マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

相続の難しさ③

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第95号] 相続の難しさ③

2021年2月24日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の95】

『じっくりと話し合い、道を整える』

相続の問題は一つ一つにその家の事情があり、相続人の主張も異なる。
感情は人の数だけ正解があり、相手の正解が自分にとっての正解でないことも珍しくない。
それ故、心の落としどころを探ることに難儀する。
先々振り返り、一人一人が良かったと思えるような解決と納得を目指したいものだ。

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改めて思うことではありますが、当事者全員が納得する相続というのは本当に難しいものです。これは相続財産の多寡だけでなく、相続財産の種類、相続人の人数、相続人と被相続人との関係、相続人同士の関係など様々な要因が係わってくるからです。

法律的な解決と感情的な納得は異なる

この間、知り合いからこんな相談を受けました。彼の奥様のお母様が他界されたとのことで相続をどうしたらよいかの相談でした。相続財産は土地付きの住宅が主な財産で、相続人は彼の奥様とそのお姉様の2人。姉妹ともに婚姻されており、旦那さんは2人ともサラリーマンです。

相続税自体は何千万になるということはありません。お母様が残された相続財産をどう2人に相続させるかが問題になってきます。

●長女の主張
「自分はお母さんを養ってきた。この家は私と家族が住んでおり、売却をするつもりはない。代償として金銭を妹に払わなければならないことは理解しているが、手元にお金がないので金融機関から借りてなんとかするつもりである。しかし不動産の時価の半分の額となると数千万になるので、それは難しい。」

●次女の主張
「家には長女が住んでもらって構わないが、不動産の時価の半分の現金はもらいたい。」

お互いの主張に行き過ぎた話はでてきておりませんが、解決策が見いだせないとことが皆様にも感じて頂けるかと思います。不動産があるならば例えば、姉妹2人の共有名義にしたり、あるいは土地を分筆して姉妹それぞれの名義にしたりといった方法も考えられます。しかしひとつの土地を分筆すると土地としての価値が落ちてしまいますし、共有であればそれは防げても、将来姉妹のどちらかが売却を望んだ時に、もう一方が売却を望まないときには結局問題が顕在化します。

不動産を売却して金銭にすることができればお互いに残された財産を分けることができますが、この不動産には長女が住んでおり、相続財産であるけれども住まいとしても使っており、またこの不動産に対する思いもあるので、不動産の売却は話を伺っている限りでは難しいと感じます。

不動産を担保に入れて融資を受けるという方法もありますが、そもそも融資を受けても旦那さんのお給料以外に返済原資がなく、現実的ではありません。

こういったことを解決できる弁護士さんをご紹介頂けますか、というご相談を受けることもございます。確かに法律的には解決できる弁護士さんはいらっしゃるかと思います。しかし法律的に解決できることと感情的に納得できることとは違うように感じます。弁護士さんを立てて裁判沙汰にしてしまうと、その後親族としての付き合いはなくなってしまうというケースもしばしば見受けられます。

ですからそのことをよくよく理解されている方以外にはなるべく当事者間での解決を勧めております。

財産を残す側が付けられる道

人が常に合理的に動く存在であれば特に問題はないのですが、私そしておそらく皆様もそうであるように、人は時に感情で動いてしまうことがたびたびございます。相続はその最たるものであると感じます。例えそれが外部から見て間違っている行動に見えても、当事者からすれば感情のとおりに動いているので、正しいと信じる行動なのかもしれません。

あるいは上述のとおり、外部から見ても主張としては合理性を欠いているとはいえない場合でも、解決策がないということがあり得るのが相続です。

普段我々は経営者たる社長と社長の生業とされている事業経営について、社長とお話させて頂いております。事業経営については基本的には「儲けること」が最重要事項となります。もちろん感情を大事にしなければいけない部分がないことはないですが、それを第一に考えていては経営の大局を見誤ってしまいかねません。ですから社長の行っている事業経営が経済合理性にかなっているか否かを我々は第一に見ていきます。

社長もそのことをよく理解されているので、「経済合理性に照らして」という意味において話はスムーズに進むことが多いですし、意見が異なったとしても最終判断は社長がされるので、特に感情的なしこりを残すこともございません。

しかし、相続となると社長だけでなく、社長の奥様、お子様など普段我々がお話していない方、さらにいえば経済合理性ではなく、感情の部分を大切にされている方も話の中心にいらっしゃいます。本当に重要だと思うのは、やはり財産を残す側の方々が心身お元気なうちに将来どのように財産を相続させていくかを具体的に決めていくことです。

やはり問題が起きるのは、親御さんがいなくなってからが圧倒的に多いようです。財産を残す側からすればどうしてそこまでやらなければならないの、という話にもなりますが、一族が後年争うことになるよりはと考えて頂くしかないかもしれません。

相続は時間をかけてじっくり行った方がいいようです。考えが時間とともに変わっていくこともあるからです。時間軸を長く取れれば手立てもそれだけ増やせます。マエサワ税理士法人ではクライアントのご要望に合わせた「相続会議」でも数多くの実績を残しております。是非ともご活用ください。