マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

事業承継とは②

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第23号] 事業承継とは②

2018年05月25日 配信
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こんにちは、マエサワ税理士法人理事長の前沢寿博です。
前回、事業承継のうち、事業すなわちビジネス自体の承継の難しさについてお話しました。
今回は同じ題材ではありますが、第二弾としてもうひとつの事業承継、すなわち先代が持っている会社株式の承継についてお話していきたいと思います。
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の23】
『自社株の事業承継』
まずは儲けを出し続けること。これが会社の存続の前提である。
その先に待つ承継においては、時期がきてから慌てて目先の節税に走るのではなく、腰を据えて未来を描くことが成功の鍵となる。

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多くの中小企業では、上場会社と違って社長自らが資金を出資し、会社経営をされています。
従って、会社の株式のほとんどを社長が所有していることになります。

皆様の会社の資本金はいくらですか?

今では新たに設立することが認められていない「有限会社」は最低資本金300万円で設立することができました。有限会社は300万円の資本金というケースが多いようです。

また旧商法時代には最低資本金制度で「株式会社」は資本金1000万円を下ることを許されていなかったので、1000万円の資本金という会社も多いようです。

一方で商慣行上、資本金が大きい方が社会的信用も高いということもあり、たとえば資本金を1億円に設定する会社もございました。

いずれにしても、中小企業では多くの社長がご自身の資金を資本金として会社に入れていました。当然ながら、その株式は出資者たる社長のものです。

会社の株式(自社株)は相続財産となる

普段、社長が自社株のことを気にして経営されることはあまりないかと思います。
ですから事業承継と言っても事業さえ無事に引き継げれば、それで事足りると思われるかもしれません。

しかしながら前述のとおり、自社株も社長個人の財産に違いないのです。
それはつまり社長に万が一のことがあった場合は、株式を相続した人に(事業承継者が相続すればその人に)多額の相続税がかかってしまう可能性もあるということなのです。

自社株は上場株のように売りたいときに売れるような財産ではなく、また事業承継者にとっては経営をしていく限りにおいては売るに売れないものでもあります。

にもかかわらず自社株の評価額が高いと、結果として相続税を納付しなければならない可能性が高くなります。
つまり事業承継者にとって自社株は、安定経営していくためにはなくてはならないものである一方で、換金性に乏しく、相続税の納付のために現金が出ていく可能性がある財産なのです。

儲けが貯まった会社の自社株

社長の皆様にとっては釈迦に説法となりますが、相続税の評価が高い自社株だとすれば、それは歴代の社長が会社経営を上手にされて儲けを会社に貯めてきた結果ですので、それ自体はなんら悪いことではありません。むしろこれまでの経営者が皆、素晴らしい経営をされていたことの裏返しであります。

しかし、過去の経営の結果、儲けが貯まった会社の自社株については、それを生前贈与や相続によって事業承継者に渡そうとすると、儲けの少ない会社の自社株を渡そうとする場合に比べて、贈与税や相続税をより多く納めなければならないのです。

しかも贈与税も相続税も最高税率は55%です。引き継ぐ財産が多額なほど、多くの税金を納付しなければならないのです。
誰しも納税は嫌なものです。何かないかと周りを見渡せば、相続税対策本や節税の広告等も目に入るでしょう。

ただ我々からしてみれば、法律ぎりぎりの節税(場合によってはぎりぎりアウトではないかと思うものも多々ございます)をするくらいであれば、早めから相続対策を考え、少しずつ時間をかけて実行していった方が得策ではないかと思っております。

自社株の承継を支援する税制(事業承継税制)

今までも事業承継税制はあったのですが、実行性に乏しい内容であったため、これをお読みの顧問先様の多くは検討すらされていなかったのではないかと思います。

今年度の税制改正の目玉として、事業承継税制は大きく改善されました。今後10年間で127万社の会社が後継者不足のため廃業を余儀なくされている現状では、国をあげて承継の支援をしなければならないという表れです。

利用にあたり要件が緩和され、いまや多くの中小企業で適用が検討され始めています。
これからその事業承継税制の紹介をさせて頂きますが、はじめに誤解が多い点としまして、

・この税制は自社株の納税が「猶予」されるものであり、基本的には「税金がなくなる」ものではない

という点です。「税金がかからなくなる!」が誇張されるあまり、税金がなくなるのかと誤解される方もいらっしゃいます。

では意味がないのではないか!と言えばそんなこともありません。
この税制を使わない場合は、自社株が承継される度に税金がとられてしまい、会社を続けているだけなのに個人財産がどんどん減っていってしまいます。

その点この税制を使えば、会社を続けている限り自社株の承継時に税金の心配がいらず、安心して儲けを貯めていくことができます。

さて、具体的な内容ですが、ポイントは3つです。

① 自社株の承継に係る税金は「全額猶予」される
② 「事業承継の計画」を作り、都道府県へ提出が必要である
③ この特例は「利用期限」がある

①につきましては、贈与・相続どちらの承継の仕方でも全額猶予となります。
②につきましては、平成30年4月1日以降5年以内に提出が必要です。
③につきましては、平成30年1月1日以降10年以内に承継が必要です。

上記、簡潔に書かせて頂きましたが、実際は我々専門家ですら辟易するくらい細かな法律が多重に絡んでいます。

顧問先様ごとに「ウチは適用できるのか?」「どう進めたらよいのか?」の答えは違ってきます。
ここで細かくは書ききれませんので、まずはこのメルマガをお読み頂き、事業承継について腰を据えて考えるきっかけにして頂ければなによりです。

②と③は一見すると時間がまだまだありそうに思えますが、「承継」は今日思い立って明日できるというものではございません。

是非今のうちから承継の大きな流れを考えて頂き、それを計画というカタチに起こしてみて頂きたいと思います。

まずは期限にかかわらず早めに提出し、それから細部を煮詰めていくのも一つでしょう。マエサワ担当者も様々な目線をもってお手伝いさせて頂きます。

承継を考えるにあたって財産の棚卸も

「ウチはそんなに財産ないから」「赤字だから」という社長様でも、相続税を計算するにあたって、結構な財産金額となってしまうのが今回お話した自社株です。

自社株はいくらになるのか?という株式の評価や、それを含めての相続税シミュレーションを行い、「納税資金が確保できるのか?」を皮切りにこの事業承継税制を検討して頂くのも一つです。

相続税は平成27年に大幅な改正がされ、その後も毎年様々な改正がされています。
過去にシミュレーションをされた社長様でも、今一度見直しされた方がよい場合もございます。このあたりも一度マエサワ担当者にご相談ください。

今回もお付き合い頂きましてありがとうございました。