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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第125号] 資産のリスク分散
2022年4月20日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の125】
『稼いだ金をどう守るか? 』
「儲ける・貯める」、経営の王道がこれに尽きるという話はこれまでも度々してきた。
現預金を現預金のまま貯めることは、流動性の観点からは最も強力である。しかし、自国の通貨が相対的に弱くなることを想定した場合、円を円のまま貯め続けることそのもののリスク管理も必要となるだろう。
何はともあれまずは儲けること、その次に儲けた金をどのような形で貯めるのが最適か。その時代・環境に合わせて柔軟に考えたい。
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コロナ禍の第6波はまだ終息を迎えてはいないものの、日本でもようやく人が動きだしたように思います。
その日本ですが、円安に歯止めがかかりません。先日1ドル=126円を突破しました。また世界各国で金利上昇が始まっているにもかかわらず、日本は相変わらず超低金利です。ロシアがウクライナへ侵攻を始めたにもかかわらず、円高に振れずに円安となっております。
今までの日本であれば、世界で動乱が起きれば、世界中の資金が日本の円に集まってきました。日本円は安全資産と見做されたのです。ところが今回のロシアのウクライナ侵攻では円が買われるどころか、円が売られドルが買われる始末です。
これは「金利の低い円で運用するより、金利の高いドルで運用した方がよい」という判断が根底にあります。円が売られドルが買われ、ドル需要が高まり円需要は少なくなり、結果として需要が少なくなった円は相対的に需要の高まったドルに対して安くなる、つまり円安ドル高という状態になったわけです。今から1年前の2021年4月には1ドル=108円ほどでしたが、たった1年で1ドル126円まで円安が進行しております。
日本の経済力低下の兆候
10年、20年、30年先の日本経済を考えた場合、残念ながら日本の競争力は相対的に低下していくと私は考えておりました。そしてそれに合わせて円安ドル高へ徐々に移行していくだろうと予想しておりました。ただし10年、20年かけてです。
ところがたった1年で16.7%も円安が進んでしまったのです。今回の円安ドル高の要因は金利差で生まれた部分も当然大きいとは思いますが、実際のところ、世界における日本の価値というのは日本人が思っているほど大きなものではなくなりつつある、つまり日本の相対的地位の低下に原因があるのではないでしょうか。
金相場は過去最高価格になっております。5年ほど前の2017年には4000円/gだったものが現在では7500円に迫る価格になっております。金相場が高くなる理由はいくつかありますが、ひとつは地政学上のリスクが挙げられます。地政学上のリスクとは世界の政治経済の予測ができず、先行きを不透明にするリスクのことです。ロシアのウクライナ侵攻も地政学上のリスクを高めている要因のひとつといえます。
地政学上のリスクが高まると、安定した資産を求める人が増え、モノに価値がある金の需要が上昇するため、金相場も上昇する傾向にあります。
これだけ外部経営環境が変化し、さらに自国の経済力が相対的に弱くなっている状況で稼いだ財産を守るということもこれからは大変重要になってきます。
経営者としての資産の守り方
多くの老舗企業と呼ばれる企業を見ていると本業に加え不動産物件を所有、運用されているケースが多いです。経営的には本業で稼いでいかなくてはならないとは言いつつ、やはり不動産収入があると本業でうまくいかないときでも本業を立て直す間、経営的に大きな助けになる場合があります。
また、大きな資金が必要な場合、非常事態に陥った際にも不動産売却により、大きな資金を手にすることができる可能性があります。
もちろん、不動産収入ありきで本業に力が入らなくなるのでは本末転倒でありますが、長い経営において不動産所有は大きな助けになるでしょう。不動産を取得するため借金をした場合には借金返済で資金繰りが詰まってしまうなど、苦労が伴うことも少なくありません。それでも稼ぎ、返済していくことで「銭」に対する考え方が経営者としてより鋭敏になっていくケースもあります。
仮に将来、円安ドル高になると考えれば、資産を円では持たずドルで持つことにより円保有による財産の相対的価値の低下を防ぐことになります。これから弱くなっていくであろう日本経済においては、自ら保有している財産の価値を落とさないことも考えていかなければならないように感じます。
不動産・金・国内株式・海外株式・投資信託・ドル預金・ドル保険などなどたくさんの投資案件があります。どうしても多く人は「財産を増やす」ための投資案件と考えることが多いように感じますが、リスク分散としてこれらの財産を保有していくということを考えても良いように感じます。
リスクというのは、「危険」と捉えがちですが、金融商品でいうリスクは「不確実性」を指します。「ハイリスクハイリターン」の金融商品は、不確実さが大きいため、不確実さが優位に実現した場合には大きなリターンが得られる金融商品ということになります。もちろん、不確実さが不利に実現すればリターンが小さいどころか損失に転じる場合もあるわけです。
資産のリスク分散のための投資というのも資産を持っている方々にとっては、その価値を維持していく、あるいは価値をより低めないようにするために重要なことのように感じました。社長の皆様はいかが感じられましたでしょうか。