マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

全ては正確な月次から始まる

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第14号] 全ては正確な月次から始まる

2018年01月17日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人専務理事の前沢寿博です。

あっという間 に1月も半月が過ぎました。行く先々で過ぎ去る日の速さを憂える声が聞こえてきます。すぐに「もうひと月」「もう一年」と口にすることになるのでしょう。

ひと月や一年といった「期間」の概念は様々なところで使われます。

会社でしたら一年間を会計期間とし、その中でも一ヵ月間ごとに「今月はどうだったか?」「来月はどうなりそうか?」と業績を検討される経営者の方がほとんどです。

さて、本日お話しするのは「発生主義会計」という方法です。

「今月は?」「来月は?」と数字を考えるときは、当然に過去や現在の数字を基にして考えます。
「発生主義」という考え方は、突き詰めれば本が一冊書けるほどに膨大な概念なのですが、一言で言えば、「うちの今月の利益って正しいの?」です。

どの会社も損益表をお作りでしょうが、そこに載っているお尻の利益は、きちんとその月の売上と、それを稼ぐために使われた原価・経費が対応しているでしょうか?

是非自社の損益表を思い浮かべながらお読みくださいませ。

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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の14】
『全ては正確な月次から始まる。』

儲けのために自社の何を改善するべきか?
その検討と実践の繰り返しが経営である。
検討するための材料となる数字が不正確なものであるならば
実践する次の打ち手も当然にズレたものとなってしまう。

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皆様の会社ではどれくらいの精度で月次試算表の数字を締めていらっしゃいますか。

私は過去、現在において様々な会社にお邪魔していますが、その方法と精度は顧問先様ごとに皆、異なっているなというのが本音です。

手書き伝票を使う

個人事業主や比較的小規模の会社でよく利用されております。

社長ご本人が請求書や通帳を見ながら伝票を手書きされています。

そして月次監査の際に、マエサワ担当者がその伝票をチェックし、会計事務所の会計システムに入力することで初めて前月の損益が分かるようになっています。

会計ソフトをレンタル・購入する

最も多いのがこちらのパターンです。

会計ソフトを購入ないしはレンタルしており、日々の請求書・通帳を見ながら入力をしていくため、入力の都度、その時点の損益を把握できます。

小規模の会社では社長や社長の奥様が入力されているケースが多く、中規模の会社以上になると経理の方を雇われているケースが多いです。

最近は廉価で優秀な会計ソフトが出回っていますので、利用される会社が増えています。

独自の会計システムを導入する

自社用にカスタマイズされた会計システムを利用されている顧問先様もいらっしゃいます。

この場合、販売管理システム、在庫管理システムなどとデータ連携がされています。当然に経理専門の事務員がいらっしゃり、日々の情報処理も膨大です。

規模の大きな会社ですと商品構成や部門構成も複雑になっており、こういったシステムにもかなりのコストをかけていらっしゃいます。

このように分類すると、どれが一番正確に月次損益を把握できるのでしょうか。

実はどの方法であっても正確な月次損益は把握できますし、逆に言えば、どんなに立派な会計システムを導入したとしても残念ながら正確な月次損益を把握できない、とも言えます。

つまり会計ソフトや会計システムの優劣で月次損益の正確性が決まる訳ではないのです。

月次損益計算の本質

何が月次損益の正確性を決めるのか。

シンプルに言えば、お金の流れを「事実」どおり会計仕訳に落とし込めているかどうかです。

日々、請求書が送られてきたり、銀行口座に入出金があったり、現金での入出金もあります。

では入出金がある度に仕訳を入力しなければならないのか、と言われるかもしれません。

もちろん、それがベストとは思いますが、規模が小さいければ一週間に1回程度でも問題ないと思います。ただし、コツはあります。

人間の記憶などはすぐに曖昧になります。その時は絶対に忘れない、と思っても少し時が経っただけで忘れるものです。
ですから通帳にも入出金の記帳をした際に、それらが何のための支払だったのか、あるいは入金だったのか、わかるようにメモしておくことが大事です。

月次試算の精度を高めるポイント

1.発生主義の実践
最も重要なことは、モノやサービスを消費したタイミングで経費を計上するということです。

例えば、「当月末に一ヶ月分を締め翌月初に請求書を受け取り、実際の支払は翌月末払い」といったことがございませんか?

この場合、金額を支払った時に仕入や経費を計上してしまいますと、実際にモノやサービスを消費した「当月」ではなく、支払をした「翌月」の仕入や経費として計上されます。

そうではなく、モノやサービスを消費した「当月」に、仕入や経費を計上しましょう、ということです。

この場合には当月には仕入や経費と併せて買掛金や未払金が計上され、翌月に支払いが行われるとこの買掛金や未払金が消し込まれます。

これを会計的には「発生主義」と呼びますが、まずはこの発生主義を実践していくことが正確な月次損益を作るための第一歩といえます。

2.即時即応即解決
次に大事なことは、その場ですぐに分からない支出や収入があったとしてもそれを先送りにせずに、必ずその場で解決しきることです。

ですから、分からない支出や収入があったならば、それに関わっている人、あるいは相手先に話を聞き、事実関係をしっかり把握することが必要です。

3.在庫を曖昧にしない
もうひとつ正確な月次のために押さえておきたいポイントは在庫です。在庫は最低でも月次締めをしていくことをお勧め致します。

不良在庫があれば、それを取っておくのが良いのか、捨ててしまうのが良いかの検討も必要になります。

捨てるのはもったいない、という話もよく聞きますが、そのせいで倉庫が雑然とし、必要なものを必要な時にすぐに取り出せない状況では意味がありません。

そもそも在庫を置く場所にはお金が掛かっている訳で、そこまで考えて処分するかしないか、考える必要があるのではないでしょうか。

正確な数字は嘘をつかない

こういったことを地道にやっていくと格段に月次損益に正確性が増してきます。すると数字は嘘をつきませんので、会社にとっての悪い部分が浮き彫りになっていきます。

更には得意先別分析、仕入先分析、部門別分析、同業他社分析など、我々からもお客様に合った意義のあるご提案ができます。

正確な月次損益がでてくるようになると、それは貸借対照表にも良い影響を与えます。正確な月次ができていない会社の貸借対照表を見ていると、仮払金に金額が何千万円も入っていたり、社長からの借入金がやはり何千万円もあったりします。

内容を伺うと「覚えていない」とか「何かの経費精算をし忘れていると思う」など非常に曖昧な回答を得ます。これでは儲かるはずがありません。

今月は利益が1,000万円出た。しかし仮払金勘定に1,200万円計上されている。

仮払金を整理すれば1,200万円の経費が計上されるなら、本来は「今月は200万円の損失」が正しい営業成績です。

これらはすぐにはきれいにはできませんが、我々もお手伝いしつつ何年かかけてきれいにしていくことが必要です。

ここでいう「正確さ」とは社長が社長の頭の中でわかっている「正確さ」とは違います。

例えば金融機関や、外部の人が見ても「正確」だなと思わせるくらいの「経済界から見た正確さ」が必要です。

実際にどの程度の「正確さ」が求められているかはその業種、外部利害関係者との兼ね合い、個々の会社の規模や状況、社長の考え方などで様々です。

現状の自社の月次決算が経営の実態を表現できているか、さらに精度を高めるにはなにが必要かも含め、是非マエサワの担当者とご検討頂けたらと思います。

正確な月次とは、問題を炙り出すことそのものが目的ではありません。問題を改善し、将来の儲けに繋げて行くためのものです。

次の打ち手を吟味する上の基本となるものが「正確な月次」なのです。

今回も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。