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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第219号] 業績の良い時にやるべきこと
2025年11月19日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の219】
『一息つけるときこそ、会社の将来に繋がる行動を』
忙しいとは文字通り心を失くした状態を表し、思考や行動に余裕を持てないものだ。
会社や自身の成長に繋がる施策は心を取り戻したときに考えねば、別の何かを失うことだろう。
好調なときに胡坐をかかず、次の儲けのためにやれることをやる。
競争社会でしのぎを削る経営者ならば、是非とも一歩行動に移して頂きたい。
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ある顧問先様での10月度の経営報告会のお話です。10月としてはおそらく過去最高業績を出しました。その割には幹部の皆様はそれほど喜んでいる様子ではありませんでした。いったい何があったのでしょうか。
アクシデントが起きたとき、社長としてどのように改善を促すか
お話を伺うと、10月は好業績の裏で様々な問題が発生していたようです。営業上の問題、製造上の問題、そして労務上の問題が次々と。その都度、社長が社員になぜこの問題が起きたのか、どうすれば防げるのかを徹底的に議論し、そして幹部、社員に考えさせたそうです。
社員もそれを受けて今後いかに対応すべきかを考え、社長に報告し、改善策を実行しました。このように言葉で書けば、そうなんだと思われてしまいそうですが、社長の言うことを素直に受け止め、なおかつ自分の考えを改め、すぐに改善策を実行する社員の皆様も素晴らしいですし、そのように教育されている会社、社長がまた素晴らしいと思います。
報告会でも社長は社員に対してもっともらしいことを言ってその場をごまかしたり、社員同士でこんなことを言ったら場の雰囲気を悪くしそうとか、そんなのはいらない。空気が悪くなろうがむしろ場の雰囲気を読まない意見を言った方がいいと社長が話されています。
そういう意味で業績が良い今回は言うことがなくてつまらないと社長は笑顔でおっしゃいます。とはいえ、何もおっしゃらずに終わるということはありません。
なるほどと思うのは、社長が「業績が良い時は気持ちにも財務的にもゆとりがあることが多い。だからこそこういった時には繁忙時期にはやりたくてもできなかったこと、手をかけると時間がかかるようなことをすべきだ」とおっしゃることです。
気持ちにも資金的にもゆとりのない時は、特に経営者はお金をどうするかにしか頭が行きません。これでは良いアイディアが出るわけがありません。かといって業績が良い時はこういった会議をやっていても、たいていの場合は数字が良いということをみんなで褒めあって終わってしまうことが間々あります。これが油断を引き起こし、課題があるにもかかわらず解決していない場合には業績悪化を招くことに繋がっていきます。
こうなった場合、業績悪化により気持ちが落ち込み、資金的にもゆとりがなくなり初めて何かを変えなくては、何かを始めなくてはとなっても、こういう精神状態ではなかなかうまくいくものではありません。
だからこそ社長は「良い時にしかできないことをしっかりやりましょう」、一方で「悪い時こそが社長の出番だ」ともおっしゃっております。確かにその通りです。良い時は物事が順回転で進みますから、社長のやることもあまりありません。しかし悪くなってくると、その原因を見つけなければなりませんし、その対処も考えなければなりません。中小企業ではこれは社長の仕事です。悪い時にこそ社長の腕の見せ所とはまさにその通りです。
「多能工化」で社員の思考力、行動力を引き出す試み
この顧問先様では製造している製品ごとにいくつかの部門があります。基本的にはその部門ごとに社員やパートが割り振られております。以前は一度割り振られた部門からは異なる部門への異動はほとんどありませんでした。また部門間の人のやりくりもほとんどありませんでした。
ところが今では毎月のように所属部門の異動があります。部門間での人のやりくりも部門長同士で日々調整しています。さらには生産量が少ない時期は1日1勤体制にしたり、生産量を多くしなければならない時期は1日2勤体制にしたりフレキシブルに調整ができています。いわゆる「多能工化」です。利益率の高い部門への人材投入ができることでリスクの抑制や利益の安定、資金の有効活用などが得られるのです。
これも言葉にすると一言で終わっていますが、そもそも一人一人がそれぞれの部門の仕事をできていなければ部門間異動はできません。そのために時間をかけてまずは社員とパートの部門間異動を進めてきました。この顧問先様において、多能工化の真の目的は経営の効率化にとどまりません。「いろいろできるようになることでどうしたらより多く製造できるか、効率化できるか」などを考えられるようになるために多能工化を図っているのです。
以前のメールマガジンにも書いたことがありますが、いいと思ったことをすぐに実行するのもこの会社の素晴らしいところです。昼食の時間には社内のいろいろな委員会の人たちが曜日ごとに皆さんにスープをふるまったり、帰る際のお疲れドリンクや様々なレクリエーションがあったりと楽しく働くことができる、しかし馴れ合うのではなく各人は一生懸命働くという雰囲気づくりには感心させられます。
少し話が外れてしまいましたが、人を部門間でフレキシブルに動かすことができるということを経営的に考えれば、人件費を固定費ではなく変動費として捉えられるということです。稼げるときには人件費をかけ、そうでないときは人件費をかけないという戦術が取れるということです。
既に人手不足が叫ばれて久しいですが、製造業でもこのように人件費の変動費化に成功されている会社もございます。製造業以外の事業を展開されている会社においても、「多能工」の考え方が有用な場面は多くあるように思います。
社長の皆様のご参考になれば幸いです。