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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第136号] 相手が何を欲しているか考える
2022年9月21日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の136】
『独り善がりのお役立ち 』
顧客へ提供する商品・サービスを考えるとき、これは売れるはず!と思って意気込んだものが鳴かず飛ばず、相手の反応が思ったようにいかなかったと聞くことがままある。
自分が思う相手が求めているものと、相手が思う相手が求めているものは似て非なるもの。
こうあるべきだ、こうあってほしいばかりを出さず、金を払う相手がどうありたいと望んでいるのかを丁寧に汲み取って頂きたい。
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十数年振りのご連絡。何があったのか?
先日、あるお客様からご連絡を頂きました。昭和58年から平成22年まで顧問契約させて頂いていたお客様です。当時社長と親交の深い税理士がいらっしゃるということでマエサワ税理士法人との顧問契約は解消となりました。ところが12年ぶりにご連絡を頂戴し、この度再び弊社で顧問契約を再締結させて頂くこととなりました。
なぜこれまでの会計事務所との顧問契約を解約することになったのでしょう。現在、この会社の経営は社長の息子さんである専務が担われております。専務は40歳前半の方なのですが、月次監査に来られていた会計事務所の担当者は専務より少し若い方だったそうです。
この会社は多くの会社と同じようにコロナ禍の影響を受け、売上受注が減少しており、このままいけば苦境に立たされる状況です。まずなすべきは新規顧客を獲得することで売上を回復させることです。
ただ追い風も吹き始めています。コロナ禍で事業が傷んだ同業他社が事業をたたんだこともあり、そちらの仕事も専務のもとに回ってくるようになり、幸いにして売上を増加させる余地が大いにあります。
とはいえ、限られた人数で事業を行っているので急激な仕事量の増加に耐えられない部分があります。もちろん人を増やすことも考えられておりますが、なかなか求職状況も厳しく、新規顧客増加に100%対応できる状況が作りきれていない現状があります。
そんな状況下で専務もやりくりをしながらいかに売上を創るか日々考え、実行されています。人がいない部分は自分が入り、仕事に穴を開けないことに必死です。
そんな状況を知ってか知らずか、会計事務所の担当者から「会社から借りている社宅(社長、専務ら家族の住み家)の家賃が安すぎるからせめて近隣住宅の賃料程度の支払いをしなくてはダメだ」と強く言われたそうです。
その言い方や、専務からすればパートナーだと思っていた会計事務所の担当者からアドバイスどころか批判に近い内容に、普段温厚な専務も会計事務所を替えたいと考えたそうです。
相手がいま何を求めているのか?何に悩んでいるのか?
確かに近隣相場より低すぎる家賃を設定している場合には税務上リスクがあるといえます。ただそれは金額にしても月に数万円、年間100万にも満たない金額だと思われます。
一方で専務が今悩んでいるのは「どうやって売上を増加させていくか。人繰りをどうするか。設備投資について何をいついくら実行していくか」です。
そこからすれば社宅家賃の見直しは本質からずれたアドバイスと言わざるを得ません。担当者がした専務への話は税務からすれば至極もっともなことと言えます。しかしこれは完全に税務から見た経営の話であり、社長にとって税務は経営の中のごくごく一部だということを理解できていないように感じます。
会計事務所の人間なのだからまずは税務を話さなければならないだろう、と言われれば一理あります。しかし我々は経営をされている社長のパートナーでなくてはなりません。もちろん会計事務所の人間ですから、税務には特に気を遣う必要があります。これは言うまでもありません。しかし我々がそうだからと言って、税務を中心にあるいは税務だけをお話するのはどうなのかと思います。経営者が考える経営上の優先課題を共有することを第一義とするべきなのです。
この会社の専務は非常に温厚な方で滅多なことで声を荒げません。その方が怒りを感じるくらい些末なことをあたかも最重要課題であるかのようにお話されたことが大きな問題でした。これだけ専務の怒りを買っていることに気づけない我々会計人の鈍感さが大きな問題なのです。
我々がサービスを提供しているのは税務の世界でなく、経済界です。儲かってナンボの世界の社長に税務の話を声高にする意味はありません。何度も申し上げますが、税務上のリスクをお話しなければならないのは当然です。しかしその話し方、話すタイミング、重要度はよくよく考えた上で話さなければならないと思います。
この会社の現状の問題点は既に書かせて頂いた通り、売上が全盛期から半分以下に落ち込んでいることにあります。まずはこの落ち込んだ売上を増加させることにあります。
私は目標を一人当たり生産性80万円/月とおき、80万円/月×5人×12か月÷57%(粗利益率)=8400万の年間売上を目指しましょう!という話をさせて頂きました。これが達成できれば今よりも給料を上げることが可能になります。
ただ社員数が少なく、受けられる仕事量にも限界があるため、最大効率で利益を上げるには取引先ごと、あるいは商品ごとの利益率を見ていく必要があります。これらの分析こそ、我々が経営者の儲けに貢献できる部分です。経営者の方々が我々に求めているのはまさにこういったところなのではないでしょうか。
一度離れられたお客様が戻ってきて頂けるというのは大変有り難いことです。やはり作業ではなく、しっかりと儲けに対する提案をできる会計事務所であり続けなければならない、と感じております。
もし社長の皆様のまわりに税理士に困っている方がいらしたら是非ともご紹介頂ければと存じます。精一杯対応してまいりますので宜しくお願い致します。