マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

株式の承継で気を付けるべきこと

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第194号] 株式の承継で気を付けるべきこと

2024年12月11日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の194】

『自社株の事業承継』


事業承継をしたことで、事業の成長と経営の安定が損なわれては目も当てられない。

こと株式の承継においては、会社の経営に携わらない者が混じると、長い目で経営は不安定なものとなってしまう。

経営を安定させるためには、一に儲けること、二にお金を貯めること、そして円滑な事業承継を整えることである。

出来るならば時間をかけ、計画的に次の代へ引き継いで頂きたい。

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■「誰に」「いつ」「どのような方法で」承継するか

長きにわたり事業経営をされてきた社長の最後の大きな仕事といえば、『事業承継』です。いつも申し上げる通り、事業承継には二つの意味合いがあります。ひとつは会社の株式の承継という問題と、もうひとつは事業(ビジネス)自体の承継という問題を解決しなければなりません。

事業承継と一口で言っても、「誰に」「いつ」「どのような方法で」承継するか正しい答えがあるわけではないので皆様非常に苦労されているところです。今回は株式の承継について書かせて頂きます。

「誰に」については社長のお子様、会社の生え抜き社員、外部の人材などが挙げられます。どうにも後継者が見つからないという場合にはM&Aで買い手企業を探す、といった手法も最近ではかなりポピュラーになってきました。

「いつ」というのも難しいものがあります。普段多くの社長とお話しておりますが、継続して稼がれている社長に事業承継のお話をすると、社長ご自身もそのことを考えなくてはならないとは思いつつ、実際には事業経営がうまくいっていることもあり、後回しになっているケースも少なくありません。

「どのような方法で」については一番ポピュラーなのは、社長が後継者へ株式譲渡することです。ただ株式の承継の問題は事業を大きくされた社長の会社ほど、株式の価値が大きくなってしまうことが多いので、後継者の金銭的負担が莫大なものになることがあります。

普段、株式を保有していることを意識することはほとんどないと思います。そのため株式譲渡にさほどのお金はかからないだろうとタカをくくっていると、株式承継が現実のものになってきたとき、譲渡金額の大きさに驚かれる社長も多くいらっしゃいます。会社の株式を売る社長には譲渡所得税が発生し、買う後継者には資力が求められるということです。

■承継のために株価を下げることについて

譲渡価額が高いと誰でも譲渡単価を下げることができないのかということを考えるようになります。

非上場株式の株価は、損益が悪化すると株価が下落する傾向にあります。その特性を利用して社長が退職金を会社から取ることで、本業で黒字であっても退職金によって最終利益が赤字になり、結果として株価が下がる場合があります。

あるいは含み損のある不動産を他社に譲渡することで含み損を顕在化させ、最終損益が赤字になり、結果として株価が下がる場合があります。

ただこれらのスキームには慎重な検討が必要になってきます。退職金の額はいわゆる社会通念上認められる範囲のものであるか、ということをよく考慮しなければならないのは当然のことです。また資産の含み損の実現を図るにしても、経済合理性がなく節税目的だけのためにやっていると判断されれば認められない可能性がございます。不動産を売る会社、買う会社ともに100%同族の株主が所有している場合には、そもそも取引で発生した売却損益が税務上は認められない、ということもございます。これらを実行する前にどんな税務リスクが発生する可能性があり、税務リスクが顕在化した場合にはどのような結果になる可能性があるのかをよく把握しておく必要がございます。


また、株価を下げることができたとしても、後継者は一般的には社長より年齢が若く、個人としての資力もそう大きくないといえるでしょう。ですから後継者の資力だけでは社長が所有する株式を全て購入することは難しい場合がほとんどです。

とはいえ会社の株式を複数の人に分け与えていくのは、後世に憂いを残す可能性があるのでお勧めできません。会社の株式は事業承継をする人だけで所有することが中小企業においては鉄則であると思います。社長がお元気なうちは問題は起きないかもしれませんが、社長が現役を離れた途端、経営に悪影響を及ぼす問題が起こることが多いのは周知の事実です。

事業経営されている以上、よい波に乗っている時もあれば、うまくいかない時もございます。うまくいかない時は業績が悪化しているので株価は下がる傾向にあります。つまり株式の承継にとっては株価が安くなっていれば承継しやすい、ということになります。

これは「いつ」の答えにも通じてまいります。ある一瞬で株式承継をしようとすると株式購入をする後継者側の資金繰りも大変ですし、様々な税務リスクを抱える可能性が大きくなってきます。

逆に「いつ」を一瞬の時と捉えずに、5年10年スパンで捉えておけば税制を上手に使うことができますし、後継者の資金繰り等にも余裕が出てまいります。本業の手綱を緩めることなく、後継者への株式承継をやっていくのは大変ではありますが、100年企業としていくには三世代は続けていかなければなりません。長期的視野で株式承継は考えていく必要があります。

事業の承継はまた次号で書かせて頂ければと存じます。承継に関するご質問はマエサワ税理士法人の担当者にお尋ねください。次号もどうぞ宜しくお願い致します。