マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

経済状況は再び悪化してしまうのか

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第203号] 経済状況は再び悪化してしまうのか 

2025年4月9日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の203】

『急変時に求められる経営力』


外部環境の急な変化に対し備えの万全を期すことは難しいが、いざ起きた時に素早く情報を集め守りの態勢を敷けるかは経営者次第である。

初動を見て対岸の火事と終わらせるのか、先々の自分事と捉え思考を巡らせるのかで後々に差が出るのは言うまでもない。

いざ自社に影響が出始めたときに、今からどう動けば儲けを守れるのか?資金を維持できるのか?

競争の一歩先を進めるよう舵取りをして頂きたい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

経済危機が迫っているという危機感を

アメリカのトランプ政権は日本製品に24%を追加課税する「相互関税」の導入を表明しました。
「アメリカにとっての非関税障壁を考慮すると、日本はアメリカに対して46%の関税を課していることに相当する」というのが先方の言い分です。

この46%の算出根拠については以下のとおりの推測がございます。アメリカの商務省によると2024年の日本からアメリカへの輸出額は1482億ドルで、日本にとって684億ドルの貿易黒字でした。684億ドルを1482億ドルで割り、100をかけると、46%となります。

トランプ政権は、日本の追加関税について日本のアメリカに対する関税率に加え、アメリカにとっての非関税障壁を考慮すると、46%の関税を課すことは相当であるとしていて、上記数値と一致はしています。

ただこの計算結果を用いているとして、なぜこの計算結果から46%の関税を課すことになるか理由が全く分かりません。簡単にいえば粗利益÷売上高ですから46%という数字は企業でいうところの粗利益率に近い概念です。利益率が高いからといって関税をかけるというのは、自由貿易からすればナンセンスとしか言いようがありません。

社長の皆様にもいろいろと思うところがあるとは思いますが、私がここで何を述べたところで解決にはつながらないので、政府にしっかり対応して頂くとして、当面関税が高くなるとすれば、その影響を考えなくてはなりません。

そもそも関税は、自国市場を安価な外国商品から守り、自国の製造業と労働力を育成しようと考える政府からすれば非常に有効な手法であるといえます。ただし相手国が黙って従っていればの話です。そうでない場合、今回でもアメリカの関税上乗せに対して中国をはじめとする国々では報復関税をアメリカに対して課すことを決定しています。

こうなってしまうと貿易自体が縮小してしまい、世界経済が減退してしまいます。そのいい例が昭和初期の世界恐慌以後形成されたブロック経済です。


外部環境の悪化時には中期の資金繰りの見直しを

ブロック経済とはイギリスやフランスなど当時植民地を持つ国が、植民地を「ブロック」としてその中で関税同盟を結び、第三国に対し、高率関税や貿易協定などの関税障壁を張り巡らせて、あるいは通商条約の破棄を行って、他のブロックへ需要が漏れださないようにすることで、経済保護した状態の経済体制のことをいいます。

1929年から1933年の世界恐慌期に、資本主義主要国がブロック経済政策を採ったため、世界貿易はこの4年間に7割減少、その結果、欧米と日本で数千万人の失業者が出ました。そのような社会不安を背景に、イギリス・フランス・アメリカの「持てる国」グループと、ドイツ・イタリア・日本の「持たざる国」の勢力圏をめぐる対立が深刻化し、ソ連社会主義政権に対しては双方とも警戒心を強めながら接近を模索するという複雑な外交関係の進展を経て、最終的に連合国と枢軸国とに二分されて第二次世界大戦に突入しました。従って、帝国主義諸国がブロック経済政策を採ったことが世界大戦をもたらした直接的要因ということもできる訳です。

戦争状態になるかどうかはわかりませんが、互いに高関税率をかけてしまえば当然に世界貿易が縮小してしまうのは歴史が証明しています。日本の稼ぎ頭である自動車産業も全世界に対する北米への販売比率が高いためその影響は甚大です。

しかもどの製品についても46%の高関税が課されるので、結果として物価は上昇してしまうでしょう。そうなればあらゆる産業において原価率の上昇は避けられません。

ようやくコロナ禍から立ち直りかけていたにもかかわらず、ほぼ人災のような形で景気後退局面に入りかねない状況です。コロナ禍で傷んでしまった財務状況を考えるとかなり厳しい経営環境を視野に入れる必要があるでしょう。

これまでは中小企業の経営をしていれば10年に1回くらいは外部経営環境によって経営が厳しくなる局面があるという話をしておりましたが、今日では数年に1回、経営に大きな影響を及ぼす外部経営環境の変化が起こるような時代になってしまいました。

この際ですから、改めて資金繰り状況の確認、融資を受ける準備、目の前の業績をなんとか黒字化へ持っていく、できれば少しでも多くの儲けを残しておく、といったことを念頭において実行していく必要があります。

1980年代の世界に冠たる日本だった頃から見ると、世界から構われなくなった日本となった今、大国アメリカで起きた嵐をもまともに受けることになった日本の悲しさでしょうか。

刻々と要人の発言をもとに事態は動いており、このメールマガジンが発信される頃にも新たなニュースが出ていることでしょう。直接影響が出る顧問先様は言うまでもありませんが、そうでない顧問先様も遠からず自社に影響が巡ってくるものとお考え頂き、注視を続けて頂きたいです。