マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

チャンスをものにする

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第140号] チャンスをものにする

2022年11月16日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の140】

『決断を迫られる場面で経営者としてどう立ち回れるか 』

人、物、金、時間、限られた資源から儲けを生み出せるかは経営者の采配に掛かっている。
チャンスに直面したとき、ピンチを招いたとき、日頃の準備がものを言うのはコロナ禍でも学んだ通りである。
また、チャンスとピンチは紙一重なことも多い。
判断の冷静さ、スピード感、そして儲けへの情熱をもって難しい決断の場面も乗り切って頂きたい。

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ある顧問先様の経営会議での社長の言葉です。
「商流を失えばどんなことをしても二度と戻ってこない。」
掴んだ顧客を万一にも手放すことがあればその顧客は二度と戻ってこないということです

自社の存続を懸けた大英断

この社長には過去、全国展開する大得意先がありました。この大得意先に商品を卸すことで自社の売上も急拡大しました。一方で利益は薄利多売状態でしたので、売上を増やすほどに利益が出づらくなり経営が厳しくなっていきました。

当時、この会社にとってその得意先は最大の顧客でした。利益はともかく自社売上のかなりを占めていた取引先ですから、この取引先を切るということは資金繰りがひっ迫することを意味します。そこで数年をかけてあらゆる準備をした上で、取引を解消しました。

ただ、この会社の他の取引先にはただ「大得意先に切られた」ようにしか見えません。大得意先との取引解消が他の取引先に知れ渡ると、取引先の間で果たしてこの会社は今後もやっていけるのかと噂になったそうです。

社長はこの悪い噂をかき消すために(初期的には)採算度外視でとにかくあらゆる取引先に売りに売りまくり、自社の健在ぶりをアピールすることで悪い噂を払拭し、取引先を安心させたといいます。

この時の大得意先を切るという英断が、その後の黒字化に大きな影響を与えたのは言うまでもありません。利益を取れない売上の増加は「拡大」ではなく単なる「膨張」にすぎません。見た目のかさが増えても中身の利益が残らなければ経営を続けていくことはできません。やはり売上だけを追いかけていく経営は非常に危険なものです。利益を出してこその経営ではないでしょうか。

ピンチへの対応が鈍いとどうなるか

とはいえ、「商流を失えばどんなことをしても二度と戻ってこない」ということを身をもって感じている社長です。

先日の経営会議で、この会社が得意先から受けたクレームの話がありました。同じ商品であるにもかかわらず、ある取引先とそれ以外の取引先で卸値が異なっていることを高く卸している取引先からクレームが入ったそうです。もちろん、同じ商品でも卸先によって価格が異なるという話は特別なことではありませんが、時と場合によっては問題になることがございます。クレームが来た際には、経験豊富な社員によってその場を収めることができましたが、社長にとってはその報告はすぐにでも対応しなければならない案件だと感じられたようでした。

社員は半年後には対応できる方向性で動いている、との話をされていましたが、社長は今日明日にでも対応しなければ、こういうクレームが取引先に回ってからでは収集がつかなくなってしまう、一刻も早く問題の芽を摘む必要がある、ということをお話され、対応についてのすぐにリスケジューリングすることになりました。

顧客を失うことの経営上の厳しさを身に染みて理解している人から出た言葉であるとつくづく感じた次第です。

きたるチャンスへの準備も怠らない

別の顧問先様では、自社製品の大手企業への売り込みが奏功し、見事に帯商品として出荷が始まりました。売上は倍増しました。若干歩留まりが悪いので粗利益率が少々下落しているのですが、メイン商品を製造する際に出てくる端材を上手に利用する方策も考えられ、今後は粗利益率が改善される見込みです。

この状況を見ていた取引先から、さらに声がかかるようになります。ところが現状ではキャパいっぱい生産で余力がありませんでした。そこで昼しか稼働していなかった機械を昼夜二交代制のシフトの導入により、生産能力のアップにこぎつけました。

チャンス自体なかなかやってくるものでもなく、チャンスがやってきたとしても準備不十分であればそのチャンスをものにすることができません。チャンスをものにできるかできないかは、普段からチャンスにアンテナを張り続け、チャンスが到来した際にすぐに行動に移せるように準備し、その時がきた際にすぐに行動できるか、が試されます。

こちらの会社ではさらなる商品注文が入り続けており、現在は生産ラインを拡張することによる生産能力の増強、さらには数年後の工場自体の拡張まで見据えた工場用地の買収まで進められております。

大取引先との取引解消であったり、大規模な設備投資であったりと、会社にとって大きな決断が迫られる場面は確実に存在します。経営幹部にも様々な意見があり、方向性がなかなか定まらないこともあります。会社は、社長の決断によって新たな方針を進めることになるでしょう。それが当然だと私は思います。最終的な責任を負うのは社長だからです。

今、顧問先様を見ていてもそれぞれの会社が様々な局面を迎えられており、社長に決断を迫られる場面は少なくありません。我々もそんな経営者の皆様の決断の一助になるべく、社長の決断に有用な存在を目指して今後も精進してまいります。顧問先の皆様と一緒に成長していけるようやってまいりますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。