マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

かくあるべきだというのは自分だけの考えであることを知るべき

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第11号] かくあるべきだというのは自分だけの考えであることを知るべき

2017年12月6日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人専務理事の前沢寿博です。
12月に入り、気温は10度を超えているものの、北風が冷たくなってきました。

内輪話ではありますが、今月半ばには税理士試験の合格発表があり、その後すぐに業界の採用活動が待っています。
求職者を含め今の若い方と「仕事とは」や「会社とは」といった話をしますと、一世代前とは仕事や会社に対する考え方・スタンスが変わったのだなと感じます。

もちろんどちらが良い悪いの話ではないのですが、今の若い方は昔と違い、働くことそのものに充実感を感じているというより、自己の達成感や自己の向上を重視しているように感じます。

よく年配の上司が「今の若いもんは…」という一言に含める、この何とも言えない噛み合わなさは根底にある「かくあるべき」という考えが強いからなのでしょう。

その「かくあるべき」も、世代や人や環境が変わればどこにでも当てはまるとは限らない、ということも忘れてはならないなと感じるこの頃です。

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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の11】
『かくあるべきだというのは自分だけの考えであることを知るべき』

人は気づかないうちに、自分の価値観を基準に考え、行動してしまう。

自分にとって「当たり前のこと」「正しいと感じるもの」「望ましい振る舞い」が、他人にとってもそうであるとは限らない。
こと客商売においては、「自分なりにお客様のことを考えて行った振る舞い」が、相手に不信や不満を持たせてしまうことさえある。

自分の価値基準を疑ってかかる、俯瞰的な視点を持とう。

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正しいと信じるものは、一人ひとり異なる

これはマエサワ税理士法人の研修の中で理事長である前沢永壽の口から頻繁に出てくる言葉です。

我々はそれぞれが「あるべき姿」と考えるものを持っています。
これまでの人生で醸成された「正しいと信じるもの」と言っても良いかもしれません。
自身が信じる「あるべき姿」の具現化すべく我々は業務にあたります。
しかしこれは往々にして「自分よがり」になってしまうことがあるのです。

私のどこが「自分よがり」だったか一緒に考えてみてください

最近の私の大失敗を一つ。

それは顧問先様からご紹介頂き、新規の顧問先様になって頂けると思い込んでいたお客様のお話です(つまりは契約に至りませんでした)。

そのお客様はコンサルタント業をされており、フランス人の男性社長と日本人の女性従業員2人、あとは外注の方と連携しているといった比較的小規模の会社でした。

初めてお会いした日に、女性従業員の方から「今までの税理士は専門用語ばかり使って社長はそれを理解するのにとても時間がかかった。だからわかりやすく会社の財務状況を説明して欲しい。それと財務から見て将来何をすべきか助言が欲しい」ということを言われました。

社長は日本語を話せますが、専門用語となると理解するのも一苦労でしょう。

弊社にも外国人の社長の顧問先様がございますので、「社長さん自身がある程度日本語がわかるなら、片腕である日本人の方のサポートのもと、財務状況や経営についての様々なご提案ができるだろう」と楽しみに考えておりました。

設立して10年ほどの会社でしたが、節税意識が強くあまり自己資本が厚くなかったので、とにかくオリンピックが終わるまでに(景気が悪くなる前に)、できるだけ儲けを出しましょう、ということが第一の提案。

次に社長から「節税をしたい」という要望を受けましたので、儲けを蓄えて景気が悪くなった場面で不動産を購入するのもひとつではないか、という話もしました。

いずれにしても利益からある程度の税金を払った残りである儲けを出して行く必要があり、それさえできれば金融機関からの融資も可能になる、という話をしました。

社長は「こういった話は今までの税理士からは出てこなかったから非常にうれしい」ということまでおっしゃって頂きました。手応え十分、顧問契約も間違いなし、といったところです。

また、従業員の女性から「生命保険」についても加入したいのだけど、ご相談に乗って頂けますか、との話。これも様々な提案ができる有り難いお話です。
といった具体に話が進み、こちらの顧問料も提示させて頂いたところで、初めてのご面談は終わりました。

私としては全くの不安なし。同行していた担当者とも「これは大いにお役立ちできるお客様だ」ということを話しながら事務所に戻りました。

そうして2回目のご訪問。生命保険については早期のご契約を希望されていらっしゃいましたので、いくつかのプランをお持ちして内容をご説明しました。「前向きに検討します」とのこと。税務顧問契約書も金額が定まり、契約書にご署名頂ければ良い状態で事務所に戻りました。

しかしながら…その翌日、社長からお電話をいただきました。結果は「契約締結に至らず」。

さて、それはなぜだったのでしょうか。

「自分よがり」は提案やサービスよりも「姿勢」に現れる

どういう心境の変化なのかわからなかったので、「なぜ契約できないのか」を伺いました。

返ってきた答えは「一緒にやっている女性従業員は私にとってパートナーだ。そのパートナーが『前沢は私をないがしろにしている』と言っているので、私としてはあなたと契約できない」というものでした。

確かに顧問契約というのは「会社とマエサワ税理士法人」というよりも「経営者とマエサワ税理士法人」でするものという意識で考えていたので、社長と話すことを重視していたのは間違いありません。顧問料を出すかどうか、いくら出すかの決定権は社長にあるからです。

一方で、常に社長の隣にいらっしゃる方がその会社内で重要なポストにいるだろうことも容易に想像できました。

しかし私は今回の打ち合わせを社長の顔を見て進めました。同席されている女性従業員をないがしろにするつもりはまったくありませんでしたが、重視するつもりもなかったかもしれません。

難しいケースかとは思いますが、「顧問契約は経営者と結ぶ。我々は経営者を納得させるべき」というあるべき姿を盲信したことが今回の失敗の原因だと考えています。私自身の狭い視野がほとほと嫌になりました。

経営者を納得させるとき、経営者だけを見ていては奏功しないこともあるのです。

これをお読みになられている皆様は私のようなドジは踏まないようにしましょう。

「かくあるべきだというのは自分だけの考えであること」を肝に銘じて邁進してまいります。

今回も本メールマガジンにお付き合い頂きましてありがとうございました。