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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第141号] 税務調査で調査官はどこを見ているのか
2022年11月30日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の141】
『儲からない体質からの脱却 』
「どーせ調査なんて!みんなやってるじゃん!うまくやっといてよ!あんたプロでしょ」
口に出すか出さないかは別として、腹の中からそう聞こえてくる場面はままある。
金額の大小が問題なのではなく、うまいことやってやろうという体質が結果儲けを遠ざけてしまっていることに気づいて頂きたい。
法律を守るなんてことは当たり前の前提の話である。
考えるべきなのはその上でどう儲けるか?ではないだろうか。
稼ぐこと、貯めることに常に目を向けられる経営者であって頂きたい。
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コロナ第7波が落ち着いたあたりから、税務調査が急増しております。おそらく法人も個人も調査数は増えているものと思われます。顧問先様の調査立会を行っている中で調査官と話していても、「調査再開と同時に調査件数は増加している」という話を聞きます。
税務調査の日数や調査官の人数は法人の調査であれば基本的には会社規模で決まってきます。規模の小さな会社であれば調査官は1~2人、日数も2日程度ですが、規模が大きくなるにつれて日数が3日以上、調査官も3人あるいはそれ以上ということになってきます。
さらに上場規模の会社になると管轄が所轄の税務署から国税局に変わり、調査官の人数も大勢になります。調査の日数も2週間から1か月を超えることもざらにあります。
こうなると我々も担当者だけでは調査立会を回せなくなるので、所内の担当者以外の職員も含めて調査立会をしていくことになります。税務調査の対応は普段の月次監査にプラスαの業務となります。こうした長期間にわたる税務調査への対応は、事務所全体としての組織力が問われる場面かもしれません。
社会的・常識的に第三者が見て納得するのか?の視点をもつこと
調査官の着眼点は「取引実態が存在するのか、取引実態がどうなっているか、その取引実態を表す証憑の存在、さらにはその証憑通りに仕訳が起票されているか」にあることが多いように思います。「税法に則って経理処理されているか」よりもその取引自体の確認に時間が割かれます。
調査官にとっては、限られた時間の中での調査になりますので、重要項目から調査を進めていくことになります。直近の決算年度における売上、そして原価・仕入・在庫、その後に人件費、さらに接待交際費を中心とした経費という流れで調査していくことが多いでしょう。
仮に取引実態と異なる処理をしている仕訳が発見されると、直近の決算年度だけでなく、2年、3年とさかのぼって調査されることもよくあります。
誤解を恐れずに申し上げると、誤っている処理であれば修正をすれば済む話です。調査において問題となるのは、こういった誤りよりも「意図的に事実と違う処理をしていた」あるいは「架空の取引を創り出していた」と調査官に思わせるような処理が出てきたときです。そのような論点が挙がると、調査自体張り詰めたものになってきます。
例えば社長自身あまり深く考えておらず「取引があった体の請求書や領収証があればいいのだろう」といった感じで経費処理していると非常に危険です。
なぜ第三者視点を持ったほうが良いのか?
調査官は一般的に非常に基本に忠実で作業が丁寧です。彼らの税務知識が税理士以上に豊富かといえば、そういった人はごく一部で大抵の調査官は試験合格した税理士の知識量には及ばないと思います。
しかしそういった調査官が会社の誤りや不正を発見する能力は、我々税理士より遥かに長けていると思います。彼らは税法という条文に合致するかしないかという以前に、仕訳で見ている取引が実際にどんなものであったか、取引の実態というものに重きを置いています。
取引実態がないのに経費処理されていれば、架空経費となり大きな問題になりますし、取引実態と異なる経理処理を行っていれば、誤った経理処理をしたということになります。つまり税務調査では税法云々というよりもそもそもの取引実態がどうなっているのか、そしてその取引実態にあった経理処理をしているのかを中心に見ているのです。
従って税務調査では税法の取り違えによる誤りの指摘より取引実態と経理処理の乖離を詰められるケースの方がずっと多いのです。「このようにした」という体で書類を作って経理処理すればばれないだろう、と仮に考えたとしてもすぐに見破られてしまうでしょう。
起きた事実というものはひとつですから、その事実に基づき経理処理を行っていかなくてはならない、ということです。もちろん事実が一つでも実は経理処理としては複数の可能性が考えられる場合も少なくありません。この場合は顧問先様有利になる処理を採るのが当然のようにも思えます。
ただ、ここが難しいところで、また税務調査の厳しい現実でもあるのですが、最終的なジャッジは税務当局が行います。ですから経理処理をする段階で、複数の処理が考えられる場合には、我々は社長に対してそれぞれの処理に係る税務リスクの程度やメリットをご説明し、最終的には社長にご判断いただくことになります。
税務調査はなかなか気持ちよく受け入れられるものではないとは思いますが、社長の儲けに対する、あるいは経営に対する姿勢のようなものが現れる部分でもあるように思います。儲けを出している会社ほど税務調査を受ける可能性は高くなりますので、マエサワ税理士法人職員一同、普段の月次監査の時から税務リスクについてもお話させて頂きます。もちろん税務調査の際には立ち会わせて頂き、バックアップしてまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。