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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第206号] システムといかに付き合うか
2025年5月21日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の206】
『金を払う相手が価値を感じる仕事を創る』
アメリカのプログラマーの数が、2年間で約3割減少したというニュースがあった。
ここ数年でAIの発展には目を見張るものがあり、AIに出来ることに人員を割き、賃金を支払う時代は終わりが訪れている。
機械に出来ることを機械と競争しても勝てるわけがない。勝負をすること自体が誤っている。
人間だからこそ出来る領域を発掘し、どう価値を創造し、儲けを生み出すことができるかの挑戦がこの先は求められるだろう。
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技術の進歩により求められる”当たり前”も変わる
最近の会計ソフトの進化を皆様ご存知でしょうか。名前を挙げれば、freeeやマネーフォワード、弥生会計、PCA会計、勘定奉行、TKCのFXシリーズと様々なものがございます。PCに会計ソフトをインストールして使用するタイプのスタンドアローン型がこれまでの主流でしたが、最近はネットに繋がるところであればいつでもどこでもどのPCでも使うことができるクラウド型への移行が進んでおります。
クラウド型の優れているところは、請求書や領収証をスマホのカメラで撮影することでそのデータが会計ソフトに送られ、そのデータから仕訳が自動作成されるところです。またネットバンキングを利用していれば、会計ソフトと連携させることで口座データを仕訳化する機能もあり、非常に利便性が高いです。
会計ソフトが登場する以前は紙の伝票に仕訳を記帳し、総勘定元帳といわれる元帳へ転記し、それを基に試算表を作成しておりました。全て手書きですし、計算も電卓を使っていました。誤りがあれば修正も一苦労です。
こう書いている私もさすがに手集計した経験は一度もございません。昭和50年代にコンピュータが登場し、仕訳伝票を会社で作成すれば、その仕訳伝票を会計事務所が預かり、会計事務所内で仕訳をコンピュータに打ち込むことで、翌日に試算表が上がってくるという時代に変わりました。
それでもお客様への月次巡回監査は月1回が基本ですので、例えば3月分の仕訳伝票を4月に月次巡回監査でお預かりしたとすれば、試算表をお渡しできるのは4月に月次巡回監査でお邪魔してからお客様へ郵送するまで1週間程度頂いておりました。実際に3月分の試算表の内容について社長とお話しできるのは1か月以上経過した5月の月次巡回監査ということになっておりました。
その後コンピュータの小型軽量大容量化が進みます。先にご紹介した会計ソフト(当初はスタンドアローン型の会計ソフト)が登場すると、お客様自身で仕訳を会計ソフトに打ち込むことができるようになりました。
会計事務所も会計ソフトのデータを見ながらチェックができ、ようやくほぼリアルタイムに月次決算を正確に締めることができるようになりました。
さらにクラウド化により進化しているのが現在です。顧問先様に伺わなくとも経理の数字を見ることができるようになりましたので、コロナ禍では少なくない会計事務所がオンラインでの巡回監査を利用していました。
AIとの競争に巻き込まれるような仕事からの脱却
さてそれはさておき、会計ソフトを使って経理業務の効率化を図っていくことは重要なことです。ただ会計ソフトを使っても結局、最終判断は人がやらなければなりません。
世間では、会計ソフトを導入すれば(=利用申し込みを行いさえすれば)すぐに省力化を図れると思われているきらいがございます。これには大きな勘違いが潜んでおり、何よりもシステム導入場面でかなり苦戦することが多いのが事実です。会計ソフトを立ち上げるのに非常な労力とそれなりの時間がかかることを認識しなければなりません。これは会計ソフトに限った話ではありません。中小企業が導入するシステムのすべてに当てはまる話と言えるでしょう。
多くの会社でシステム導入には一苦労どころか二苦労も三苦労もします。システム導入した後もシステムのチェック体制が整っていないばかりにシステム導入の甲斐がないと感じてしまうことも垣間見えます。
システムは同じものを入れれば同じように処理します。最初に誤った設定をしてしまうとずっと誤った処理をすることになります。設定を誤れば、システムは無価値なデータを吐き出し続けてしまうのです。また、条件に変更があったときにシステムも設定の変更をかけないと、以降の取引を従前と同じように処理してしまうのです。
何を申し上げたいか。結局、システムを扱う人間がシステムをきちんと理解していないとシステムを使いこなせない訳です。社長が全部理解する必要はありませんが、よく理解している社員にしっかり管理させることです。システムは、金を払って終わりではありません。導入と運用を適切に行うことによって、初めて効果が出てくるものなのです。
今ではAIを搭載したシステムも続々と登場しているようです。ただ残念ながら会計システムはその域に達しておりません。しかし、システムでやれるものは人がやらずに、人しかできないことを人がやらなければ、周囲に勝てない時代がもうすぐそこまでやってきています。
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従業員を思うように採用できない時代は続きます。これからの生産性向上には、効率的なシステム利用が欠かせないと言えるでしょう。システムでは代用できない業務に時間をかける経営者でありたいものです。