マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

財産保全について考える

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第226号] 財産保全について考える

2026年2月25日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の226】

『危機感なき経営者が溶かす銭』


外部環境の悪化を誰のせいだと議論しても何も生まず、起こっている事象への舵取りが遅くなるほど損失は増えていく。為替や物価の影響は実感が遅れてやってくることも多い。稼いだ銭を守れるかどうかは、変化に対し敏感に動けるかで決まるだろう。

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このままインフレ基調が続いた場合の貨幣価値

いよいよ日本もインフレ局面に突入しました。30年余りの間デフレ基調だった日本では、社長が事業で稼いだ銭をそのまま日本円での預金として貯蓄していても特に問題はありませんでした。これは、『30年前に預金した100万円が30年たった今でも30年前の100万円分の購買力を維持していた』ということです。

前回のメールマガジンに書いた通り、1995年からの30年間で世界の物価水準は4.5倍になりました。一方で日本は1.12倍です。日本で事業をしている分には、日本の物価水準はほぼ変わっていないので、儲けた銭をそのまま預金口座に預けっぱなしでも1995年からの30年間は貨幣価値が維持されていました。

しかしながらコロナ禍、ロシア・ウクライナ戦争などの外的要因により為替相場が急激に円安ドル高に振れはじめました。コロナ禍直前の為替相場は1ドル110円〜120円で安定していましたが、コロナ禍後、一気に150円台まで円安ドル高に振れました。

それに伴い日本の輸入財の価格は跳ね上がり、そのあおりで様々な産業で原価率が上昇し、その原価上昇分を回収するため販売価格が上昇し、結果として日本全体としての物価水準が上昇しました。

インフレ基調が継続した場合、仮に今後3%のインフレ率で推移するとすると、24年間で物価水準は現在の2倍を超えてきます。つまり『今、100万円を預金した場合、24年後の100万円で買えるのは50万円分である』ということです。

「儲けて、貯めて、遺す」ことが経営では肝要です。まずは儲けること、これができなければ事業を続けていくことはできません。ですから社長も日ごろから必死な思いで経営され儲けを出そうとされています。そんな思いで稼がれた銭も、インフレ下において日本円で預金していれば、貨幣価値が下落し、結果として今の購買力を保てない可能性が高まってまいります。

従ってインフレ局面に入った(かつインフレ基調が続くと思われる)今、儲けた銭の貨幣価値の保全を図るという、今まであまり気にかけてこなかった分野にも経営者として目を向ける必要がありそうです。

財産の目減りをどのように防ぐか

日本人は日本円に対する絶対的な安心感を持っております。まさか日本がデフォルトになると考える人はほとんどいないのではないでしょうか。さらに投資に対するイメージもあまりよくないのかもしれません。バブルの時は財テクだといって株式投資がゲームのように行われていました。投資知識がない人までがマネーゲームに参加していました。こうなるともはや投資でなく投機です。

投機も悪いわけではありませんが、金融や株式投資に関する知識なしに行うのは自殺行為といえます。日本では投資に関する教育がなされていないので、是非とも投資について勉強する時間を義務教育で作られたらどうかと感じずにはいられません。

だからといって円預金一辺倒では心配ではあります。円預金の場合、見た目の財産額が減ることはありません。100万円預金してそれが目減りすることはないと考えて良いでしょう。ただし、「額面としては」です。

しかし上述の通り、貨幣価値自体は下落するので見た目の100万円は100万円で変わりませんが、実質的な購買力でみれば100万円の価値がなくなっています。申し上げたいのは円預金が悪いというよりも単一の資産で持つことにリスクがあるわけです。

単一資産にリスクがあるとするなら、分散投資が視野に入ってきます。預金、株式、投資信託、金、不動産などに、納得したバランスでその組み合わせを考えていくことになります。よく個人の方が退職金をひとつの投資案件に集中して失敗し、退職金がゼロになってしまった、というお話を聞きますが、まさに単一資産への全投資が失敗した場合の悲惨な話です。

どうしても投資という言葉を使うと、何に投資すれば儲かりそうか、といった話になりがちですが、そうではありません。インフレ下で財産を円預金だけで運用していると将来目減りしてしまう可能性があるので、目減りするリスクを分散投資によって減らすのも一つです、ということが申し上げたいところです。

「投資で増やすのは、詳しい人や好きな人がやってれば良い、私は本業で稼ぎ現預金を残すのだ」が正解の一つであったこれまでと、流れは変わりつつあるというご認識を持たれる必要があるのではないでしょうか。

一方で自分が知らないものに対して投資していくのはされない方がいいのは言うまでもありません。あの人が言っているから大丈夫というのは全く当てになりません。結局は事業と同じく何に分散投資していくかは自己責任です。わからないものへの投資はしないに越したことはありません。そういう意味で多少の勉強は必要かもしれませんが、稼いだ銭を守るためだと思って考えて見られてはいかがでしょうか。