時と違うのは情報伝達の圧倒的な速度です。必要な情報が瞬時に把握できるため、対処の仕方によっては世界恐慌と同じ失敗を繰り返さずにすむかもしれない、と思います。事実、中国では7月から9月のGDPは早くもプラス成長に戻しております。

コロナ禍で世界も日本も未曽有の変革期を迎えております。日本は世界恐慌以後、第二次世界大戦で敗戦し、国土が焼け野原となり荒廃したところから一度はジャパンアズナンバーワンといわれるまでに回復した国でもあります。
そのために企業経営に不可欠なもの、それは「大きなエネルギー」と「イノベーション」ではないでしょうか。大きな熱量と知恵の創出によりもう一度自身の事業を見つめ直して、令和の時代に必要とされる事業を創っていかなければと感じました。

この変革期をお客様と共に乗り越えるマエサワ税理士法人でありたいと強く思っております。今後ともよろしくお願いいたします。