■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第106号] 生産性を高める
2021年7月28日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の106】
『顧客のニーズを探究する 』
自分が思う「顧客が良いと思う商品」と顧客が思う「顧客が良いと思う商品」は似ているようで大きく異なる。良い商品とは、自分がどう感じるかではなく、金を払う人が良いと感じる商品のことであり、それこそが儲かる商品である。
儲かる商品・サービスの開発は、生産性向上の第一歩である。
コロナ禍で多変する顧客ニーズにも応えられる企業となって頂きたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は経済を少し広い視点でお話しさせて頂こうと思います。
最近の日本政府の企業に対する政策を振り返ってみると、まずはコロナ禍に見舞われたところで、「ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者」に対して持続化給付金が支給されました。また「新型コロナウイルス感染症の影響」により、「事業活動の縮小」を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために、「労使間の協定」に基づき、「雇用調整(休業)」を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成するものとして雇用調整助成金が支給されました。さらに営業時間短縮などの要請に協力した事業者に対して感染防止協力金(時短営業協力金、休業協力金)が支給されました。
これらの給付金等はコロナ禍で苦しんでいる企業を広く助成するために支給され、特に雇用維持を目的とした雇用調整助成金などは現在も支給が続けられています。
“維持”から”向上”に舵を切った助成金
ただ国庫も当然限界に近付いており、早晩助成金の減額や打ち切りも出てくるものと思われます。そんな中で1.1兆円の予算が割り振られた補助金が事業再構築補助金です。このメールマガジンでもご紹介させて頂いたこともあるので、皆様ご存知の方も多いかと思います。
コロナ禍以前から中小企業施策として「ものづくり補助金」を実施してきましたが、残念ながら生産性向上にはつながらなかったことから、「事業再構築補助金」ができました。
ではなぜ生産性を向上させなければならないのでしょうか。デービット・アトキンソンという方が「日本企業の勝算」という著書の中でそのことに言及しています。本当にその通りだと感じられた部分をご紹介させて頂きます。もちろん誰かひとりの言っていることが正解とは限りませんし、いつものように「経済の面」から見た答え探しをしているので、一つの考え方として読んで頂ければ幸いです。
デービット・アトキンソンさんは1992年にゴールドマン・サックス社に入社後、日本の不良債権の実態を暴露したレポートで注目を浴び、その後、小西美術工藝社に入社し、2017年から日本政府観光局特別顧問を務めていらっしゃいます。
社会が求める商品・サービスをつくり続ける
「日本企業の勝算」の中で特に印象的な部分は
・日本の生産性が低い原因は、全企業の半分強の企業の売上が平均して5000万円しかないくらい、小さい企業が多い
・2018年の日本の国際競争力は世界第5位にもかかわらず、日本の生産性は世界第28位と低位である
というところです。
ひとつめについては別の言い方で「日本の産業構造が非効率である」とも言っております。小規模事業所で働く人の割合の大小が、生産性の高低を左右しているということです。大企業で働く人の割合が大きい国ほど生産性が高くなるという実証データも出ておりました。
たしかに日本の労働生産性を見ると、中小企業庁のデータによれば2018年の大企業の労働生産性が1400万円弱に対し、中小企業のそれは550万円ほどです。
ふたつめについては、もう10年以上前になるかと思いますが、当時アップル社が「i-Pod」(「i-Pad」ではありません)で世界を席巻していた時、SONY社の社員の発した言葉が雑誌記事になっておりました。『「i-Pod」の技術はそれほど高度な技術ではなく、SONY社の方が技術的に優れている』、という趣旨の記事でした。
この事例はまさに国際競争力と生産性の乖離の理由を物語っているように思います。作る側がよいと思うものと社会が求めているもののギャップが大きいことが日本の生産性の低い理由のひとつではないでしょうか。
では大企業だけが生き残り、中小企業はなくなるのではないか、あるいは中小企業はこの国には不要な存在ではないのか、という話にもなりがちです。
日本の政策には「中小企業はより生産性を高めるべきである」という考えが根底にあるようです。それが事業再構築補助金の制度趣旨にもなっているからです。
しかしだからといって中小企業が全くなくなるかと言えば、それもあり得ません。中堅企業、小規模事業者あわせて68.8%の従業者が従事している現実がありますから。ただM&Aなどにより規模を大規模化していく企業が増えていくでしょうし、中小企業で生き残っていくにしても、生産性の問題は常に付きまとっていきます。
中小企業の経営者としてはやはり自分の会社の生産性を現状からどう引き上げていくかが大きな課題だと思います。そのためにも社会に必要とされる商品・サービスを提供できる会社であり続けること、そしてそれを実践できる商品・サービスの開発をし続けること、に尽きます。
マエサワ税理士法人が顧問先様の売上を直接創ることは残念ながらできません。しかしながら社長の皆様とどう考えて経営をしていけば儲けられる会社であり続けられるかということは社長の皆様と共有してまいりますので、引き続き宜しくお願い致します。