マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

令和5年度税制改正の大綱

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第144号] 令和5年度税制改正の大綱

2023年1月11日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の144】

『”お金のない国”でどう儲けるか? 』

税制改正は、今のその国のお財布事情をよく表している。

増税という政策に対して十人十色の意見はあるだろうが、経営者としては変わらず、儲けて、払うものを払い、蓄えを増やすということを貫くだけだ。

基本的に、税金は儲けた後に生ずる。

過度な納税は不要だが、節税にこだわると結果として儲けを減らし、お金が貯まらなくなるということも意識したい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

令和5年度の税制改正の大綱が令和4年12月23日に閣議決定されました。大綱の概要が財務省HPに公表されていましたので、その内容を見ていきたいと思います。

令和5年度税制改正の大綱では、冒頭の総括に、

1.家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充・恒久化を行うとともに、スタートアップ・エコシステムを抜本的強化するための税制上の措置を講じる。

2.より公平性中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、グローバル・ミニマム課税の導入及び資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築を行う。

3.自動車重量税のエコカー減税や自動車税等の環境性能割等を見直す。

4.租税特別措置については、それぞれの性質等に応じ適切な適用期限を設定する。

5.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置について決定する。

とあります。

このうち1から4までは「令和5年度税制改正」として記載されており、5については「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」と分けて記載されております。

全体として増税基調が目立つ改正に

コロナ禍における財政出動が続いていたので増税基調となっております。経営者にとってインパクトのある所をひとつ挙げると贈与税の改正でしょうか。これまで亡くなる3年以内の贈与財産には相続税が掛かっていましたが、その期間が現行の3年から7年に延長されることになりました。

年間110万円までの贈与は非課税で行えるため、これまでも多くの方が親族等に生前贈与をされ、経営者の方は後継者へ株式の贈与を継続的に行っていたケースもございました。ただし、その後に相続が起きた場合は、亡くなる3年以内に贈与をした財産については、相続税の計算の際にその価額を相続財産の価額に加えておりました。
今後はその期間が3年から7年に延びることで、より多くの生前贈与が対象となり、相続税負担が増加することになります。(2024年1月1日以降の贈与から7年内加算に延長されます)

さらに企業経営に関係しそうなところで見ていくと、「5防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」がございます。そもそもこれは我が国の防衛力の抜本的な強化に当たり、歳出・歳入両面から安定的な財源を確保するための税制措置となるようです。

税制部分については、令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度において、1兆円強を確保します。具体的には、法人税、所得税及びたばこ税について、措置を講ずるとしています。

法人税について見てみると、法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課します。ただし中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除することとします。

所得税について見てみると、所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課します。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長します。延長期間は、復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとします。

全体的に見ると、一部の税制優遇制度を除き、ほぼ増税基調にあるというのは間違いありません。

税金の心配をするくらいに儲けましょう

ところで、令和4年の一般会計歳入(当初予算)107.6兆円の内訳は、国債が36.9兆円、租税及び印紙収入が65.2兆円、その他が5.4兆円となっております。さらに租税の中の法人税は13.3兆円、所得税は20.4兆円、消費税は21.6兆円となっております。

法人税の税収は平成元年の19.0兆円が最大であり、それ以降これを上回ったことはありません。法人税率がその当時より下がってきていることも要因の一つでありますが、何よりも法人の70%近くが赤字であることが最大要因であるように思えます。

所得税の税収は平成3年の26.7兆円が最大であり、やはり今日に至るまでこの税収を上回ったことはありません。

消費税の税収は消費税率が上がるごとに増加しております。税目別に見ると一番税収が多くなっております。

昔は企業が稼いで法人税を納税し、企業が給与を出すことで所得税を納税していたものが、企業が稼げなくなったことにより、法人税の税収が減少し、給与が増えないことで所得税の税収も減少し、その税収不足分を補う形で消費税が登場し、税率も徐々に上昇しているようです。

日本の税収もだいぶいびつになってきているように感じます。税金を過度に納付する必要はありませんが、経営者としてなにより儲けを出すことが大事なのは、今後も変わらないことだと思います。

今回は令和5年度の税制大綱を中心に書かせて頂きました。引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。