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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第218号] 生産性の捉え方
2025年11月5日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の218】
『黒字の会社が意識していること』
金を払う顧客目線で役に立つ製品・サービスを開発し、売る側が適正だと思える価格で買ってもらうよう尽力すること。
これが必要な利益を確保し、生産性を維持向上させるための根幹となるサイクルである。
儲けられているのか?成長できているのか?を常に意識し、会社を伸ばして頂きたい。
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生産性の捉え方で生じるギャップ
日本の生産性が諸外国と比べて落ち込みが激しい、と言われて久しいです。GDP(国内総生産)ではアメリカ、中国、ドイツそして2026年にはインドにも抜かれ、日本は世界5位に落ちる見込みとなっております。
「世界経済のネタ帳」によれば2024年の日本の人口は193か国中11位で1億2300万人です。人口が1億人を超えている国は16か国のみなので、人口減少が叫ばれている日本ではありますが、現状でいえば世界的にはまだまだ人口の多い国といえます。
次に一人当たりGDP、つまりGDPを人口で除した数値で見てみると、「GLOBAL NOTE」によれば2024年の日本の一人当たりGDPは32,443ドルで195か国中40位となっております。39位はブルネイであり、41位はクウェートです。G7各国はおろか韓国(34位)にも及びません。国全体のGDPでは4位ながら人口で除した一人当たりGDPになると40位ということです。
ジャパンアズNo.1と言われた1990年当時の日本を知っている人の中にはそれほどまで日本は落ちたかと思われる人もいらっしゃいますが、これが現実です。とは言いつつ、私自身、実は何かしっくり来ていないところもございます。
昭和後期の日本人より今の人々は仕事をしていないでしょうか。確かに昔ほど日本人は働かなくなったとよく言われるようになりました。また働き方改革により残業をすること自体、難しくなっております。そういったことはあるにしても、それが一人当たりGDPの落ちた主要因なのかと言われると、本当にそうなのだろうかと引っかかるものがあるのです。
そんな中、なるほどと思える記事を見ることができました。公益財団法人日本生産性本部生産性総合研究センターの上席研究員であり学習院大学経済学部特別客員教授である木内康裕氏の書かれた記事です。
木内氏は記事内で「 『日本の労働生産性が低い』と言われると違和感を持つ企業人も少なくない。・・・にもかかわらず、何らかの「違和感」が生じてしまうのは、生産性をどう捉ええているのかにギャップがあるためと考えられる。」と書かれています。木内氏がいう生産性のギャップとは何なのでしょうか。
金を払いたいと思ってもらえる役立つ製品・サービスの追求
企業現場での「生産性」は、工場では人時当たりの生産数量、販売店では売上や契約件数などで測られる「物的労働生産性」が主流です。これは定量化しやすく、個人の努力で改善可能なため、現場で広く受け入れられてきました。
しかし、業務内容が異なる部門間や企業間では指標が統一できず、比較が困難です。そのため、産業や国際的な比較には「付加価値労働生産性」が用いられます。
日本人の働き方に対しては高い物的生産性の印象があるが、それは定量化できず印象論にとどまります。一方、付加価値ベースでは日本の生産性は高くないとされ、違和感を覚える人も多いのが現実です。
また、物的生産性が高く見えても、市場ニーズに合わない成果では意味がなく、単なる効率だけで生産性を判断することには限界があるのも事実です。
物的労働生産性を付加価値労働生産性に変換するには、価格(プライシング)と付加価値率(≒粗利益率)を乗じることになります。これは、現場にいる社員が効率的に働いて成果を出しても(=物的労働生産性を向上させても)、プライシングや粗利益率がマイナスに作用してしまっていると、付加価値労働生産性の向上にはなかなか結びつかないことを示しています。 (一般財団法人日本経済研究所HPより)
長引くデフレ下で、多くの日本企業は粗利を削って低価格を実現し、競争力を高めてきました。その結果、業務効率化によって物的労働生産性が向上しても、その成果が価格引き下げに使われ、付加価値労働生産性の向上にはつながりにくかったわけです。
実際、商品価格にどれだけ利潤を乗せているかを示すマークアップ率は、日本が米欧に比べて低く、過去20年間ほぼ変化していないそうです。一方、米欧ではマークアップ率は上昇傾向にあるそうです。
しかし最近では、日本でも物価上昇や人件費高騰を背景に、価格転嫁が許容されるようになり、企業が粗利益率を確保しやすくなってきました(なかなかそうなっていない業界もあるかと思いますが)。これにより、企業の工夫次第で付加価値労働生産性を高める余地が広がっており、日本の生産性向上を阻んできた一因が解消されつつあります。
日本では長期にわたるデフレからインフレ局面に変わってきております。賃上げ圧力も強まっています。一般論でいえば値上げは必須です。
上述の通り、物的生産性を上げた努力を企業努力という名の「値段据え置き」にしたことで本来得られるべき適正利益を得られず、その結果、投資に資金を回せず、新たな製品開発をできなかったというのが日本の失われた30年(デフレの30年)の正体なのではないでしょうか。
我々は①「何が顧客に必要とされているか」を考えつづけ、それを具現化して商品化・製品化していかなければなりません。そして、②その製品を「顧客に適正価格で売る」ことで初めて付加価値生産性を上げていくことができるのです。
自社の製品・サービスの値上げを顧客に納得させるには、究極的には「顧客の役に立つ製品・サービスを提供できるか」が全てです。自信を持って値上げを宣することができる製品・サービスの開発は決して簡単なことではありません。しかしこれに挑み続けていくことでしか、我々が経済社会で生き残る術はないのではないでしょうか。