マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

継続とは

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第19号] 継続とは

2018年03月28日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人専務理事の前沢寿博です。

「『継続』させることが重要」
この言葉は、ほとんどの方に賛同して頂けるかと思います。
しかし一方で「継続」させることの難しさも、感じられていることではないでしょうか。

今回は経営に関して、あるいは儲けに対して「継続」させることで、
長期にわたって儲けを出し続けている会社、そして社長についてお話させて頂きます。

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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の19】
『継続とは』

単に今までと同じことをも繰り返しても、
儲け続けることはできない。

環境の変化に適応しながらも、信念を貫く姿勢が
経営・儲けを「継続」させるためには必要不可欠である。

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お金を貯めるということの「継続」

あるクリニックの先生のお話です。
彼は、私にとっては非常に印象に残っている先生です。

なぜかと言えば、ひとつは私と同い年だということ、そして同じ先生業であるということ。
さらにこれが一番大きいのですが、私にとって初めて新規顧問先になった先生だから、ということです。

同年代なので抱える悩みにお互い共感でき、先生業(と言いましてもクリニックの先生はお医者様ですから全然違う先生ですが)として話を伺っていても非常に参考になる話が多いのです。

少し脱線しましたが、この先生の「継続」についてお話したいのは、一切無駄遣いすることなく、きっちり税金を支払っていることです。
もちろんできる節税はされています。とはいえ個人事業者ですので、生命保険やら小規模企業共済くらいのものです。

一方で患者さんの数は、開業して10年近くになりますが前年比で減少したことがありません。ずっと増収増益で、遠くからも来院される患者さんが多い、すごく評判の良いお医者様です。

ですから結果として税金もかなりの額になりますが、その話を確定申告前にすると、
「持ってけ、泥棒ってなもんですよ、ハハハ」とまるで他人事。
同じ立場になったら、誰しもができることではないでしょう。

その代わりというべきか、そのおかげというべきか、税金を払った残りはきっちり貯まっています。個人事業者の方々には是非、真似をして頂きたいと強く思います。

経営スタンス(経営理念・経営方針)の「継続」

それと共にこの先生の素晴らしいところは、どんな患者さんが来ても対応が同じだというところです。
自分の気があった患者には時間が長くなったり、面倒くさい患者の時にはあからさまに嫌な顔をしたりということがないはずです。

「はず」というのは、実際に病室に入ってその様子を見た訳ではないからです。それでもそう思える理由があります。
別部屋の院長室で月に1回、月次監査をおこなっているので、ナースさんと患者さんの会話や、患者さんの病室に入っている時間などはなんとなくわかります。

「クリニック経営者としての先生」と「患者さんを治療する先生」という両者を、いいバランスでされている先生というのは実は少ないのではないでしょうか。

この先生のところには毎日100人以上の患者さんがいらっしゃっていますが、先生は淡々と仕事をされています。もちろん日がな一日、様々な患者さんとお話されているのですから、さぞお疲れになられると思います。
患者さん自ら自分を診断している患者さんや、薬の効能を細かく聞かれる患者さん、他のお医者さんの噂話をする患者さん、本当に何を話しているかわからない患者さん、などいろいろな患者さんがいらっしゃるそうです。

それでも先生は、聞くべき時は聞く(かといって右から左に流すことも多い)、説明すべきは丁寧に説明する。全ては患者さんが「先生に診てもらってよかった」と思って帰ってもらえるかどうかがポイントになる訳です。

自分は医者だからすごいんだ、なんて言われても患者さんは「そんなことわかってるよ」としか思いません。でも少なからずそういった態度を出しているお医者様もいらっしゃる気がします。

プロとして毎回高いパフォーマンスを発揮する

これは私にとっても一番学ぶべきところなのです。ともすれば資格業ほど
「私は税務のプロだからすごい!」なんていうことを会話の端々に無意識に出しがちです。
でも相手からすればこちらは税理士ですから税務は知っていて当然、むしろそれ以外のプラスαがどこまで出せるかに期待していると思います。

どのような仕事でもプロとして毎回同じように高いパフォーマンスを発揮し続けることは
並大抵のことではないですが、それをし続けられるかどうかが儲けを出し続けられるか否かの分かれ目になりそうです。

外部環境に合わせたPDCAの「継続」

「継続」で難しいことの一つは、「続けること」それ自体です。
そしてもう一つ、大切なのは、単に昨日やっていたことを同じように今日もやり、明日もやる、ということでは《ない》ということです。

常に、昨日やっていたことの結果の確認が欠かせません。思っていたパフォーマンスを発揮していなければ、それを改善すべく考え、プランを練り直し、今日実施してみる。
そして今日実施したことをまた確認し、当初思い描いていたパフォーマンスを発揮できているか、確認する。

うまくいったことは続けることになりますが、時間が経つにつれて周りの環境から少しずつまたズレてくる。

一度うまくいったからといってそれが未来永劫続くなんてことはあり得ない、ということを理解し、環境の変化を敏感に感じ取らなくてはならないところが「継続」の本当の難しさかもしれません。

本業に的を絞った事業の「継続」

そして自分の本業を大事にすることも重要だと思います。
あくまで本業で勝負すべきです。

社長は皆、それぞれの事業を熟知され儲けられたからこそ、これまでその事業に携わってきたはずです。社長にとってはその事業こそ、投資効率が一番高いはずです。
にもかかわらず、本業が傾くと全く関連性のない事業に手を伸ばす社長もいらっしゃいます。絶対に成功しないとは言えませんが、その成功率はあまり高くないと言えるでしょう。

ただ、業界自体が成熟してきた時は試練の時です。成熟してしまうと次は衰退が待っている訳で、そのような業界に留まるのは厳しい。

例えば、富士フイルム株式会社は皆様ご存知でしょう。この会社は20~30年前は、カメラフィルムでコニカ株式会社(現:コニカミノルタ株式会社)や「コダック」(イーストマン・コダック/コダック合同会社)とともに業界トップを走っていました。今ではカメラがデジタル化され、カメラフィルムはほとんど見られなくなりました。

では富士フイルムはどうなったのかといえば、今ではフィルム技術を使って化粧品業界や医療業界に進出しています。言葉にすれば一言で終わりますが、実際にこういう変化を実行に移し、成功するのは極めて難しいことです。

信念を貫きながら、変化を続ける

変化を実行に移すことも必要な一方で、会社は儲け続けなければ、いずれは市場から退出しなければなりません。
経営における「継続」とは、「儲け続ける」ために社長が社長の信念に基づき 、環境変化に応じてその時々に相手が求めるモノ・サービスを提供し続けること、と言えるでしょう。

だからこそ、社長の信念は変えてはならないと思います。
その上で、儲けを出し続けるためには、社長と会社が周りの環境の変化に適応して変化を続ける必要があるのです。