マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

ウィズコロナにおける税務調査について

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第120号] ウィズコロナにおける税務調査について

2022年2月9日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の120】

『結果として税がある 』


儲かる社長は自社の数字ときちんと向き合っている。

経営でどこを攻めるか、どこを引くかそんな判断の基となるものが生きた数字である。

税金や調査を気にしない経営者はいないが、それらは良い数字の結果の産物だ。

まずは儲けること。その上で参考にして頂きたい。

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コロナが落ち着き再開された税務調査

1月24日付の日本経済新聞に『税務調査、量から質へ』という記事が掲載されておりました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、コロナ禍において、特に緊急事態宣言下では税務調査は基本的には行われておりませんでした。

実地調査件数を見ても年間8万件から10万件近くで推移していたにもかかわらず、2020年は2万件程度になっております。これも2020年の最初の緊急事態宣言前後までに行われた調査だけで、その後はほぼ調査は行われていなかったのではないかと思われます。

その後コロナ第5波が収まりつつあった2021年11月から税務調査も本格的に再始動したようです。マエサワ税理士法人でも顧問先様である法人の税務調査が立て続けに入っております。それと同時に所得税のおける財産債務調書の提出の有無についての確認もコロナ禍前に比べ厳しくなっているように感じます。

アフターコロナでは特に法人税収が厳しくなることを想定して実地調査も今まで以上に厳しくなってくると思われます。例えば以下のような法人では、今後税務調査が実施される可能性が高くなるといえます。

  • コロナ禍で景気好調の業種
  • 現金決済がある業種
  • グループ間取引の多い会社
  • 売上、粗利、買掛金、売掛金、棚卸等の変動の激しい会社

コロナ禍でなかなかコロナ前のような件数の税務調査も実施できません。そこで調査件数という量ではなく、質で補おうとしているということです。質とはつまるところ「悪質・大型案件に照準」をつけているということです。

それを表すように2020事務年度(20年7月から21年6月)の法人税の申告漏れ金額は全体で約5,286億円と2019事務年度より約32%減、追徴税額も1,207億円と約27%減った一方で、調査1件あたりの申告漏れ金額は2倍に跳ね上がり、2,116万円で過去最高となったそうです。

例年のような調査件数を確保できない分、事前の調査などにより力を注ぎ、悪質性などが高いと見込まれる企業の調査に集中した結果と見られています。

所得税や相続税の調査も法人税と同様に、実地調査件数が減る半面、1件あたりの規模が大きくなったそうです。

個人などを対象とした所得税の実地調査件数は約6割減の23,804件にとどまりましたが、調査の結果指摘された1件あたりの申告漏れ金額は約33%増の1,257万円となったそうです。

相続税でも実地調査件数はほぼ半減したそうですが、1件あたりの申告漏れ金額は3,496万円と2割強増加で追徴税額も943万円と過去10年で最高となったそうです。

さらに今後も実地調査件数を一気に増やすのはかなり厳しいので、手紙や電話による連絡など納税者と接触する機会を増やしていくことは重要とし、さらに消費税の不正還付など悪質な納税者の調査に重点を置くなどメリハリをつけた対応で臨む、としているようです。

誰がための経理か

すべての顧問先様が、売上を拡大し、利益を最大化しようと努力なされています。その結果として、売上が大きく伸びれば、税務署の目に留まることもあります。利益が大きく伸びても同様です。また一方で、売上が大きく伸びたのに利益が伸びていなければ、それも税務署の目には留まります。

そういう意味では、税務調査は、意識的に避けられるものではありません。

軽微な科目名の変更など、より目立たないような(適法性を保った)決算書の作成はもちろん常に心掛けております。しかし「調査が来ないようにする」という税務申告テクニックの決定打は、残念ながら存在しません。

経営者は何よりもまず「利益の最大化」を目指すべきです。結果として税務調査の対象となった場合は、粛々と対応する、という「開き直り」の境地に至る必要があるかもしれません。

利益の最大化を目指し、さまざまな試行錯誤をされる会社は、その努力の結果が決算書に反映されます。しかし、いわゆる「目立つ決算書」になってしまうことを避けるために試行錯誤を怠るというのは、本末転倒以外の何ものでもありません。

経営上の取引には、多種多様な取扱規程が存在します。

税法に照らして明らかに誤った会計処理はその判定に悩むことはありませんが、中には良いとも悪いとも明確に線引きができない、グレーゾーンも存在します。そうした取引については、ひとつひとつ丁寧に証憑書類を保存し、判断根拠となる書面を適正に保存する必要がございます。税務調査で論点となった場合の準備は、その都度的確に行っておく必要があるでしょう。

 会社はなぜ経理処理を行うのか、といえば、「どれだけ稼ぎ」「どれだけの財産がどういった種類の財産で形成されているか」を日々確認した上で、これから先の商売をどのように経営していくか、経営の舵取りに使うためです。

もちろんこの儲けに応じて法人税が算定されますので、税額計算のためにも経理処理を適時適切に行っていくことは当然のことではありますが、税務を第一義的に考えて経理処理するわけではありません。

とはいえ、税務調査があればほとんどの会社で少なからず調査官から指摘を受けます。貸借対照表に問題のある科目があればおそらく時間をかけて処理することになるでしょう。しかしそれをするにもある程度の儲けが出ていなければ適切に処理していくことができません。

マエサワ税理士法人としても将来の経営に役立つ数値を社長と共有していくと同時に、各取引の税務上のリスクについても社長にご説明し、社長の判断に適時的確な情報提供をしてまいります。

経営に必要な数値を導き出すための処理と税務のバランスを上手に取っていく必要があろうかと思います。そのためにマエサワ税理士法人職員一同、税務を意識しつつも経営に資する情報提供を社長にさせて頂くことを念頭に置くということを今後も実践してまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。