■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第28号] 変化を恐れない者が儲け続ける
2018年08月01日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の28】
『限界利益の追求』
『変化を恐れない者が儲け続ける』
どんな事業にも、それぞれ抱える課題がある。
時代の変化を恐れず挑戦し続けることが、課題の解決、さらには新たな付加価値の創出につながる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんにちは、マエサワ税理士法人理事長の前沢寿博です。
私は現在、月次監査のために毎月20社前後の顧問先を訪問しております。そのうち約半数が地方の顧問先様です。
先週もそのうちの1社に伺いました。そこで改めて「儲け続けることの難しさ」を痛感致しました。
シビアな価格競争
この顧問先様は旅客運送業をされています。その中心は長距離路線バスの運営です。年間で100万人以上のお客様にご乗車頂いているとのこと。
先方の常務は、会社の実質的な経営者です(社長は常務のお父様です)。常務は先の見通しもしっかりされており、かつアイディアマンでもあります。
私は毎月、事業についてのお話を2~3時間ほど、場合によってはそれ以上の時間させていただきます。
先週の訪問時に伺ったお話から、この事業の難しさが見えてきました。
皆様は、例えば東京から大阪に移動するのに、バスを使いますか?私は仕事であれば新幹線、あるいは伊丹まで飛行機移動です。仕事の場合、時間が優先されますから金額が多少高くとも新幹線や飛行機を使います。ではプライベートはどうかといえば、本当に時間と体力に余裕があるときしかバスは利用しません。
バスを使う方の多くは料金に非常に敏感です。今はバス会社同士の価格比較もインターネットで簡単にできます。極端な話1円でも安い方にお客様がどっと押し寄せるのです。
お金にシビアなお客様が多いので、少々のサービスの違いくらいであれば金額が安い方に流れてしまいます。これがこの事業の最も難しいところです。
付加価値が受け入れてもらえない
差別化のために、例えば通常4列シートのバスを改良して3列シートにしてゆったりした座席を用意します。プライベート感を出すためにカーテンをつけたり、さらに席数を少なくしてフルリクライニングができるシートを用意します。
言葉で書けば簡単ですが、実際に何十台のバスにもこれらを搭載していく訳ですから、かなりの資金を投下していく訳です。当然、投下資金を回収すべく料金の値上げを検討します。
しかし多くの「とにかく安い料金で乗りたい」と思うお客様には、これらの付加価値は受け入れられないことも多いのです。上乗せ料金がなければ乗りたいバスになりますが、追加料金がかかるのであれば多くのお客様はそれを受け入れない。
だからといってこれらの改良をしなければ、やはりその場合もお客様は他社に流れてしまいます。非常に厳しい事業です。
更に、公共交通の一翼を担っているからこそ、事故は未然に防がなくてはなりません。しかし最近は巨大台風、大雨、大雪など異常気象と呼ばれる現象も多く、予定通りにバスが発着できないこともあります。
早めに運行中止の決定をしても他社が運行していたりすると「なぜお宅だけ止めたんだ」というクレームが来ます。逆に強行した結果、予定時刻に到着できなければそれはそれでクレームが発生します。もちろん、経営にも影響が与えるので判断は非常に難しいものになります。
削ることのできないコスト
ここ数年、バスによる大きな事故もありました。皆様のご記憶にもあるかと思います。実は事故が発生しているのは「観光バス」ばかりです。この顧問先様が運行している「長距離路線バス」とは別事業なのですが、それでも世の中は「バスは危険」という見方をします。
スキーバス事故があった時には、顧問先様の会社はこの事故と全く関係がないにもかかわらず、長距離バスのお客様は激減。元の状態に戻るのに実に1年を要しました。
この顧問先様では「安全」に対するコストを非常に多く投入しています。乗務員に対するアルコール呼気検査、薬物検査、健康診断等々…。乗務員研修なども徹底的に行っています。これらのコストはどうしても増加傾向にならざるを得ない状況です。
前号でも申し上げた通り、経営者は商製品・サービスの付加価値を上げていかなくてはなりません。
しかし業種業態によっては付加価値を上げたとしても、それを価格にすぐに転嫁できないということも多いのです。
距離路線バス事業の抱える課題
日本の人口はこれから減少の一途をたどり、さらに高齢者の割合が高くなります。その中で、どうやってバスに乗ってもらうお客様を確保していくか、という課題も残っています。
加えて、今まさに実用化されつつある「自動運転」の影響も考えなければなりません。
高度な自動運転が実現、実用化された社会が到来した場合、バスの役割に変化が起きるのではないか?ということも考えなければなりません。
現状に満足しない人が成功し続ける
こうした直近の課題、将来の課題を克服すべく、常務は日々奮闘されています。次々と出てくるアイディアに感嘆せざるをえません。これまでの経験にだけ頼らず、過去のビッグデータを利用してその時々の最適と思われる価格設定方法を編み出したり、バスの在庫(座席)を他社の在庫と一緒に販売したり、アプリを開発したり。真剣に自社の行く末を考えるお話には、やはり迫力があります。
どんな会社であっても儲け続けるというのは、非常に困難なことです。今から30年前のことを思い出してみても、当時なかった、たとえばインターネット関連の事業などは枚挙に暇がありません。また30年前からあった商売でも、その内容は変わってきているのではないでしょうか。
一方で会社のライフサイクル30年仮説ということも言われたりします。これもわからなくもない仮説です。やはり大きな成功体験があるとどんな人でもその体験に引っ張られてしまうものです。大成功をしただけに、それから離れられないのもまた人なのだなと思います。
最後まで成功し続ける方にはとにかく現状満足というものがなく、常に次々と変化していくものだと感じます。言うは易し…でなかなかできることではないと思います。だからこそ儲け続けるということは本当に難しいのだと思います。
マエサワ税理士法人も常に変化を恐れずに、世の中の変化を読み取りつつ、顧問先の皆様に長期的に役立つご提案をし続けられる事務所でありたいと考えております。どうぞ宜しくお願い致します。
最後に、9月1日(土)13時からマエサワ税理士法人の入居している西新宿三井ビルディング2階で行われますセミナーについてお知らせ申し上げます。
セミナーの内容は、平成30年度改正の事業承継税制を利用した事業承継を中心にしたものとなっております。
8月の顧問料請求書にセミナーのお知らせも同封させて頂いております。セミナーの申し込みについてはセミナーのお知らせをFAX頂いても結構ですし、お電話・メールでも構いません。
20名定員となっておりますので、宜しければ早めにお申し込みください。