マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

社長の引き際のお話

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第200号] 社長の引き際のお話 

2025年2月26日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の200】

『稼ぎを大きく伸ばすために』


社長は一番の稼ぎ頭たるプレーヤーでなくてはならないが、同時に人を使い稼ぎを大きくするマネージャーでもあるべきだ。

全てを自分の手でやれたらというもどかしさは分かる。だが、社長自身の身体も時間も有限だ。

より大きく稼ぐには?という目線で組織の采配をとり、さらなる飛躍は叶えて頂きたい。

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先日、久々にお会いした顧問先社長と2時間ほどお話させて頂きました。この社長には、以前、毎月のようにマエサワ税理士法人にお越し頂いておりました。我々の業務には不動産絡みの話も少なくありません。社長には、不動産関係のご相談に乗って頂いておりました。
ところが社長は7年ほど前に大病を患われました。幸い快方に向かい仕事に復帰されていましたが、再び病を患い、いよいよ会社を承継していくことになったそうです。

創業社長のバイタリティ

お話の中で、社長は自身が生き残るためにどれだけ必死に商売を営んできたか、次のようにお話しくださいました。

「(事業というのは)固い土に爪で溝を掘っていくようなものなんだよ。固い土だから爪も割れるし、血も噴き出てくる。それでも止めたら溝は掘れないから、血が出て痛くてもそれは必死で「全然痛くない」と思いながら掘っていったんだ。
そんなことを続けていったらようやく細いながらも溝ができて水が流せるようになったんだよ。ここまでくれば今度は幅を広げていくのだけど、何もないところから一筋の溝を掘ることを考えれば、どうってことない。
自分がそれをできるならそんなに難しいことではないんだけどね。それをできないことがすごく残念で仕方ない。」

「とはいえ、自分の跡を継ぐ人も大きく間違えなければ十分に溝を広げることはできるはずだよ。」とも仰っていました。

そんなお話をされた後、社長はご自身のこれまでのお話をされました。社長は九州のご出身。その身一つで東京に来られたそうです。東京に来られた時は本気で「日本一になってやる」と思っていたそうです。ただ現実は厳しく、5年ほどで「これは難しいかも」という考えが頭をよぎるようになりました。

それでも「とにかく成功するんだ」と毎日寝る時間を削って働いたそうです。社長は必死でした。誰もが知る都心の大きな交差点のど真ん中で車を停めてしまい、そこで居眠りをしてしまったこともあるそうです。今でこそ笑い話ですが、当時はそれくらいご自身を追い込んで、なんとか仕事を成功させようとされていました。

東京での最初の5年間、そしてその後の年月でも様々な人たちに助けてもらい、こういった人たちのお陰で今の自分があるということをお話されていました。

自分が動く、から、人を動かすへ

また、私自身「なるほどその通り」と感じた次のようなお話もありました。ある時期、社長は売上1億円の壁に悩んでいたそうです。1億を突破する年があるとその次の年は1億を達成できず、ということを繰り返している時期があったそうです。


社長はそのことをお知り合いの社長に相談されたそうです。その方は「社長自身が仕事に入っていないか」とおっしゃいました。当時、社長は仕事に積極的にかかわっていたそうです。質問を聞いた社長は、「社長が現場にでなくてどうする」と思われたそうです。しかしお知り合いの社長は「それだと1億円は超えられないなあ」とおっしゃいました。それはなぜか。社長はプレイヤーでなくマネージャーでなくてはならないからです。実務は社員に任せるべきだということです。

そこで社長は一大決心の下、仕事に直接入り込むのをやめたそうです。商品納品時は神頼みでとにかくクレームが来ないように祈ったそうです。ただ、祈るだけでなく、実際には職人任せになっていた仕事に最新機械を導入し事業の機械化を進めていかれました。より俯瞰的な立場で事業に向き合うようになられたそうです。

その結果、売上1億円の壁を安定して超えられるようになりました。仮に社員がうまく動けておらず、それを修正しようと社長自身がその仕事の中に入ってしまえば、その仕事はうまくできたとしても、それが全体最適になるかは別問題ということでしょう。

このお話は私自身にも、また多くの社長の方々にとっても、事業に対する姿勢に一石を投じるエピソードと言えそうです。


そしてお話を伺っていて感じたのは経営者の引き際の難しさです。社長は会社の長ですから、自らの進退は自らで決めるしかありません。

プロ野球やプロサッカー選手を見ていても、若くしてその引き際を惜しまれながら引退する選手もいれば、それこそくたくたになるまでプレーし続ける選手もいます。どちらが正しいということではなく、また周りがどう思うかということでもなく、「自分自身が現役にピリオドを打つことに納得できるか否か」こそが最も重要なように感じます。

ただプロ野球選手やプロサッカー選手と違って社長には会社があります。社員がおります。会社の行末をどうするかが社長としての最後の仕事です。

子供に承継する、社員に承継する、外部から経営者を招聘する、M&Aで会社を売却する、会社を清算する、いろいろな出口がございます。正解はないといいつつ、社長が社長を辞められた後も会社と社員が成長できることが一番のように思います。しかしこれも私の勝手な思いです。正解は何通りもあるのでしょう。

社長という職業は最後の最後まで大変な職業です。