マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

社員の教育の難しさ

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第202号] 社員の教育の難しさ 

2025年3月26日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の202】

『言葉を選び、言葉を尽くす』


「言われた相手の気持ちを考えろ」とはよく聞く話だが、簡単なことではない。

言った者が自分の理解の範囲で勝手に考えた相手の気持ちと、相手が感じる真の相手の気持ちというのはズレてしまうことが大半だ。

これを違う人間だからと思考を止めてしまうのか、少しでも理解してもらおうと言葉を尽くすのか。

良い社員を育てるために言うべきことはきちんと言うべきなのはもちろんだが、立場がある人間の言葉ほど重く相手の心に残り、影響を与えてしまうということを忘れてはならないだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

儲かるように自発的に考えて動くための教育

ある顧問先様社長のお話です。
「当初予想通りに利益が出なかったときこそ社長の出番。予想通りに利益が出ている限りは実は社長のやることなどほとんどないと言ってもよい。思った通りに利益が出なくなった時こそ、社長の本質が問われる。」というようなお話がありました。

この会社にとって2月は稼働日数が他の月より少ないので元々利益の出にくい月です。そんな中、ストックしてあると思っていた原材料がなかったせいで、発注を受けた100のうち10程度しか製造できないことが判明しました。現場責任者は「まず10の製品だけでも作り得意先へ納品し、残りの90はお詫びして了承いただいた上で次回以降の納品としよう」と決断しました。

この判断に対して社長は次のようにお話されました。「100の注文に対して100納められなければ、10だけ納めても得意先にとっては意味のある話とは思えない。おそらく部門責任者は当日100作るためにスタンバイしている人がいることも考え、これらを無駄にしないためにも10だけでも製造してしまおうと考えたのかもしれない。でも10を作るだけでも結局、100を作る時と同じ時間をかけて機械の洗浄やその他の清掃作業が生じてしまう。そう考えると生産効率は大きく落ちてしまうから、この判断は間違いだったと言わざるを得ない。これは仕事をした気になっているだけだ。」と。

では、すでに人もスタンバイされている中でこの部門責任者は何をするのが正解だったのでしょうか。社長の答えはこうです。「私だったら(もちろんお客様の了承が前提となるが)今回の納品は諦める。一切作らない。その代わり普段、作業に忙殺されてやれていない、例えば、時間がある時にやろうと思っていたことや、部門のみんなで集まって決めるべきことを決めたり、といったことをするだろう。こんな機会は実はめったにない貴重な時間だ。どうしてこういった貴重な時間を大事に活かさないのだ。」

今回のような事象が発生した場合に、この社長のように事態を俯瞰的に捉え、ふと湧いてきた空き時間を「今後の生産性を上げるための施策を考えるための時間」として活かせる中小企業がどれほど存在するでしょうか。これは社員自身が主体的に考え、能動的に動かなければできないことです。

中小企業では、社長が全てを把握し、指示命令していることがほとんどです。そのため社員が自ら考え、行動を起こすことは難しいでしょう。
ですが今回の会社では、それを社長が社員に求めました。今ではこの会社の社員もそれに応えようと考えること、動くことに対して以前よりずっと積極的になっております。上場会社でもなかなかそこまでできている会社は少ないように思いますが、それが中小企業であってもでき始めていることに感服します。

社員の成長を促すための言動と接し方

もうひとつ、この社長の面白いところは「あまり積極的に社員と話をしている様子がない」ということです。先代の社長が積極的に社員やパートの皆さんとコミュニケーションをとったり、現場に朝早くから入られたりしていたのとは対照的です。

というと皆様はこの社長を穴熊社長のように感じられてしまうかもしれません。しかしこの社長は一人一人の社員を少し離れたところからじっと観察されています。実に人をよく見ているなと感心します。そして人の心理を考えた言葉をかけます。ちょっと油断してるなと感じる時には発破をかけたり、不安になっている時には楽観的な言葉をかけて安心させたりと。いずれの時も、非常に論理的に、決して感情的な態度や言葉ではなく、相手に言い含む、諭すようなお話のされ方をします。

腕力が絶対に悪いとも思いませんし、社長の社員に対する対応の話なので、絶対的な正解はありません。この会社の社員は社長に対していろいろ諭されている人ほど、社長への敬意が大きいですし、そうでない人でも「社長の話はわかりやすくて、スッと頭に入ってくる」というお話をよく聞きます。

私からみても社員を甘えさせるようなことはしていませんし、むしろ笑顔で結構厳しい目標を社員に与えているように思います。とにかく社員が成長するために言葉をかけている印象です。

社員の成長が会社の成長に繋がり、それが儲けに繋がる。社長は、自分の社員に対する接し方を適宜確認する必要があります。「この接し方は、社員の成長につながるものだろうか」という自問を繰り返すうちに、社長なりの方法が確立されていくのではないでしょうか。