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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第6号]『適正な仕事に対しては適正な報酬を頂く』
2017年9月27日 配信
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今年も台風シーズンとなりました。
10日前の台風も全国を跨がった大雨でしたが、皆様のお住まいの地域は大事なかったでしょうか?
今年は既に6月の台風3号(九州豪雨)に際し、激甚な災害指定がされています。
これ以降、被害の大きな台風が来ないことを祈るばかりです。
雨が降ると多くの飲食店では客足が遠のきます。台風なら閑古鳥が鳴くこともしばしばでしょう。
私がよく行く喫茶店では、雨の日はスタンプが2倍になります。
ついつい雨の日を狙って行ってしまうこともあり、まんまと戦略に乗せられているのでしょう。
コーヒー1つとっても、2杯目100円であったり、カード利用で10円引きであったり、スタンプ2倍であったりと様々ですが、「割引」に慣れてくるとそれが当たり前となり、あげく割引でなかったときに不満を抱くようになってしまいます。
より大きな割引を求めたり、定価であることを不信に思ってしまったり、本来、割引とは特別のことであるはずですのに、人の心情とは不思議なものですね。
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◆◆マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の6◆◆
適正な仕事に対しては適正な報酬を頂く
企業は競合他社との闘いを日々繰り広げる。
値引きを伴う販売促進そのものは悪いことではない。しかし無計画かつ慢性的な値引きに甘んじることは最早戦略とは言えず、企業にとっても顧客にとってもマイナスしか生まない。
利益率・利益額の維持増加は、儲けを出す上で唯一絶対の経営判断基準であろう。
それを実現するためにも企業は自社の値決めに際し、自信をもって価格を設定できるように、商品を見直し、お金を払う側が納得するような付加価値のある商品に創り変えていく必要がある。
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商品の価格ではなく、仕事の価値で顧客、満足を生み出す
バブル崩壊後、日本は超低成長に見舞われ「失われた10年、そして失われた20年、さらに失われた30年」が過ぎようとしています。その間、多くのサラリーマンの年収はほぼ横ばいのままです。
そんな中、企業は儲けを出そうと様々な手を打ってきました。その最たるものが商品・サービスの安売りです。スーパーでは毎日が安売り。飲食店でもチェーン店を始め、あらゆる店で安売り。果てはコンビニまで安売り。
一方で消費者も収入が増えないので、同じものなら少しでも安い価格で買おうとし、シビアに価格を比較する。家電量販店では他社より1円でも高ければ、その価格より安く売ると宣言しています。
大手量販店と同じ商品を扱っている中小企業が価格競争に巻き込まれれば、まず生き残れる見込みはありません。競合他社が近隣にいない、あるいは特殊なルートから通常では考えられない安い価格で仕入が可能であったりすれば別でしょうが、そういう状態を未来永劫続けていくのはそれこそ至難の業となります。
そこで、中小の会社では知恵を絞って、アフターフォローを充実させたり、大規模店の店員以上の商品知識でお客様にきめ細やかな商品説明を行ったり、オリジナル商品を作ったりすることで、会社の生き残りを図ってきたわけです。
一方で、安易に(こう言ってしまうと叱られてしまうかもしれませんが)値下げをすることで、どうにか商品を売っている会社も少なくありません。これらは、よく「低価格戦略」などと言われます。
ここで問題となるのが、「低価格」にすることが、本当に「戦略」として機能しているか、という点です。
「商品力の低下」は安売りでは解決できない
本来、「戦略」とは会社が将来に渡り、儲けを得るために、現在そして将来の消費者ニーズを予測し、ニーズに合った商品を創り出すことです。
一方、「低価格」戦略とは、ただ自分の持っている商品を安く売って今まであった売上を維持しようとするものです。低価格によって一時的には売上は多少増加するかもしれませんが、安売りしている分だけ粗利益率は悪化していますから、粗利益額自体は同じ売上であれば減少します。
販売数の増加による粗利益の増加や、リピートを期待した新規客の増加、他の高利益な商品の購買等が見込まれないようであれば、それはもはや低価格販売でしかありません。
本来は売上が落ちてきた時点で、商品力が落ちてきていることを意味していますので、商品をテコ入れし、付加価値をつけるなり、新たな商品開発を行わなければならないはずです。
にもかかわらず「低価格」つまり安売りに行きがちなのは、少しの間、今までの売上の維持・増加を図ることができるからで、うまくすれば粗利益額が維持できる場合もあるからです。ただしその場合でも当然に粗利益率は悪化しています。
粗利益額が維持できるならとりあえず「低価格」もいいのでは、と思われるかもしれません。しかし今までより10%多く売らないと今までと同じ粗利益額を維持することができないとするならば、販売コストも10%増加するでしょうし、今までより多くの人件費や販売費もかかってくるでしょう。そうなると「働けども益少なし」の状況に陥るのです。今まで以上に働いたのに従業員さんの給料はこれまで通り。従業員さんにも不満が溜まってきます。
そして安売りに慣れると、さらなる安売りをしないと商品が売れなくなってきて、もう売上の維持も困難になってきます。粗利益率は悪化の一途を辿り、もはや儲けを出すことなど不可能な状況に陥ります。
つまりここでの問題点は、商品力が落ちたために安売りしなくては売れない商品を、今までと同じようにただ安くして売っていることにあります。商品に更なる付加価値をつけたり、商品力のある違う商品を扱うことで、今まで儲けが出ていた時の粗利益率を維持できるように戦略を変えなくてはならないのです。粗利益額を維持しようとすると薄利多売=低価格戦略で少しの間は達成できるので、多くの経営者は安売りで局面の打開を図ってしまうのです。
安易に安売りに走らず、魅力的な商品と価値あるサービスを追及する
残念ながら世の中を見ていても低価格戦略がうまくいかないという結果が出ている例が数多くあります。スーパーのダイエーしかり、家電量販店各社しかり、マクドナルドしかり、枚挙に暇がありません。
もちろん、低価格戦略が必ず失敗するかといえば万に一つや二つはうまくいく場合もあるかと思います。しかし一般的に考えれば、日本は世界のどこよりも早く超高齢化社会に突入し、2020年のオリンピックが終われば、さらなる景気後退が訪れるでしょう。当然、所得も伸びづらい。そういう状況で、ある特定の会社だけが低価格戦略で儲け続けられる可能性があるかといえば、かなり厳しいと言えるのが現実ではないでしょうか。
だからこそ安易に安売りに走ってはならないのです。ニーズに合っていないものを売っても誰も買うはずがありません。ニーズがある商品、それも他社にはなく、できれば高くても買いたいと思ってもらえる商品の開発が必要なのです。
言うは易し、というのは承知の上で申し上げておりますが、そもそも安売りでしか売れないのは消費者からそのくらいの値段じゃないと買いたくないと思われている商品だからです。
既に述べた通り、安売りは非常に楽な選択肢です(人によっては、低価格は「戦略」でもなんでもない、という方もいるくらいです)。
よほどニッチで他社が入り込む余地がないような場合は別ですが、基本的に中小企業は知恵を絞ってどうやって付加価値をつけて商品力をアップさせるかを考えるのが常道なのではないでしょうか。
商品の価格ではなく、仕事の価値で顧客、満足を生み出す
◆◆◆◆たとえば我々マエサワ税理士法人は、会計人としてまず追及するのはお客様の儲けであり、それに寄与した対価をいただいて我々会計人も儲かる、という「当たり前のこと」を常に念頭においています。決して、自分たちのサービスを買ってもらうということを出発点にせず、お客様に価値あるサービスを提供することを第一に置いています。
同様に、どんな商売であってもまず追及すべきなのは、お客様に提供する商品・サービスの絶対的な価値です。
そして、その価値のある商品・サービスにご満足いただいたお客様から、適正な報酬をいただく。これが経営者として描くべき「戦略」ではないでしょうか。
お客様に提供する価値を高めていくことで、お互いが満足しあえる素敵な関係が生まれます。
経営者は、適正な仕事(=顧客への価値の提供)に全力を注がなければなりません。
そしてその仕事については適正な報酬を請求していかなくてはなりません。
させて頂いたことに対してはきちんと相応の報酬を頂く。その報酬に報いるために経営者も現場も工夫を凝らす。この循環を回すことの大切さは、どんな業種でも同じでしょう。
今回も長文にお付き合いくださいましてありがとうございました。次回もどうぞ宜しくお願い致します。