マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

会社がゼニを貯めるには、税金を支払うしかない

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第10号] 会社がゼニを貯めるには、税金を支払うしかない

2017年11月22日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人 専務の前沢寿博です。

11月も終わりに近づき、年末調整・確定申告といった税金に関する話題が俎上にあがる時期がやってまいりました。

企業を経営されている皆さまにとっては、「儲けは出したい。でも税金を払うのはちょっと…」という方もいらっしゃるかと思います。よい機会ですので、今回は「儲けと節税、その先にある貯えの考え方」をテーマに筆を執らせていただきます。

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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の10】
会社がゼニを貯めるには、税金を支払うしかない

税金を喜んで納める経営者はまずいない。
しかしながら会社がゼニを貯めるには、税金を支払うしかない。

目先の税金を減らすことばかりに目が行き、事業の時間と金を費やすことは、
自社の儲けとゼニを減らすことにしか繋がらない。

将来の儲けのために必要な金はしっかりと遣う。
そして納税した残りを、歯を食いしばりつつ、コツコツと蓄えていくのが会社経営の王道である。
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税金との向き合い方は百人百様

税金に対する考え方は社長ごとに異なります。

利益について課される法人税等について、「持ってけ、ドロボー」的な感じで出たまま納税される社長もいれば、なるべく節税をした上で、払うべき税金を仕方なく納税される社長もいらっしゃいます。

また、徹底的な(我々から見ると過度とも思えるほどの)節税をし、ほぼ税金を払わない社長もいらっしゃいます。

とはいえ、ほとんどの社長はある程度の節税をした上で、しっかりと必要分を納税されます。
我々マエサワ税理士法人の各担当者も社長に対して、節税の提案をさせて頂いております。

小規模企業共済や生命保険を利用した企業防衛であったり、個人事業からの法人税であったり、あるいは資産の含み損を実現させたり、と節税方法は多々ございます。こういった節税は企業価値を棄損しない範囲で是非ともやっていくべきでしょう。

「このままでは利益が出すぎる。課税額が増えてしまう…!」となったときの節税対策として典型的なものは、中古の高級車の購入や(限りなく遊興費に近い)接待交際といったところでしょうか。

「税金を払うくらいなら、車を買おう、接待をしよう」というお考えはある意味自然なようにも思います。
しかし、これが本当に「当たり前」のことかどうか、一度考えてみる必要があるでしょう。

無駄遣いと節税は別物

たしかに中古車を購入し、減価償却費を計上することで本来納税すべき税金を少なくすることはできます。

例えば500万円で中古車を購入したとします。そこから償却を行うことで数年後(場合によっては2年で)償却が終了したとします。
すると、法人税率が35%であれば、トータルの節税額は500万円×35%で175万円となります。

交際費についても同じです。
100万円の利益のうち35%税金を取られるくらいなら、パッと仲間内で飲んでしまう方が楽しいし35%だけでも節税できるのだからいい、という考え方ですね。

しかし、500万円の中古車を買わなければ、175万多く納税をすることになりますが手元には325万円残ります。
100万円の飲食をしなければ、35万円多く納税をすることになりますが手元には65万円残ります。

納税後手元に残ったゼニは、翌期以降の事業拡大のため、さらなる儲けのための重要な資金です。

もちろん、我々は「金を使う節税」を否定するつもりはまったくございません。

営業用車両がポンコツになり早晩業務に支障が出ることが予想されるとき、今期の利益予想に基づいて早めの修繕や買換を検討するというのであれば、それは将来の儲けのための支出です。

交際費を新規得意先開拓に使い、その結果として売上が伸びている場合には、交際費を抑える必要はないと我々は考えます。
現在は中小企業において800万円までは経費として認められますがそれを超えると税金計算上、経費として認められなくなっております。

例えば1000万円を交際費として使うと200万円については、税務上の経費として認められません。
しかし1000万円の交際費のおかげで10億円の売上が創れるのであれば、経費となるかならないかは些末な問題です。是非とも交際費を使ってください。

要は「その支出は儲けに繋がるのか」という判定基準をもって「金を使う節税」を検討していく必要があると私は考えます。

節税が目的であっても、儲けを生まない支出は、単なる趣味です。

お金が貯まる節税?貯まらない節税?

これらの判断は全て社長に委ねられています。
そして、こういった小さな判断の積み重ねの結果が10年、20年経過すると非常に大きな差になって出てきます。

税金に対する社長のスタンスが最も顕著に現れるのは、貸借対照表の純資産の部の「繰越利益剰余金」でしょう。
ここは税金を納めた後の過去の利益の総額が表示されます。

黒字を継続させている会社であれば、この繰越利益剰余金は大きな数字になっています。
一方で、過度に節税対策を行っていた会社ではほぼゼロに近い数字になっている場合もあります。

過去の儲けの蓄積が今になって、現預金に貯まっていたり、設備投資に回り固定資産になっていたり、あるいは不動産になっていたりする訳です。

逆に節税に躍起になりすぎていると、10年、20年後に振り返ってきたとき、なぜかお金が思っていたほど貯まっていないということになりかねません。

ですから一回一回の節税というよりも社長の考え方次第で10年、20年後の財務状況に大きな差が生まれる可能性があるのです。

会社と社長個人の財産をしっかり分ける。会社のものは会社のもの、会社は本業で儲けていき、儲けを貯めていく。
個人で必要なものは個人で購入する。このあたりを守っている社長は長い期間を通じて会社にも個人にもお金が貯まっています。

結局のところ、過度な節税に飛びつかず税金を支払ったほうが、会社にゼニが貯まるのです。

今回もお付き合い頂きましてありがとうございました。