マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

決算を前に確認したいこと

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第121号] 決算を前に確認したいこと

2022年2月23日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の121】

『銭から目を離さないこと 』

自社の貸借対照表をいつも気にしているだろうか?
ついつい今月の売上は?利益は?と損益計算書に目が行きがちなものだ。

貸借対照表に載る資産も負債も、銭が姿を変えたものだ。
決して目を離して良いものではないし、不明な雑勘定があって良いわけがない。

貸借対照表は経営者の思想そのものとも言われる。
是非とも儲けと銭の循環を意識し、死んでいる銭がないようにして頂きたい。

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もうすぐ3月になります。コロナ禍も丸2年が経過しました。コロナ禍によって財務数値が悪化してしまった顧問先様も少なくありません。第6波も未だ落ち着きを見せておりませんが、新年度は是非とも経営を上昇基調へ持っていきましょう。

経済全体が停滞すれば経営が落ち込むのは当然のこととはいえ、「コロナ禍だから仕方がない」ですまないのが経営です。コロナ禍においても必死の努力で生き抜いている顧問先社長とお話していてひしひし感じるのは、この先1、2年が踏ん張りどころだということです。

なぜかといえば、コロナ融資の返済が始まったことが挙げられます。借入の返済は事業利益、儲けだけが原資になってきますので、まずは事業で儲けなくてはなりません。コロナ禍が治まった後、コロナ禍前のように経済が元に戻ればよいのですが、行動様式の変化や人々の考え方の変化が少なからずあることで、今までと同じ事業形態ではコロナ禍前と同じ儲けを創ることが難しいこともあるでしょう。

事業は常に変化を求められるものですが、今回は特に大きな変化を市場から求められているように感じます。

資金回収の停滞にご注意を

さて、3月は一年の中でも法人の決算ピークとなりますが、今回は決算を前に財務数値から見て確認しておきたい事項についてお話していきたいと思います。

貸倒懸念債権の有無について

コロナ禍で経営状況が悪化した取引先が出てきております。倒産や法的再生手続をしている取引先に対する債権、1年以上取引、入金のない会社に対する債権については貸し倒れの発生した事業年度で貸倒処理しなければ、税務上、損金処理できなくなりますのでご確認ください。

また、経営面から見ても既に発生してしまった貸倒債権は致し方ないとしても、今後も貸倒懸念リスクは高まるものと思われます。新規取引先は売上増加要因となるので非常に魅力的ではありますが、貸し倒れになってしまっては元も子もありません。与信管理をしっかり行うことで貸し倒れリスクを減らしていきましょう。急激に売上が増加している取引先や自社売上に占める割合の大きな取引先なども要注意です。

在庫の多寡について

在庫の整理をしましょう。在庫の中に滞留在庫がないか、売れない在庫がないか確認しましょう。売れない在庫は倉庫の場所を取り、倉庫料を余計に払うことになるのみならず、在庫が過多になることで倉庫からの在庫の取り出しにも時間がかかるようになるなど、良いことがありません。売れない在庫の整理は必須です。税務上、不良在庫を落とすには外部に売却ないしは廃棄しなければ落とすことができません。とはいえ、これを放置し無駄な倉庫料を払ったり、仕事の効率化を妨げるのでは本末転倒になってしまいます。まずは適正在庫を把握し、その在庫以上に在庫を持たないよう管理していく、不良在庫を抱えない、ということに注意していくことが重要です。

決算だからということでなく、常日頃から倉庫内の整理整頓、清潔を心掛けていくことで在庫過多、不良在庫から脱却できるようになるはずです。

融資について

コロナ禍では必然的に融資を受け、資金流出に備えて現預金を保有する流れになっております。コロナ禍が治まったとしても経営を安定させるのはなかなか簡単なことではありません。毎期安定した決算を迎えられるとは限りません。だとすれば決算前の今のうちに融資を受けるのも一つかもしれません。金融機関に対する支払利息はいざというときの資金をプールしておくための保険料のようなものだと考えるのもひとつかもしれません。ただし融資による資金は将来返さなければならないものですから、資金繰りが苦しいときのために基本的には貯めておくべき資金です。これができないようであればむしろ融資を受けるべきではないでしょう。

先程は決算を控えて考慮すべき事項を書かせて頂きましたが、皆様お気づきのようにこれらは決算時に限らず、いつでも気にしておくべきことです。やはり儲けを上手に出される社長の皆様は常日頃から、売掛債権の回収、在庫、資金繰りには特に注意されております。どれも結局は直接、「銭」につながるからです。

在庫も売掛債権も「銭」が姿を変えているだけで、在庫は売却し、キャッシュで回収すると「銭」として手元に戻ってきます。売掛債権も回収してこその「銭」です。「銭」の怖さを知る社長ほど、そのことを熟知されているので、不必要な在庫は持ちませんし、取引先ごとの債権額を気にしています。

逆にそのあたりの意識が弱いと、在庫はある程度持っていた方が便利だ、ということで余剰在庫を持ちがちです。

円安、世界中での原料高、輸送コスト高となっている中、日本経済だけが世界から取り残されているようです。この中で生き残っていくのはどんな企業でも厳しいとは思いますが、マエサワ税理士法人は顧問先様と変化の波に対応してまいりたいと存じます。