マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

赤字は皆で 黒字はコツコツ

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第33号] 赤字は皆で 黒字はコツコツ

2018年10月10日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の33】
『黒字の積上げ』
赤字の黒字化、黒字の継続、そのどちらも日々のコツコツとした努力の積上げが必要である。
その努力とはそれぞれが自分なりに考えた自分がしたい努力ではなく、儲けのために黒字のために必要な努力でなければならない。
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こんにちは、マエサワ税理士法人理事長の前沢寿博です。

学生の頃、受験を見据えた自分達に対し「来週の授業までの一週間、その一週間の積み重ねが一年後の合格を決めるんだよ」と講師に言われ、身が引き締まったことを覚えています。人は毎日を一生懸命生きています。それは社長であろうと学生であろうと皆同じです。

もちろん一生懸命の度合いは日々違います。眼の色を変えて頑張る日もあれば、身体をゆっくり休める日もあるでしょう。その一歩一歩の真剣さの(経営においては”儲かるための”)積み重ねが一年後の黒字という姿を決めるのだと感じます。

企業の赤字は皆で作る

「事業が絶好調の時こそ気をつけなさい」という言葉を皆様もお耳にしたことがあるかと思います。絶好調の時こそ気が緩み、それが組織全体に蔓延すると気が付いた時には業績が急落している、気を引き締めよという戒めです。

事業が好調なときは、社長も、社員も、気が緩みがちです。社長は、社員の気の緩みを「常にあるもの」として捉え、適宜対処していくことが必要です。

一方、社長自身の気の緩みは、取り返しのつかない業績悪化を招きます。組織の士気が下がっていても、社長が気を緩めていなければ、それを見た社員は緩んでいた気を引き締めることができるかもしれません。しかし社長が緩んでいるのに社員が自発的に気を引き締めるということはほとんど皆無です。

社長業というのは大変だとつくづく思います。しかし業績が悪化して一番困るのも社長に他ならないのも事実です。すなわち、事業が継続される限り気を緩めることを許されないのが「社長業」なのです。

仮に事業承継を完了させても、様々な事情により現場への復帰を余儀なくされるケースも少なくないことを考えると、社長業というのは「一度就いてしまえば一生の生業」と言えるのではないでしょうか。

赤字という事実そのことが問題である

「赤字は皆で」というのは文字通り、社長も社員も含めて、儲けに対する考え方が黒字の時より緩んでしまった結果、赤字が膨らむことを意味します。

原材料代が上がる、運賃が上がる、燃料代が上がる、採用難、などの外的要因により、儲けることが以前より困難になることもあります。しかし外的要因があるから赤字でもいいということにはなりません。赤字が続き金融機関が融資をストップすれば、いずれ会社は市場から退場を余儀なくされます。

外的環境の変化は、止めることができません。変化する環境に対応し続けることが企業経営の要諦です。しかしこれは本当に困難なことです。そういう意味では「赤字の原因はすべて社長と社員の気の緩み」とするのは少し酷な言い方かもしれません。

ただ申し上げたかったのは、経済社会ではあくまで「赤字か黒字か」が問題であるということです。赤字の原因が組織の外部にあるのか内部にあるのかは基本的にはまったく問われません。社長や社員の気が緩んだ結果赤字になったとしても、外的要因で赤字になったとしても、赤字は赤字でしかないのです。「早急に黒字に戻さなければならない」ということだけが厳然とした事実です。

一度陥った赤字体質は、本当に厄介な問題です。その浸食のスピードは非常に早く、赤字幅は瞬く間に拡大していきます。破綻まで黒字転換させられないケースも多く見聞きします。赤字が続けば続くほど、黒字化は至難の業になるのです。

なぜかといえば、赤字になれば赤字分だけ資金が間違いなく減っていく上に借入をしている場合にはその元本返済もしなければならず、二重に資金繰りで苦しむことになるからです。

赤字に転落すれば、金融機関から融資を受けられたとしても金利は以前より上乗せされてしまうでしょうし、さらなる元利金返済増加にもつながります。もちろんリスケすることで1回あたりの返済額を減額することができる可能性もありますが、元本自体が減る訳ではありませんので資金繰りが厳しいことに変わりはありません。 ここから抜け出すには黒字化しかありません。

黒字は日々の積み重ね

黒字化のためにどこから手をつけるか、一例を挙げます。

まず得意先ごと、商品ごと、部門ごとに売上金額と粗利益、粗利益率を並べて、粗利益率が低い得意先、商品、部門を洗い出します。売上金額が大きい場合には資金繰りに与える影響も大きいので資金繰りも考えつつ、ただ中長期的には必ず粗利益率の低い得意先・商品・部門をなくしていく方向で考えていきます。
いわゆるダウンサイジングではありますが、まずは出血を止めるのが先決です。そして確実に黒字を出せるようにしていくのです。

赤字も借入返済もいっぺんに良くしたいという気持ちは理解できますが、現実に赤字の会社が突然、借入返済もできるほど黒字幅を大きくしようとするのは非現実的です。
まずは上記作業だけでも実際に実行するとかなり良化できる場合があります。黒字化は、コツコツ積み上げていくしかありません。

ただここで黒字化できたとしても黒字幅を大きくしていくのはこれまた至難の業です。そもそも現状の商製品・サービスが世の中に対して必要とされているモノなのか、つまり値引きせずともこちらの売りたい価格で売れるモノなのか、考えなくてはなりません。

もしそうでなければより付加価値のある商製品・サービスの開発が急務です。 言葉で言えば非常に簡単ですが、こんなに難しいことはありません。

でもこれを常にやっていないと、それこそ悪い外的要因が発生した時に中小企業はひとたまりもありません。また黒字の時であれば多少の失敗も挽回の機会がありますが、赤字の状況では失敗が許されません。それが背水の陣となり起死回生の良い方向に転がることもありますが、結果が出なければそれで市場から退場ということになるでしょう。

日々のコツコツ商品開発

一方、黒字を継続するのも昨日黒字だった方法を今日も行うくらいであれば、黒字は継続できるでしょうが、それを5年10年続けていったらいずれは同業他社に真似をされ、より良い商製品・サービスがでてきて淘汰されてしまいます。

社長が中心となって、商製品・サービス開発を日々怠らない、ということが重要になってきます。決して成功が保証されているわけではありませんが、商品開発を続ける。そこを疎かにした瞬間から、企業は衰退の一途を辿ります。

60代70代になった創業社長あるいは会長となられた方でも商品開発をされています。たとえばチェーン店の飲食業であれば毎週のように新商品のテストがある訳ですが、それにも最前線で参加されています。そのほかの業種の社長会長でもとにかく商品開発の最前線で開発をし続けていらっしゃいます。

つまりは商品開発というのはそれくらい会社にとって重要なことなのです。私から見れば大成功を収められた方でも現役の最前線で開発しています。商品開発こそが会社が生きる、黒字を継続するための根幹なのだと感じます。 これらを継続されることでしか黒字化の継続はないとすると、まさに今回の標題の「黒字はコツコツ」ということになるのです。

軌道修正も忘れずに

千三つのような商売であれば当たった時には想像を超える利益を上げることがあります。ただ儲けの多寡はともかく継続的に黒字を出し続ける会社の社長に私は凄みを感じます。そういった社長には油断というものがなく、先々起きそうなこと、あるいは起きると厄介なことを想定し、5年後10年後に自分の会社をどこへ持っていくか考え、そのために今何をすべきかよくよく考えられています。今日の自分、今日の会社を見返し、このまま進んだらどのような未来になるのかを想像することが大事です。経営であれば数値がそれを物語ってくれます。

いずれにしても赤字の会社を黒字化していくこと、黒字化している会社であれば黒字を継続していくことのお手伝いをマエサワ税理士法人ではやっていきたいと思います。是非とも宜しくお願い致します。