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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第204号] 真の黒字決算を目指すために
2025年4月23日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の204】
『貸借対照表経営』
よく「損益計算書は社員が作り、貸借対照表は社長が作る」と言われる。
貸借対照表は経営者の思想がよく表わされており、事実として貸借対照表が汚い(雑勘定や滞留が多い)会社ほど儲かっていないものだ。
在庫や債権債務ときちんと向き合わないというのは、経営においては愚挙に等しい。
自分の財布を勘定しないと公言している経営者が果たして儲けられるのだろうか?
儲けるために取るべき姿勢を取れる経営者であって頂きたい。
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税理士業界は年末からの繁忙期を抜けてほっと一息というところですが、マエサワ税理士法人では3月決算法人の顧問先様が多く、その顧問先様の決算監査で変わらず緊張感に包まれております。
昔は日本中が正月になれば皆一斉に休み、正月明けから同時に働き始め、お盆に一斉に休暇を取り、お盆明けから暮れまで働いて1年を終えていましたが、最近は働き方、休み方も人それぞれとなり、昔のような働き方の「型」がなくなったように感じます。
かつては気候も四季がはっきりしていましたが、最近は秋を感じる間もなく急に冬に入ったり、4月にもかかわらず30度近くまで気温が上昇したりと四季を感じるのが難しくなってきました。
経済もトランプ大統領の一声で為替から輸出入の状況までがらりと変わる、いろいろな意味で混沌とした世界になったと感じる今日この頃です。
今まで以上に、状況や環境の変化に敏感になり、儲けのチャンスを逃すことがないようアンテナを張って過ごしたいものです。
さて、話は戻り、3月決算法人の顧問先様は今まさに決算作業に追われていることと思います。決算という区切りで改めて確認して頂きたいことがございます。
儲けたいなら当たり前に棚卸をしましょう
まずは「在庫」の棚卸です。上場会社でさえ3月決算の会社は4月1日には丸一日ラインをストップさせて棚卸をします。仮に製造していれば1日で数億円の売上が作れるにもかかわらずです。つまりはそれだけ棚卸をすることには重要性、価値があるということです。
在庫はお金がモノに姿を変えただけです。その在庫を売ることでまたお金に変わって戻って来ます。付加価値の高い在庫ほど多くのお金に変わって戻って来ます。従って在庫はお金そのものであり、それをどのように管理しているかは非常に重要です。
倉庫を見れば在庫がお金として扱われているか、単なるモノとして扱われているか一目瞭然です。ずさんな在庫管理は、お金を数えもせずに放置しているようなものです。
また、滞留在庫が多い会社の社長は大抵、「せっかく高いカネを出して買ったモノだから捨てるなどもってのほか」という理由で、資金化するために投げ売りをしたり、廃棄することを躊躇うことが多いです。
気持ちは痛いほどわかります。在庫はお金そのものだから、叩き売ったり廃棄をすることは言いかえればお金をドブに捨てるようなものだとなるのだと思います。しかし売れない在庫だとすれば、その在庫を保管しておくために倉庫料を払わなければなりません。またこういった売れない在庫が多い倉庫ならば、商品探しも一苦労です。そこには無駄な作業時間が生まれます。さらに売れない在庫が食品であれば鮮度やにおいの問題も出てきます。そんなことを考えると売れない在庫は処分しなければ新たな損失を生むことになりかねません。だからこそ投げ売りや廃棄する意味があるのです。
ただし、在庫を投げ売りすることで、あるいは廃棄することで損失が出るのも事実です。赤字の状況ではできることではありません。結局は儲けが出ていないとできないことです。とはいえ、売れない在庫を抱えていて良いことはありませんから、できるだけ早い時期に解消することが肝要です。今期赤字で実行できない、ということであればなんとしてでも来期には在庫整理するために黒字化を目指さなければなりません。
貸借対照表の健全化をし、本当の銭がいくらあるのか?を意識しましょう
次に決算で確認したいのが債権(売掛金・未収入金等)です。貸倒懸念債権の有無の確認は必須です。貸倒懸念債権については貸し倒れの事実が明らかになった期に貸倒処理しなければ、税務上損金扱いにならないためです。
こういった明らかな不良債権はわかりやすいのですが、入金されているものの入金が遅れがちな取引先の債権も要注意です。
債権回収についての逸話は様々な社長から伺います。正直、ここに書けないようなことも伺うことがございました。ただ対価をしっかり回収するということは資本主義からすれば当たり前のことです。ここの会社には払っておかないと面倒だ、この会社なくしてうちの会社はやっていけない、という暗黙のプレッシャーを取引先に抱かせるのも大事なことかもしれません。
売掛金100が貸し倒れれば100の貸倒損失(費用)が発生します。この100を利益で取り返すには、新たな売上を100÷利益率だけ作らなくてはなりません。利益率10%の会社であれば、100の損失を取り返すために新たな1000の売上を作る必要があるのです。ですから貸倒の金額が大きくなるほど会社の存続は危うくなります。
営業が上手な社長は、実に見事に売ってきます。ただせっかく売った債権の回収まで目が行き届かない社長も中にはいらっしゃいます。これではいくら儲けてもお金が貯まりません。こういった状況にないことを確認するためにも債権の年齢調べ(債権がどれくらい期間でお金として回収できるか)をお勧めします。決算時はもちろんですが、大事なことですので定期的な実施が望ましいでしょう。
また、債務の支払期間とのバランスも考えたいところです。つまり債権回収期間より債務支払期間のほうが長ければキャッシュフロー的には楽ですが、その逆になればそれだけ運転資金が余分に必要になります。同じ売上、仕入であってもキャッシュフロー状況が楽であったり、厳しかったりするわけです。このあたりも取引先へ交渉の余地はあるように思います。あとは決算を通じて売上や仕入に関して契約を見直し、価格改定の時期が来た時に価格交渉をできる材料を考えておくこと、これも重要なことです。
決算となると多くの会社で在庫や売掛金の棚卸をします。しかし、その結果が意味すること、経営に与える影響を理解して確認、集計している中小企業はどれだけあるでしょうか。小口の未払費用をもれなく計上することも否定はいたしませんが、経営的に見れば圧倒的に在庫の確認、と債権の回収状況の確認が重要だと思います。それらは商売の肝であるからです。
稼ぎづらい世の中になった今だからこそ、物事の重要性を理解した効率的な判断を積み重ね、儲けに繋げていきたいところです。