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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第16号] 納税をするという「覚悟」とは
2018年02月14日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人専務理事の前沢寿博です。
冬の寒さも本番を迎え、そろそろ個人の確定申告の時期が近づいてきました。
この時期には、いつも以上に納税・節税について考えを巡らせている方も多いのではないでしょうか。
今回は、「税金の原則」と「蓄えを増やすために必要なこと」についてのお話です。
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の16】
『納税する覚悟があれば蓄えは増える』
節税にこだわるあまり蓄えが増えないというケースは少なくない。
<税金は儲けが確定した後、財産を贈与した後、発生する>という原則を考えたとき、
長期的に蓄えを増やすためには「納税する覚悟」が必要だ。
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多かれ少なかれ、税金は必ず発生する
マエサワ税理士法人では個人事業主の経営者だけでなく、法人契約している会社でも社長や役員の方などの確定申告をさせて頂いております。
どれだけ発生し、どれだけ納付しなければならないのか?というのは誰もが気にするところです。
・会社で儲けを出せば…法人税が発生
・個人で給与をもらったり、事業をすることで所得(儲け)が出れば…所得税が発生
・自分以外の誰かから財産をもらい、それが生前贈与であれば…贈与税
・自分以外の誰かから財産をもらい、それが亡くなった方からの贈与であれば…相続税
法人個人を問わず、儲けが出たり、その儲けた蓄えを人に贈与すれば、何らかの税金がかかります。
この点でいうと、消費税は毛並みが違うかもしれません。
モノやサービスを提供し、対価として現金を受け取る際に消費税分を預かり、その一方で仕入れや様々な経費支払いの際に消費税分を払います。
そして、1年間の預かり消費税と支払消費税の差額を納付消費税として国へ納付することになっております。
もっとも、預かった消費税といっても資金繰りの中で「この預かった消費税は納付することになるから使わない」なんて会社はないでしょうから、実務を見ていると消費税の納付というのはやはり大変です。
しかも、儲かっていてもそうでなくても納付する可能性がある上、商売の商いが大きいと金額も大きくなります。そういう意味では、消費税は厳しい税金といえるでしょう。
節税はするべきだけれど…
さて最初から話が本題からずれてしまいましたが、ここで申し上げたかったのは
<税金は儲けが確定した後、財産を贈与した後、発生する>ということです。
マエサワ税理士法人では、税金を多く納付する可能性がある場合は特にですが、納税予想額を早めに顧問先様にお知らせするようにしております。
これは、可能な節税ができるよう、決算月末に間に合わせていただくためです。
可能な節税はした方が良いに決まっていますからね。
ただし…です。税金はあくまで儲けが出た後、儲けの蓄えを人に贈与した後に発生するのです。逆に言えば儲けが出なければ、あるいは蓄えがなければ、税金は発生しません。
ここで分かれ道が待っています。
ひとつは、やはり税金を払うのはなるべく避けたい、だから考え得るすべての節税をしよう、という考え方。
もうひとつは、通常の節税はした上でそれでも出た税金は払おうという考え方。
多くの社長は、特に社長になられてからの年数の若い社長は、前者の考え方がほとんどのように私は思います。私でもそう考えていたでしょう。今でも自分の感情面で言えば、出ていくものは少しでも減らしたい、というのは自然な欲求として理解できます。
しかしながら、10年、20年と時間が経過していくと、前者を選んだ社長と後者を選んだ社長の厳然たる差が見えてきます。
節税にこだわる社長は、蓄えが増えない?
考えうるすべての節税をする社長の会社は、時間が経過しても貸借対照表を見ると純資産の中の利益剰余金(過去の税金を払った後の儲けの蓄積)がほとんどゼロに近い数字であったり、毎日の資金繰りに忙殺されていたりします。
通常の節税はした上で、それでも出た税金は払う社長の会社は、利益剰余金の金額が大きくなっています。自己資本比率(貸借対照表の純資産の金額を総資産の金額で割ったもの)が30%を超えている会社も多々ございます。30%を超えると金融機関から「融資をさせてください。」という話も入ってくるようになります。もちろん金利も1%を切るような融資です。
税金という支出を減らそうと考えた前者ではお金が貯まらず、ある程度の税金という支出は仕方がないと考えた後者で比較すると、後者の方が結果として蓄えが増えるのです。
どうしてでしょうか?
儲っている人ほど税金を払っている
利益剰余金というのは純資産のところにあり、過去の儲け蓄積(事業で稼いだ儲けから税金を支払った残りの蓄積)だと説明しました。ですから税金を払わないような方策をとればとるほど、儲けが残らないようになるのは当然のことなのです。
このように考えれば至極当然のことですが、人間は感情の側面も持ち合わせているのでなかなか実行をするのは難しいのです。それでもそこを「割り切って」後者の考え方に変えられた社長は儲けの蓄積たる蓄えを増やしています。
こんな社長がいらっしゃいました。
うちは特殊な商品を扱っており高く売れるので、儲かっている。それも何年も続いている。でもなぜか決算の後にいつも資金繰りに困る。気づくとお金が足りない状態になっているんだ。なぜなんだろうと。
なぜ決算後にお金がなくなっているのでしょうか?
決算近くになると、事業で儲かっていて税金を払わなければならない状態になっています。そこで社長は税金を払いたくないので、極端に節税をしようと、不要不急なものや高級車を購入して経費をたくさん作る訳です。その支払いが決算後にやってきて資金繰りがきびしくなるのです。
もちろん税金はほとんど支払わずにすんでいるのですが、手元にお金が残っていない状況になっているのです。
税金を気持ちよく払えるような人は多くはないはずです。そうはいっても、経済的合理性から考えれば、税金を払わなければお金が貯まらないのも事実です。
会社であれば、100の儲けがあれば払う税金は30~34くらいです。つまり少なくとも66~70は手元に残るのです。
蓄えを増やすのに必要なのは、納税をする覚悟
社長はさまざまな我慢を強いられます。取引先に対して、家族に対して、あるいは従業員さんに対して…。いろいろなことに対しての我慢というものがあろうかと思います。でもそれは事業を成功させるため、儲けを出し続けるために我慢されているはずです。
儲けの蓄積に関しては、“なくなる方”を減らすのではなく、“残る方”を増やすという考え方をしないと、なかなか蓄えを増やせません。
これは、感情面を優先させる考え方ではなく、経済的な考え方をするということでもあります。
そして、できれば納税したくないという感情があると認めた上で、合理的選択により納税するしかないのだという「覚悟」が必要なのではないでしょうか。
最後に念のため付け加えますが、節税をしてはならない、ということではございません。
もちろんできる節税はした方が良いですし、そのご提案はマエサワ税理士法人各月次担当者がサポートいたします。ご遠慮無く、月次担当者にお声かけください。
今後も末永く、宜しくお願い致します。