マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

やり抜く力を持つこと~グリット力~

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第36号] やり抜く力を持つこと~グリット力~

2018年11月21日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の36】

『経営者の持つべきグリット力』

儲けを出し続けることは経営者に課せられた使命である。
儲けを出すという結果はもちろん大事だ。
しかしそのためにはトップをはじめ、会社として儲かる方向へ姿勢を正し、
儲かるための業務を日々”やり抜く”という過程の積み重ねが重要である。

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「一度決めた物事をやり遂げる」と聞けば当たり前だと思うものの、それを継続してやり遂げることは簡単ではありません。しかし社長であれば常にそういった「やり遂げるべきこと」をいくつか抱えており、その完遂を目指されていることと思います。
少し前の話になりますが、会計事務所のトップ・幹部が一同に集まる会がありまして、私も会長の前沢と参加してまいりました。全国から15社前後の会計事務所が集まり、参加した事務所は100人以上の職員を擁する事務所ばかりです。マエサワ税理士法人は職員の数では一番小さい事務所でした。

その会議は年に2回定期的に開催されています。どのように今後の事務所経営をしていけば、顧問先に価値ある提案をし続けていくことができるか、結果として事務所が儲けていくことができるかについて各事務所で発表していき、それに対して意見や質問をしていく形式で進行します。

今回の会議の題目は「どのように労働生産性を上げていくか」というものでした。ご紹介させて頂くのはその会議で伺った岐阜にある会計事務所の先生のお話です。

トップが変われば空気が変わる

その会計事務所は、1年前に代替わりがあり、発表された先生は理事長から会長になられたところでした。話されたのは生命保険についてです。

会計事務所の収入は顧問先の社長から頂戴する顧問報酬が一番の割合を占めます。しかし決して大きな割合ではないものの、生命保険の代理店手数料収入というものもございます。生命保険は社長の万が一の際に金銭面で備える、あるいは節税対策として利用する、など企業防衛に有効な手段となりうるものです。顧問先企業を守るという観点から生命保険を取り扱う会計事務所は少なくありません。

その会計事務所の生命保険取扱金額はこれまで毎年10億円以上あったようです。しかし先生が会長に就任してわずか一年足らずの間に、その事務所の取扱金額がほとんどゼロにまで落ち込んだそうです。

その実績を見て、会長は大激怒です。

その会計事務所では特に企業防衛に力を入れていたので、生命保険の取り扱い実績がゼロに近いことに会長は憤りに近いものを感じたのでしょう。どうして顧問先の企業防衛として必要な生命保険の実績が突然、ゼロに近い数字に落ちるのか。

そこからの会長の動きは素早く、まずは提携している生命保険会社の担当を呼び、「これから2か月で10億円の実績を作っていくから、必要な商品知識や顧問先に必要と思われる情報を職員たちに教えてください。そして一週間ごとに進捗具合を職員たちに発表してください。」ということで一大キャンペーンを事務所で打ったのです。事務所の収益のための行動ではありません。結果としての収益という側面はあるかもしれませんが、会長が激怒したのは企業防衛を軽視する=顧問先を蔑ろにする、事務所の空気に対してでした。

トップの姿勢は会社の姿勢である

そして2か月のキャンペーンで10億円を超える生命保険契約の成約ができたそうです。そのときに岐阜の先生がお話されたのが、「トップがやり抜く力、グリット力をもつこと」が重要だということでした。

職員はトップの動きをよく見ていて、トップが手を抜けば手を抜いた部分は職員も自然と手を抜くことにつながる。もちろん職員は意識的に手を抜くということはありませんが、それでも時が過ぎていく中でトップがやらなくなったことは、職員が元々やっていたこともやらなくなってしまう。

会長に代わって理事長になった若先生は慣れない理事長職を全うしていく中で、企業防衛に係る生命保険を軽視されていたのかもしれません。私も岐阜の会計事務所の現理事長と同じく新米理事長で、まだまだおぼつかない歩みではあります。自分の毎日に見落としている部分があるのではないかと襟を正すお話でした。

トップのやり抜く力が結果を生む

我々は顧問先には常に儲けのための必要な提案をしていかなければなりませんし、常に全力で対処していかなければなりません。私自身決して器用ではありませんが、そこは愚直に守っていくところだと思っております。器用な人は手を抜いても相手に悟られないかもしれません。しかし自分よりもあらゆる意味で上をいかれる方は、人の持つ人間力のようなものを瞬時に見抜く力があるのだと感じます。体裁よく取り繕ったつもりでも見透かされているのです。結局はあらゆる仕事から逃げずにやり抜くこと、これに尽きるなと。トップには「逃げる」という選択肢はありません。覚悟をもってやっていくしかないのです。

そうして実際にトップが業務をやり抜くところを従業員が見ていくことで、皆がそれを真似てやっていく、あるいはトップについていくものだと思います。もちろん言葉で諭していくことも重要だと思いますが、それ以上に仕事に対する姿勢をトップ自らがやってみせ、そこに皆をついてこさせるということがより重要です。

今回は、やり抜く力~グリット力~という題名をつけております。「グリット力」という言葉は岐阜の先生がおっしゃった言葉です。非常に印象に残る言葉でした。
グリットとは「努力・根性・忍耐・情熱」という意味になります。今の日本では昔に比べて天賦の才や優れた容姿、富を持った人が称賛され、努力や忍耐は軽んじられる傾向にあります。しかし当然ですが、唯一の素晴らしい才能が誰にでもある訳でもありません。

そして結果というものは重要です。しかし結果に至る過程というのも同じように重要なのです。あふれる才能で結果を得られることもありますが、それだけで一生やっていけている人を私はほとんど知りません。それどころか若いうちに成功を収めるとそれが持続しないことの方が多いかもしれません。

会社経営を考えれば、儲けを持続させること、そのこと自体が社長に課せられた「グリット力」になるのかもしれません。

この原稿執筆中はずっと自問自答しておりました。今回は皆様へのメッセージというよりも自分への戒めとして書いていたように思います。もしご参考になれば本当に幸いでございます。

本号もお読み頂きましてありがとうございました。