マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

金の出る節税ではなく、金の出ない節税を!

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前沢寿博の「企業経営の王道」

[第38号] 金の出る節税ではなく、金の出ない節税を!

2018年12月19日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の38】

『金の出る節税ではなく、金の出ない節税を!』

損益計算書に目を向けない社長はいない。
だが貸借対照表とじっくり向き合える社長は数少ない。

節税という名の下に、売上や儲け、生産性の向上に繋がらない支出を繰り返していてはいつまでたっても銭は貯まらないだろう。

貸借対照表には金の掛からない節税材料が沢山眠っている。
改めて会社の実態と向き合い、節税の先にある財務体質の強化を実現してほしい。
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2018年も早いものでもう12月を迎えました。2019年は平成最後の年であるとともに5月2日より新年号に変わります。そんな変わり目の年の間近だからでしょうか。2018年もめまぐるしく経営環境が変わった1年となりました。

改めて最近の企業業績を見ていますと、以前にも増して二極化が進んでいることを感じます。業績の良い会社とそうでない会社がはっきり分かれてしまっています。

儲けの出ている会社に伺うと毎回のように出てくる話題は節税対策や事業承継対策、相続対策についてです。今回はそのうちの節税対策について書いていこうと思います。

損益計算書による節税は銭が貯まらない

今回の標題、「金の出る節税ではなく、金の出ない節税を!」は「損益計算書(P/L)による節税でなく、貸借対照表(B/S)による節税を!」と言い換えることもできます。

多くの社長が考えられるのは「金の出る節税」です。最も単純なのは「このままでは税金が多くなるから」という理由で行う交際費の支出でしょうか。資金の支出を伴う経費計上、これを「損益計算書による節税」と言っています。

高級車を中古で購入する、というのも基本的にはこの「損益計算書による節税」に該当します。この他にも役員退職金見合いの生命保険に入ったり、従業員厚生のための医療保険に入ったりすることでも一定の節税効果は得られます。

「金の出る節税=損益計算書による節税」は資金流出を伴うものです。
内容の良し悪しを説くつもりなどございませんが、節税のための支出の繰り返しは得てして銭が貯まらない体質になりがちです。税金を払いたくない一心であれこれ支出をし、蓋を開ければお金がない、本末転倒ではありませんか?

節税効果の高い貸借対照表(B/S)へのメス

次に「金の出ない節税=貸借対照表による節税」です。
これは貸借対照表上、固定資産に不動産(土地、建物)あるいは上場株式やゴルフ会員権が計上されており、儲けが出ている会社で実行可能な節税となります。

たとえばバブル期に購入した不動産や上場株式、ゴルフ会員権は現在の取引価格からすれば相当高い金額で購入されていることがほとんどだと思います。これらの資産は「含み損」を抱えているわけです。

この損失を実際に売却することで掃き出し、本業で出ている儲けと相殺させて節税するのがいわゆる「貸借対照表による節税」です。

実際にバブル期に買った不動産の価格が現在、10分の1にまで落ちてしまっていることは残念ながらよくある話ですが、その土地が貸借対照表に買った当初の金額で計上されていることも少なくありません。

本当はその金額ほどの価値がないにもかかわらず、元の金額そのままで貸借対照表上に計上されているのです。これらの資産を売却することでその含み損を本当の損として出してあげれば、本業の儲けと相殺することで節税することができます。さらに今の時価に引き直したところでの本当の貸借対照表の数字を出すことができます。また実際に売却することになるので、幾ばくかの資金回収も図れます。

上場株式についても30年前、バブル期に購入したものですと今の価格は低いものがほとんどだと思います。しかしこの10年で考えれば今は比較的堅調な相場になっています。資金回収と共に含み損を吐き出すことができるので、これもひとつの方法かと思います。オリンピック開催後は日本経済が下降すると言われていることを考えれば、一考の余地はあるかと思います。

ゴルフ会員権は今後どうあっても購入時の価格まで戻るのは難しいと考えるのが一般的だと思います。多くの場合資金回収は期待できませんが、含み損を吐き出すことはできます。

貸借対照表による節税で会社を骨太に

このように「金の出ない節税=貸借対照表による節税」は資金の流出を伴いません。
含み損を吐き出すことで本当の節税が実行でき、貸借対照表の数値が本来の会社の実力を表すことになり、結果として自己資本比率が上昇してきます。

自己資本比率が上昇すれば、金融機関から融資のお願いに来てもらえます。もちろん借入金利は低くなります。まずは自己資本比率30%を超えることが一つの目標になってくるでしょう。

これらの資産を売却するといっても、本社ビルやその敷地などを他人に売却するわけにはいかない、ということもあろうかと思います。その場合はもうひとつ自分の会社を作り、その会社に売却するのも一つの方法です。そうすればグループ会社に売却し、その会社から賃貸する形になるだけです。

ゴルフ会員権などは思い入れもあり売却はちょっと、という場合もあります。そうであるならばいったん売却してまた買い戻してもいい訳です。考え方を少し変えれば劇的に節税ができ、貸借対照表の数字を改善できるケースもあるのです。

実際に含み損を抱える資産を処分するする際にはグループ法人税制など、税務的にも注意を要する点がございます。この辺りはマエサワ税理士法人各担当者へお尋ねください。

「金の出ない節税=貸借対照表による節税」は節税はもちろんですが、財務体質が強化されるところに大きなメリットがございます。これからの厳しい日本経済に対応するための準備ができるという面で「金の出る節税=損益計算書による節税」より効果が高いと言えます。

「貸借対照表による節税」は実行までに、シミュレーションによる検証や、新会社設立などの事務的な準備など、時間がかかることもございます。また、グループ間での資産のやり取りは税務的にも注意を要します。ご興味がございましたらまずはマエサワ税理士担当者とお話しされてみてはいかがでしょうか。

今回も長文になってしまったにもかかわらず、最後までお読み頂きましてありがとうございました。