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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第109号] 稼ぐことの難しさ
2021年9月8日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の109】
『立場を理解したその先に 』
日々の経営には様々な立場の人間が携わる。
社長、従業員、債権者、顧客等、その全ての中心にあるのはお金である。
経営者として相手の立場を理解した行動は当然に求められる。
だがピントをズラしてほしくないのは、経営者はその上で儲けに繋がる行動が求められるということだ。
立場違えどゴールが異なることばかりではない。
一見利害が異なる場合でも、根気強く儲けに繋がる道を探して頂きたい。
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ある顧問先様のお話です。この顧問先様の会社には多くの社員がおり、また多くの固定資産を所有しております。コロナ禍で事業が休業すれば、雇用調整助成金により人件費を抑えることはできますが、固定資産はリースにより取得しているものがほとんどですので、毎月のリース料はこれまで同様毎月支払う必要があります。もっともコロナ禍ですので、多くのリース会社はリース料の先延ばしに協力的なところが多く、リース料についても現状、待って頂いているところが多いようです。
事業を全国展開しているこの会社では、人件費やリース料以外にも多くの経費が発生します。営業所の家賃やその他固定的な手数料等、毎月の支払いを合計するとかなりの金額になってきます。月々の支払いと自社の手持資金を考えると、相当の資金があったとしても1年の時間を稼ぐのがやっとの状況です。
こういった状況なので金融機関へ融資の協力を仰ぐことになってきます。いわゆるコロナ融資を受けることはできました。中小企業に対して実行されたコロナ融資は、比較的規模の小さな会社であれば十二分な融資を受けられる制度だったように思います。一方で、一定以上の規模の中堅企業にとっては、実行された融資額は必ずしも十分とは言えないものでした。経営者はその先も資金繰りについて頭を悩まさざるをえず、本業の立て直しの時間を削がれることになりました。
実際にコロナ融資で資金繰りの悪化を乗り越えた中小企業は非常に多いと思います。例えば飲食業界は他業界に比べ厚い助成を受けております。緊急事態宣言などの人流抑制策を取っている以上、当然のことですが、人流抑制により被害を受けている業界は飲食業界だけでないのも事実です。しかしながら業界としての規模や発信力がないと思うような救いの手が伸びてこないことに、やるせなさが募ります。
出してほしい事業計画(金融機関の目線)
少し横道にそれてしまいましたが、冒頭の会社の話に戻ると金融機関から融資を受けるにあたっては将来計画の提出を求められます。ところが、計画を作成するにもコロナがいつ収束するのかというのは現段階では誰にもわかりません。
金融機関の立場で考えれば、計画を見ながら事業の実現可能性を検討し、融資をするか否かの決定を行い、融資を行うと決定した場合にはいくら融資をするかを決めていくことになります。従ってその計画は融資するかどうかにあたって極めて重要な書類になります。
一方で計画を作成する側の企業からすると、実現可能な計画の提出といわれてもコロナ禍がいつ収束するかわからない段階での計画作成なので実際のところ実現可能な計画を作成することは難しいわけです。しかもこの計画については少しずつ赤字幅が減少するような計画を求められます。金融機関側から見れば融資した資金の回収を将来計らなければならないのですから当然のことです。
ですから会社は金融機関の意に沿った計画を作成せざるをえません。例えば緊急事態宣言が予定通り解除される前提で計画を作成し提出することになります。ところが緊急事態宣言の延長が決定されてしまうと、当然、提出した計画通りには実績は推移しません。
金融機関としては計画を達成できていなければ追加の融資は厳しい、と言わざるを得ません。金融機関からすれば当然のことです。それだけにやるせなさを感じずにはいられないのです。
出したい事業計画(経営者の目線)
社長はコロナ禍がそう簡単に収まらないことを予想して、当初融資を受ける際、「コロナ禍が収まるまで1年間完全に会社を休眠状態にしたいので、そのための資金をまとめて融資してほしい」と頼んだそうです。
しかし金融機関には「全く動かない会社に融資するのは難しい」と言われてしまいました。従って融資を受けるために、ある程度会社を動かして売上実績を作るしかありませんでした。しかしご承知のとおりコロナ禍は長期化。実績は金融機関に提出した計画数値には遠く及びませんでした。結果として、会社を休業状態にした場合に比べて赤字幅は増加しました。
金融機関にも事情があることはわかります。これは金融機関の対応が良いとか悪いとかいう話ではありません。それでも、ただ単純に「企業経営の厳しさ」を改めて強く感じました。
今社長がやるべきことは、融資を受けるために赤字幅をどうやって小さくしていくか、具体的にはダウンサイジングをどのように図っていくか、その中においても売上をどうやって1円でも多く上げていくか、そのための計画と実行です。非常に難しい経営上の舵取りが求められています。
そしてアフターコロナとなったとき、守りの経営から再び攻めの経営に転換を図り、いかに早く黒字化していき、黒字幅を再び大きくしていくかが求められるようになってきます。世の中の目まぐるしい変化に会社と社長が対応し、局面ごとに社長が経営判断を適切に行わなくてはなりません。
コロナ禍といっても大きな影響を受けた会社もあれば、あまり影響を受けていない会社、逆に業績を伸ばしている会社も存在します。経営者の置かれた立場はそれぞれ違いますが、マエサワ税理士法人としては様々な状況に置かれている社長がいらっしゃるということを強く意識して月次監査へ望んでまいります。