■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第116号] 自利利他
2021年12月15日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の116】
『生産性を”高める” 』
働き方改革やDXの推進は大いに結構であり、結果効率という側面からの生産性は高まるかもしれない。だがそれだけで儲ける力はつくのだろうか?
生産性は高まるものではなく高めるものである。
相手が価値を感じる”良い商品”を創り、儲ける力をつけ生産性を高めていただきたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
12月1日の日本経済新聞に「生産年齢人口、ピークの95年比13.9%減」という記事が出ておりました。
経済活動の主な担い手となる生産年齢人口(15~64歳)は7,508万7,865人となり、ピークだった1995年の8,716万4,721人に比べ13.9%少なくなっているそうです。そして人口減時代の成長は「一人ひとりの能力を高め、規制緩和にも取り組んで生産性をどう押し上げるかにかかっている」ということが書かれておりました。
一方で日本の労働生産性(労働時間あたりベース)の伸び率はアベノミクス下の2012年から2019年まで年平均1.1%と一定の改善がみられたそうです。
それでも、2020年時点で日本人が1時間あたりに生み出す付加価値は48.1ドル。主要7カ国(G7)で最も低くなっており、経済協力開発機構(OECD)各国平均の54.0ドルも下回るそうです。
これまで政府は女性の社会進出や高齢者の雇用増加により、生産年齢人口の減少に対処してきていましたが、その効果も失われつつあります。
日本国総計としてのGDPは生産年齢人口が確保できる限りにおいて維持はできますが、一人当たりの生産性が低ければ、現状のGDPの維持すら厳しくなります。生産年齢人口の増加が見込まれなくなった今の日本では、一人当たり生産性の増加こそが生命線になってくるのではないでしょうか。
誰が価値を感じるか?を意識する
しかしながら現時点において、すでに日本はその波に乗り遅れてしまっているように感じます。中小企業がこの波についていくのは大変かもしれませんが、旧態依然とした業務が自社内に残っているとすれば今こそ改善する機会だと感じます。
ただ、DXの推進は効率化を図ることはできますが、それだけでは十分な生産性向上は難しいです。効率化を図ることで時間を得ることができます。この時間で「新たな価値の創造」をする。その時点で初めて生産性が向上するのです。
「新たな価値の創造」とは、つまり儲けの出せる価格で売れる商品、製品、サービスの開発をしていくことです。これはいつも申し上げている話です。社長の皆様であれば本当にこの部分で常にご苦労されていることと思います。
相手から見た”良い商品”を
今は良くとも、10年後あるいは20年後にも会社が隆々とした形で存在し続けるには、一にも二にも「儲かる商品、製品、サービス」です。これを持つか持たないかで、生産性を高められるか否かが決まってしまいます。
日本の過去を振り返れば、製造業が圧倒的に稼いでおりました。昭和の時代です。しかし韓国に追いつかれ、やがて中国の後塵を排するようになりました。今、日本で世界に対抗できる製造業は、企業でいえばトヨタくらいです。そのトヨタとて世界で見れば時価純資産価値で42位です(週刊ダイヤモンド2019.5.18)。
しかし現在の世界に目を向けると、稼いでいる企業のランキングで製造業が上位を占めているかといえばそうでもありません。時価純資産価値の上位にはマイクロソフト、アップル、アマゾン、アルファベットなどの企業が入っております。これらの企業は純粋な製造業というより、ITを駆使して消費者に利便性を追求した製品を提供しています。「モノ」ではなく「(できる)コト」を提供しています。当然ですがDXの最先端をいっております。
日本にも世界から見れば優れた技術はたくさんあります。昔、アップルが発売したiPod(アイポッド、iPadではありません、念のため)という携帯音楽プレーヤーが大ヒットしたことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。その様子を見て当時のSONY社員が次のように話したそうです。「技術的にはSONYの機器の方が優れている。iPodは大した機能もないのになぜ売れるのか」と。
SONY社員の言う「技術」が何を指すのか、音質か、操作性か、私にはわかりません。ただ、(私を含む)消費者からするとそんな難しい技術など別に求めていないのです。普段使うのにかっこよく見えるというデザイン性やイメージ戦略、音楽のインストールのしやすさといった利便性、などがiPod成功の鍵であったように思います。「技術的に優れているから」購入するというものではなかったわけです。
つまり「自社から見た」いい製品、商品、サービスではなく、「相手から見た」いい製品、商品、サービスを創れているかどうかが非常に重要なのです。
マエサワ税理士法人もこの視点をずらすことなく顧問先様とともに歩んで参ります。「マエサワが考える」いいサービスではなく、「顧問先様が考える」いいサービスを常に意識していきたいと考えております。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。