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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第126号] 生き残るための商品創り
2022年5月4日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の126】
『自信を持って値上げする 』
円安下では、個人も企業も財布の紐が固くなり、稼ぎづらい環境がやってくる。
既に始まっているインフレ下で多くの売り手が値上げの必要に迫られているだろう。
原価高騰を要因としたものはもちろん必要だが、これはあくまで後ろ向きの値上げだ。それよりも商品・サービスの役立ちを高めることで、付加価値を要因とした自信を持った値上げができるように目線を前向きに変えていきたい。
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先日、ある顧問先様の経営会議に出席致しました。この会社はコロナ禍の影響を被ったこともあり業績が大きく落ち込んでしまっています。出席者は社長、役員、部門長の皆様でした。
この経営会議の目的は、『普段会社の経営数値に触れていない役員幹部にも現状を知ってもらい、業績回復のために具体的に何をしていくか考え、決めていく』というものでした。
今の給料を維持するためにいくら稼ぐ必要があるのか?という視点
我々は通常、どの顧問先様に伺っても例えば社長とは「最低でも従業員一人あたり月70万円の粗利益を稼ぎましょう」という話をさせて頂いております。しかし今回の主要メンバーは損益計算書の見方も覚束ない方々でした。私はそもそも「一人当たり生産性とは?」から話を始めました。
いきなり「一人当たりの生産性」といってもわかりづらいので「最低でも自分のお給料の倍の利益を稼いでください」これが「一人当たりの生産性」となり、粗利益率が20%の会社であれば、「その利益の5倍の売上を創ってください」と続けます。つまり「給料の10倍の売上を創りましょう」というのが皆様の目標数値になってきます、と。
この時になって初めて「給料の10倍を稼ぐなんて大変なことだ」なんて声が上がってきます。正直にいえば、これでも十分とはいえない売上です。それでも給料の10倍の売上でようやく損益がトントンになるのだとわからなければ、今の給料すら今後は保証されないということを実感して頂くことはできません。
今、粗利益率が20%なので売上ベースに引き直すと利益額の5倍が売上になりますが、もし粗利益率が25%であれば売上ベースに引き直すと利益額の4倍が売上になります。
粗利益率20%で500万の売上があれば100万の粗利益額ですし、粗利益率25%で400万の売上でも100万の粗利益額となります。粗利益額ベースで考えれば同じ100万ですが、商品一つあたりの儲けが異なります。どちらを選択するかは経営者によって違うと思いますし、正解もありません。
今後の日本経済を考えてみると生き残る可能性はどちらが高いかはわかるように感じます。
稼ぎづらい外部環境を前提にどう動くか
前号にも少し書かせて頂きましたが、この数か月で猛烈なドル高円安となっております。これは日本円の価値が米ドルの価値に対して相対的に安くなっている、つまり日本円の価値が下がっていることを表しています。
この円安の影響で海外からの輸入品は軒並み日本国内で値上げ対象になっております。小麦由来のパン、そば、うどんなどの食品をはじめ、ガソリン、軽油、電力などの燃料系の商品、希少金属の値上がりによる半導体不足での工業製品の納期の長期化、価格の高騰と円安は日本に大打撃を与えております。
一昔前であれば円安は歓迎されている面もありました。自動車輸出が多かったので円安は為替差益を取れたからです。しかし今では現地生産が当たり前になり、わざわざ日本から輸出などしません。
これまで世界で紛争等が起こると、日本円は安全資産として買われてきましたが、今回のウクライナへのロシア侵攻では日本円は買われるどころか売られてしまう始末です。
これは日本円がもはや安全資産にはなりえない、という世界の声のように私は感じております。おまけに日本は資源国でもありませんから、あらゆる原料等は輸入せざるを得ない。そうなると今の値上げは今だけのものではなく、今後の日本では恒常的に続いていく現象のように思われます。
ましてや30年間ほとんど給料が上がらなかった日本です。これだけ値上げが続いていても給料はそれほどには上がらないでしょう。そうなれば過去に類を見ないほど日本の中での二極化が進むと考えるのが自然です。
そんな状況で、粗利益率の高い商品を扱うのか、そうではない商品を扱うのか。
付加価値の高い商品を創っていかなければならないように感じます。原価は黙っていても上がる状況ですが、だからといって、商品の内容が変わっていないのに売価を値上げするというのは、実際問題厳しいように感じます。実際の商品価値が上がっていないと、財布の紐がさらに厳しくなる消費者に手にしてもらえそうにありません。
せめて自動車でよくある「マイナーチェンジ」のような変化は必要なように感じます。その「マイナーチェンジ」をしている間に、「フルモデルチェンジ」した付加価値の高い商品の開発を進めるのが、厳しいながらも会社を存続させていくために必要なことではないでしょうか。
顧客が必要あるいは便利だと思う商品・サービスでなければ売れっこありません。あるいは売れたとしてもこちら側が期待する価格では売れないでしょう。最近100円ショップでは原価上昇により100円の商品だけではほとんど利益が確保できないので、300円の商品を開発し、300円商品で利益を確保していくことで、100円ショップとしての経営を安定させていく、という報道も目にしました。
薄利多売はひとつの経営戦略になるのだと思いますが、薄利だけに原価上昇は経営圧迫に直結しかねません。
また社員のためにも儲けて給料に還元していかなければなりません。今後の日本経済は厳しいことが予想されますが、全ての企業がその影響を受ける訳ではありません。
結局この会社の経営会議はどうなったでしょう。
会議を始めて4か月経過しますが、現状の危機的状況をシビアに受け止めている方もいらっしゃれば、なかなか自分事として受け止められない方もいらっしゃいます。言葉は宜しくないかもしれませんが、この経営会議は、社長にとって誰が信用できて誰が信用できないかがわかってしまう場でもあるように感じます。
いかに相手の役に立てるかがすべてです。我々マエサワ税理士法人職員一同も全く同じです。顧問先の社長の皆様に価値を提供できるかが問題です。是非とも高いレベルの価値提供をしてまいります。引き続きマエサワ税理士法人と職員一同を宜しくお願い致します。