マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

「人材不足」が解消されれば儲けが増えるか

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第25号] 「人材不足」が解消されれば儲けが増えるか

2018年06月20日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の25】
『一人あたりの生産性が上がる採用となっているか』
その採用が、頭数を増やして楽をしたいから行う採用なのか?
それとも儲けを伸ばすために行う採用なのか?
一人あたりの生産性を上げて儲けに繋げるという視点から考える採用が「必要な採用」である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんにちは、マエサワ税理士法人理事長の前沢寿博です。

顧問先様のところで社長とお話していると多くの会社で人手不足が話題になります。

・目が回る忙しさで従業員さんにも残業を強いてしまっている。なんとか人を採用してこの忙しさを緩和させたい。

・仕事はいくらでもあるのだが、人がいないために仕事を取ってこれない。人さえいればもっと仕事がさばけるのに。

・肝となるポジションに部下を統率できるような優秀な人材がいない。そのような人材を雇用したいが、うちで出せる給与では思っているような人材は集まらない。

もしかしたらこれを読んで頂いている社長のところにも、あてはまるところがあるかもしれません。

かく言うマエサワ税理士法人も新入職員採用ではやはり苦労をしております。ですから人を採用する苦労はよくわかりますし、他人事ではございません。

業界不人気と好景気が生む人材不足

税理士業界で言えば、実は税理士受験生が減少の一途を辿っており、特に20代30代の若い世代の受験離れが顕著です。その原因は、税理士業界に魅力がなくなったということに尽きるかと思います。試験を受けて合格するのに膨大な時間がかかる割には、その見返りが少ないと感じているのです。

それは就職説明会でもはっきり見て取れます。5~6年前であれば、弊社の2~3人の採用枠に対して50人から100人程度の就職希望者が入社試験に集まっていました。それが今では10人来るかどうかといったところです。

この状況はもうしばらくは続きそうだと私は感じております。しかし、やがて不景気になれば多少はこの状況も変わるだろうと考えております。

売り手市場においては、一部の好景気の会社に就職が偏り、中小企業や好景気時に魅力の乏しい会社は見向きもされないことがしばしばです。

逆に不景気になれば会社経営としては良いことがありませんが、唯一人事に関しては、売り手市場から買い手市場に変わるので、良い方向に動くだろうと思っております。

会社数の減少がもたらす採用の風向きの変化

これからは高齢化と人口減で労働人口は減っていくことが予想されています。ただそれ以上に法人数も減っていくことが予想されています。国税庁発表によれば、平成28年度で申告法人(税務署に税務申告書を提出した法人)が266万法人あったそうです。

一方で日本経済新聞の平成29年10月6日号では『大廃業時代の足音 中小「後継未定」127万社』という記事が出ていました。内容は前にも述べましたが、127万社の会社で後継が未定で、さらにそのうち5割の会社が黒字会社である、ということです。

そのことを裏付けるかのように、この2,3年で後継者がいない優良な中小企業の社長が次々に自社をM&Aにより売却しております。マエサワ税理士法人の顧問先でも、M&Aにより自社売却を行った会社が何社もあります。そして巷でもM&Aを専門に行う会社が急激に増加・拡大しておりますし、メガバンクでも融資による利息収入がジリ貧になる中、M&Aによる手数料商売が拡大しております。

これが何を意味するかというところですが、今ある会社の最大で約半数が10年後になくなってしまうということです。日本の人口が半減するのは少なくとも数十年後と言われておりますが、それ以上の速さで会社の数は減少していくと思われます。

結果的に労働人口を受け入れるだけの会社数がなくなる可能性が高いので、ここ10年のうちにおそらくは売り手市場から買い手市場に変化するのではないかと思っております。

人を増やして利益を減らせば本末転倒

とはいえ、会社としても10年後まで悠長に人材を待っているわけにはいかない、というのが本音です。ただ人材難と一言で言ってしまっておりますが、その内容をしっかり見極めないとならない部分があるのもまた事実であります。

大切なのは「人を雇用して一人あたりの生産性が上がるのか、下がるのか」という視点で考えることです。

忙しいという理由で人を雇えば、確かに一人当たりの労働時間は減るかもしれません。言い方は悪いですが、楽ができるでしょう。

しかし、一人あたりの作業的な時間が減るだけで売上が増加しなければ、逆に一人あたりの生産性は減ってしまいます。

逆に人を増やすことで新たな仕事を受注でき、売上が増加し粗利も増加する形であれば、一人あたりの生産性も増加します。そうなれば人を増やした甲斐があるというものです。

やってはならない人材採用とは

一番危険なのは、今までの売上を維持するために安売りを始めて、数量を捌く方向に切り替えざるを得ないと判断した場合です。たくさんの数量を捌くには今まで以上に人が必要になります。

そこで人を増やすことになりますが、結局、売上を維持するために安売りをしているので、商品の粗利益率は以前より下落し、儲けは安売り前と同じか下手をするとそれより少なくなっている可能性すらあります。その上、人件費もかかるようになり、より儲けづらくなってしまっています。

そうなるともはや従業員の給料を上げるなどということはできず、働き続けている従業員には不満がたまっていってしまうという悪循環になります。

もし一人あたりの生産性が下がってしまう人材採用であれば、それはやってはならない人材採用なのではないでしょうか。

「一人あたりの生産性が上がるのか、下がるのか」という視点

では悪循環採用となりそうな会社は何をすべきか?採用と並行して、粗利益をいかに維持向上するかを考える必要があります。

安売りをしなくてはならないお客ではなく、営業をして、商品を高く買ってくれるお客を見つけてくる必要がありますし、それが厳しいようであれば同時に新商品の開発が必要になってきます。

言葉で言うのは簡単です。実際に実行するのは非常に厳しいですし、時間がかかることも理解しているつもりです。それでも採用に関する問題は、この生産性の向上という視点抜きで考えることはできないと思っております。

また、複数商品を販売している場合、あるいは部門がいくつかあるのであれば、製品ごとあるいは部門ごとに粗利益率を算出していき、低い粗利益率の商品なり部門を切り捨てることを検討することも必要かもしれません。

当然、そこに関わっている人が余剰人員となっていれば、場合によっては整理していく必要があるでしょう。同時に、残った従業員のモチベーションの低下等の副作用も当然起きると思いますので、かなりの荒療治になるでしょう。

いろいろ書いてきましたが、新たに人材を採用する場合のひとつの指標として「一人あたりの生産性が上がるのか、下がるのか」という点を注視することが必要ではないかということをお話させて頂きました。

最後に今回は皆様にお知らせがございます。
この度、マエサワ税理士法人主催でセミナーを開催することになりました。

開催日程は9月1日(土)13時からを予定しております。
セミナーでは、今回の事業承継税制の改正に絡んで「事業承継をいかにしていくか」というところに焦点をあてていきます。

詳細はまた追ってご連絡させて頂きますが、ご都合が宜しければ是非とも多くの皆様にお越し頂ければと思っております。どうぞこちらも宜しくお願い致します。