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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第5号]『本業にこだわる馬鹿 本業から離れる馬鹿』
2017年9月13日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人 専務の前沢寿博です。
最近、北朝鮮のミサイル発射実験等で不安な社会情勢になっている中ではありますが、いよいよ東京オリンピックまであと3年を切りました。
マエサワ税理士法人としても、顧問先経営者の皆様に大きなアラートを出しております。過去を鑑みても、オリンピック後に開催国の経済が落ち込むことは必至だからです。
今大事にされている本業が、オリンピック後に訪れるであろう不況に耐え得るのか、そんな近い将来を思い浮かべつつお読み頂ければと思います。
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◆◆マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の5◆◆
『本業にこだわる馬鹿 本業から離れる馬鹿』
今ある本業を大事にしてほしい。
大事にするとは、今のやり方に固執することではない。
企業を取り巻く経済環境は絶えず変化している。
時には変化を怖れず革新せねばならないときもくるだろう。
今日の正解が明日も正解とは限らない、それが経営だ。
今ある本業を大事にしてほしい。
隣の芝が青く見えるときもあるだろう。
ただし、本業を大きくかけ離れたことをしても勝ち目はない。
強い「本業」の周辺領域に目を向け、常に業態開発を試みるのが重要なのである。
お客様に金を払っても良いと思われる事業こそが、この経済界において、本業たり得る事業である。
顧問先様の中に、海外から輸入したワインの卸売業をしている会社があります。
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「本業を大事にする」ということ
毎年、社長が直接フランスに出向き、1か月ほどかけて様々なワイナリーのワインの出来を確認し、これはと思うワインを買い付けていらっしゃいます。
そうして手に入れたワインの在庫は30年以上も前のものから現在のものまで、その質・量ともに驚くものがございます。
そしてそれらのワインが高値で売れるタイミングを常に計りながら販売することで、粗利益率30%以上を維持し続けていらっしゃいます。
ある日、社長とお話をしている時、「社長、これだけ利益を出して、社長も給料を取られているのですから、きっといろいろな所から投資話がきて大変でしょう。運用が大変そうですね」と冗談半分で申しました。
すると社長は「前沢さん、投資効率がいいのは今やっている商売に決まっているんです。ほかの投資なんて多少利回りがいいって言ったって、自分のやっている商売ほどいいものなんてないし、第一、自分が全くわからないものに投資をするなんてあり得ないことでしょ」とおっしゃいました。
さらに「自分は幸い人よりはワインに精通している。だからそれを最大限に活かして商売をして儲けていくしかないんだよ」とも。
社長はワインの販売という本業を極めて大事にされています。そして、その本業へのこだわりは他社とその会社を分ける大きな違いとなっています。
しかしながら、社長が日々取り組んでおられる「本業の中身」は、どんどん変わっているのです。
もちろんワインを販売している、という点では何も変わっていません。
しかし、社長が売っているワインのラインナップは毎年どんどん変わっています。
そのために足を運ぶ買い付け先も、毎年どんどん変わっていきます。
その社長からはこんな話も伺いました。
ワインにする前の果汁の状態(いわゆるぶどうジュース)のものにフランスの生産者の人たちは炭酸ガスを注入して炭酸ジュースとして飲む習慣があるそうですが、これを社長が夏の暑い時に飲んだとき、そのあまりのおいしさにこれは商品化すれば必ずヒットすると確信し、商品化したら成功した、というお話です。
このように「本業を大事にする」ということは、事業を通じて社会に貢献するという本質は変えず、その時々の社会のニーズに合わせて商品開発や販売方法、販売ルートを変えていきながら「儲け」を追求していくことなのです。
「本業にこだわる馬鹿」
誰もが感じていらっしゃるように、ここ10年ほどの間で世の中は驚くほど様変わりしました。
変わっていくビジネス環境の中で、10年前までに儲かっていた企業が赤字に苦しんだり、会社をたたんだりしています。
みなさんも、信じられないような歴史ある大手メーカーの経営難も連日メディアを賑わせるのを目にしていることでしょう。
そうした企業の多くは「本業を大事にする」ということの本質を見失っているように見えることもあります。
「本業」の外形にこだわって、長らくやっていることをそのまま続けるだけでは、時代の流れから取り残されたり、消費者ニーズにあっていない商品やサービスになってしまいます。そしてじきに儲けが出なくなる。
大事なのはそうならないように常に自分を取り巻く経済環境にアンテナを張り、何を消費者が求めているかを常に確認しながら、消費者の求めている商品やサービスを常に提供できるようにフットワークを軽くすること。
そこを勘違いしてしまい、「何もかも今まで通りやっていくこと」こそが本業を守ることだと考えてしまうと、いつの間にか時代遅れの商売になり、結果的に本業を潰してしまうことにもなりかねないのです。
このような事態をマエサワ税理士法人では「本業にこだわる馬鹿」と称しています。
「本業から離れる馬鹿」
もう1つ、マエサワ税理士法人で、戒めとして語られている言葉が「本業から離れる馬鹿」です。
この最も分かりやすい例として引き合いに出るのが「ラーメン屋さんの社長に税理士が旨いラーメンの作り方を教える」というものです。
我々会計人にとって、自らの本業から大きく逸脱したコンサルティングをすることは、まさに「本業を離れる馬鹿」です。
我々会計人のサービスラインとしては、月次監査での経理チェック、申告書作成業務、そして最も重要と言って過言でないのが、社長への経営上のご提案です。
社長への経営上のご提案はいわゆる「コンサルティング」というサービスに括られますが、実のところコンサルティングというサービスには、非常に広い領域が存在します。
その中でも、ラーメン屋さんにラーメンの作り方を指導するコンサルティングは「ラーメンという料理に関するプロフェッショナル」が指導するものと考えます。
それでは、我々会計人がラーメン屋さんの社長にできるコンサルティングとは何か。それはラーメン自体の味にとやかく口を出すことではなく、あくまで経営面から見た指摘やアドバイスを行うことです。
商品別の粗利益率であったり、集客数の変動であったり、あるいは同業他社比較で他社より優れているところ、劣っているところを確認し、劣っているところをどう改善するか、その原因が人なのか、材料なのか等を探っていき、具体的にひとつずつ改善していくのが我々会計人のコンサルティングです。
企業にはそれぞれの領分があります。我々会計人には我々会計人の範疇があり、その外にはそれぞれがプロフェッショナルとして取り組んでいる範疇がある。その範疇を超えて事業をやるのなら、素人としてプロと対峙していかねばなりません。そんな事業領域で儲けが出る方が不思議です。
このように、他人の事業領域で生兵法を振りかざすことをマエサワ税理士法人では「本業から離れる馬鹿」と称しているのです。
本業にこだわらない、本業から離れない、本業を革新する
時代は常に変わっていきます。その中で持続的に経営を行い、事業を成功させ続けるためには、時代の変化に応じて本業を見直していかなければならない。しかし儲けを出そうと思うばかりに本業から離れすぎてしまうとそれもまたうまくいかない。
儲けるということは非常に難しく感じてしまいますが、儲かっている人はこのあたりのことを十二分に認識されて日々の経営をされていらっしゃいます。
「馬鹿」という言葉を使っておりますが、あくまでマエサワ税理士法人の中での経営についての考え方として使っているだけですので、ご気分を害された方がいらっしゃいましたらどうかご容赦ください。
いずれにしても「本業」でどうやって儲けていくかは、今も昔も将来も変わらないのでしょう。
今回で5号となりました。6号以降もどうぞ宜しくお願い致します。