マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

中小企業の生き残りをかけて

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第128号] 中小企業の生き残りをかけて

2022年6月1日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の128】

『儲からない「自分の常識」を捨てる 』

儲からない自分の中での常識を振りかざすことを経済界では独りよがりと言う。
世の中の常識が変わっていくならば、その中でも儲けられるように常識は変えていくべきだろう。

目先はインフレの波、インバウンドの波、と目まぐるしく経済は動いている。
コロナ禍で変化した世の中の常識も、また少しずつその姿を変えていくだろう。
「儲けるには?」を念頭に、変化の荒波を乗り越えて頂きたい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
顧問先様で経営会議をする際に、会長の前沢が日本経済の状況を皆様に知って頂くために使っている表がございます。

この表には3つの数字が記載されており、一つ目は昭和26年から直近までの利益計上法人(黒字法人)と欠損法人(赤字法人)の法人数がそれぞれ記載されております。二つ目は利益計上法人と欠損法人の営業収入金額(売上高)が、三つ目は利益計上法人と欠損法人の申告所得金額(≒税引前利益)がそれぞれ記載されております。基データは国税庁の「黒字法人統計資料」と呼ばれるものです。

統計資料であるため集計には時間を要するようですが、このメールマガジンを書かせて頂くタイミングで令和2年度分が公表されたので、この表も令和2年度分を更新しました。

コロナの影響による日本企業の浮き沈み

この表はよくよく見ると日本経済の浮き沈みを表しております。
(以下一部抜粋)
昭和26年 法人数  228,718 黒字法人割合83.5%
昭和47年 法人数 1,028,270 黒字法人割合64.0%
平成2年  法人数 2,078,270 黒字法人割合51.6%
平成21年 法人数 2,610,709 黒字法人割合27.2%
令和元年 法人数 2,745,293 黒字法人割合38.4%
令和2年 法人数 2,790,560 黒字法人割合37.7%

例えば、法人数でいえば統計の始まった昭和26年はたった22万8千法人あまり。黒字法人割合は83.5%でした。昭和26年以降法人数は増加傾向で、昭和47年には100万法人を突破し、黒字法人割合は64.0%。その後も法人数は増加し、平成2年に200万法人を突破し、黒字法人割合51.6%。さらにこの後も法人数は増加していきますが、黒字法人割合は一貫して減少し続けます。そして平成21年には27.2%まで落ち込みます。この後、「3本の矢」と呼ばれる経済政策などで多少黒字法人割合は上昇し、令和2年では37.7%まで回復しております。ちなみに令和2年の法人数は279万法人余りです。

意外に感じるのはコロナ禍に見舞われた令和2年の黒字法人割合(37.7%)が令和元年のそれ(38.4%)と比較して減少こそすれ0.7%の減少にとどまっていることですが、これも飲食店を中心に国の支援金等の支援があったことが大きいようです。

令和2年の数値で一番大きな変化があったのは営業収入金額(売上高)です。令和2年以前のここ数年は利益計上法人と欠損法人の売上高合計がおよそ1500兆円だったものが、1350兆円まで落ち込みました。ちょうど10%減少といったところです。

一般的に企業経営において前年比10%ほどの売上減少があれば、当然に大ダメージを受けます。直接的にはコロナ禍の影響を受けていない顧問先様もある一方で、コロナ禍の影響で売上90%減という顧問先様もいらっしゃいます。こういった企業も含めての全体として売上高が前年比10%減ということです。

さらに利益計上法人の営業収入金額(売上高)が令和元年の1133兆円から981兆円と、13.4%も落ち込んでいます。コロナ禍前は利益計上法人だったがコロナ禍の影響で欠損法人になってしまった法人がそれだけ多かったということです。

そして令和2年の欠損法人の申告所得金額(≒税引前利益)も令和元年の△13兆5千億円から△21兆4千億円まで落ち込んでおります。これも平成20年、平成21年に△20兆円を超えた時以来の△20兆円超えになっております。

勝負の時

コロナ禍も第6波が終息に向かっている最中です。海外からの観光客の受け入れもようやく始まろうとしております。コロナ禍前と全く同じ経済活動とは言えないまでもようやく動き出した感はあります。

ただし、日本経済がこれから良化するかといえば、それはまだ先のように感じます。黒字法人割合がさほど落ちていない主な要因が助成金、支援金だとすれば、それがなくなった令和4年には黒字法人割合はさらに下がるものと思われます。

コロナ融資も既に返済が始まっているものもあれば、これから始まるものもあります。借入返済の原資はいうまでもなく、事業で稼いだ儲けが基本です。借り換えをしようと何をしようと最終的に返済を終えるためには基本的には儲けが必要です。

コロナ禍を通じて、顧問先様も自身の商売をマイナーチェンジさせているところが多いように感じます。マイナーチェンジも売り先を変えたり、売り方を変えたり、売る商品自体を変えたり、とコロナ禍を生き抜くために経営者の皆様は様々な試行錯誤をされております。

売り先、売り方、売り物を見直しての実施は黒字経営の条件といえます。コロナ禍のような非常事態においては、平時に増してこれらの見直しの重要度が上がっています。そして、新たな挑戦を進め、儲けを出していくことができる企業とそうでない企業の差が歴然と現れてきております。

これからがいよいよ勝負の時になります。毎年が勝負であることに変わりはありませんが、コロナ禍により負の部分を背負っているとすれば、その分も含めこれから取り返す必要がございます。商品・製品・サービスの開発、業態開発の重要度はますます高まっていきます。

経営者の皆様におかれましては気の休む暇もありませんが、日本経済の衰退はある程度見えている部分があるように思えます。普通にしていれば悪い波に飲み込まれるでしょう。なにしろ7割の法人が赤字なのですから。「行動は常識的に、思考は非常識で」というのが今の時代、特に大事になるように思います。

時代の変わり目にいることは間違いありません。生き残るためにも顧問先の皆様と共にその方策を考えてまいりますので、引き続き宜しくお願い致します。