マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

「働き方改革」に感じること

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第39号] 「働き方改革」に感じること

2019年1月2日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の39】

『儲けるための “働き方改革”』

誰がための働き方改革か?
楽をしたい人間のためのものであって良いはずがない。
当然に企業が存続するため、儲け続けるための改革でなければならない。

「人口減少」はこの先、各々の企業に変革の決断を強いることだろう。
だが一歩立ち止まってほしい。
効率を求め、自社のレベルを下げ、衰退に拍車をかけるような施策となってはいないだろうか?
企業においては生産性を上げる改善以外は許されないのだということを、今一度肝に銘じて頂きたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

新年あけましておめでとうございます。
本年も昨年と変わらず宜しくお願い致します。

メールマガジンも気づけば本号で39号となりました。長文、駄文にもかかわらず皆様にお読み頂き、様々なご感想、叱咤激励をお受けできるのが励みとなっております。このメールマガジンは「少しでも会社経営の一助となれば」という思いで書かせて頂いております。今後もその信念を変えることなく続けてまいりますので、お付き合い頂ければ幸甚でございます。

さていよいよオリンピックイヤーの前年となりました。東京、大阪に限らずどこにいっても外国人観光客で賑わっております。私も地方出張で新幹線や飛行機に乗る機会が多いのですが、とにかく移動する先々でわんさと押し寄せる外国人観光客を見かけます。そのおかげもあり「景気は悪くない」とマスコミなどが言っております。

ただ、様々な会社へお邪魔していて感じるのは、マスコミや政府が言うほどには景気が良くないということです。どこの顧問先へお邪魔しても、「人が足りないので取りたいが全く取れない」「取れたとしても今の売上を維持するので精いっぱい」「運賃、燃料代がかさんで原価が上がってしまう」という話を多く伺います。

人口減少が招く国力低下

政府の号令で「働き方改革」がいよいよ始まります。そもそも「働き方改革」とはなんぞや、という話ですが、50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現のために働き方を見直そうという動きのことを言うのだそうです。

なぜそんなスローガンが掲げられるようになったのか、これは労働人口(15歳から64歳)が当初想定していた以上に減少しているからです。日本の総人口は100年後には5000万人を切る予測になっています。

さらに現在7000万人いる労働人口が、30年後には5000万人を切る予測になっております。これを放置しておいては日本の国力低下が避けられないということから「働き方改革」が実施される訳です。

労働者不足をどのように補うか、については
① 働き手を増やす(労働市場に参加していない女性、高齢者など)
② 出生率を上げて将来の働き手を増やす
③ 労働生産性を上げる
といったことが挙げられています。

今回は、③労働生産性を上げる ということについて考えたいと思います。

国力が下がる国で儲け続けるには?

日本の一人当たり労働生産性は2017年においてOECD加盟35か国中21位で主要7か国中最下位です。マスコミや政府は、その原因は日本人の長時間労働にあると言っています。私も確かに無駄な残業というのは存在すると感じます。上司が帰らないと部下は帰れない雰囲気も、正直あると思います。

しかし、日本の一人当たり労働生産性が世界に比べて低い要因は長時間労働だけにあるのでしょうか?たしかに労働生産性(総付加価値÷労働時間)を上げるためには、政府の言うように分母の労働時間を削減することも考えられます。

しかしこれはいかに今の仕事を効率的に行うかに主眼が置かれています。これを実行したからといって分子の総付加価値は決して増加しません。残念ながら問題の根本的な解決にはならないのです。

いつの世も付加価値が高い業種は強い

ところで平成30年度の税収予測は59.1兆円でバブル期の平成3年度の59.8兆円以来27年ぶりの高水準だそうです。このうち法人税収は21.5%だそうですので(財務省HPより)、金額に直すと約12.7兆円です。

ちなみにトヨタ自動車1社で平成30年3月期経常利益は2.6兆円なので、これに法人税率30%を乗じると、0.8兆円です。なんとトヨタ自動車で全法人税収の6%を稼ぎ出しているというのが現実でもあります。

つまり稼いでいる数少ない会社が非常に大きく稼いでおり、多くの中小企業では苦しい経営が続いている、というのが今の日本経済なのだと感じます。

ではなぜトヨタ自動車がこれだけ稼げているのか。仕組みを考えれば当然です。単純に言ってしまえば、海外から鉄鉱石を1億円で買ってきて、10億の価値のある鉄を作る。その鉄を加工して自動車を生産して100億円で売るというのがトヨタの仕組みです。実に1億が100億になる訳ですから、それは儲かって当然です。

一方で飲み物を提供するお店があるとして、コーラを100円で仕入れてもせいぜい300円くらいでしか売れないのではないでしょうか。元手はかからない代わりに儲けは少ない。

申し上げたいのは製造業が強い国がやはり経済では強いということです。「だからサービス業はだめだ」というつもりは全くありません。私自身も半分サービス業(半分は法律業でありますが)に従事する身です。自分の仕事がだめだなどと考えたことはありません。

ただ冷静に現実を見れば、国が経済的に繁栄していくためには強い製造業が必要なのではないかと感じます。過去、日本が経済大国になれたのはやはり製造業が大きく牽引していたという事実があります。そして日本の製造業が世界有数だったのは、製品の付加価値が高かったからにほかなりません。

成長を続ける隣国、競争に勝つ国に共通することとは?

中国などはこの20年間でみれば何%の成長というレベルでなく、10倍、20倍と成長している訳です。GDP(国内総生産)では2010年には日本に追いつき、今では日本の倍以上になっているくらいの成長を続けています。

私は今45歳ですが、20代の頃、電化製品で韓国製、中国製、台湾製と聞くと安かろう悪かろうというイメージがありました。私と同年代以上の方であればSHARPの亀山製のテレビ、SONYの電化製品がよかった、と思っていた方は少なくないかと思います。

今では韓国のサムスン製テレビでも台湾のエイスースのパソコンでも抵抗なく購入します。安くはあっても良い製品だからです。今の20代の方であれば日本製にこだわる理由が最早わからないのではないでしょうか。

バブル経済が崩壊して20年以上経過しますが、その間の日本経済はずっと横ばいです。正確に言えばほんの少し右肩上がりです。日本も地道に成長しているからいいのだ、という考えももちろんあるでしょう。

しかし経済戦争という言葉があるように、資本主義とは世界と日本との経済の競争です。競争で勝っていかなくては日本という国ではなかなか今までのような生活を維持できないのだろうと感じます。

生産性を上げるには、寝ても覚めても商品開発!

やはり品質の向上なくして、製品を高く売ることはできません。同じ品質であれば安い方が売れるに決まっています。そうなれば価格競争に巻き込まれ、最終的には体力勝負になってしまいます。

ですからこれからの厳しい経済環境を生き残っていくには、まず自社の製品・商品・サービスの付加価値を高めること、すなわち「製品・商品・サービスの開発」を実行し続ける必要があるのです。

自社の商品開発は一朝一夕に出来ることではありません。しかしひとつ確かなことは「商品開発に知恵を出し始めない限り、その実現はありえない」ということです。労働生産性を高めるために最も効果が高いのは、自社商品の品質向上です。

2019年を、皆様の製品・商品・サービスにさらに磨きをかける一年として頂ければと思います。マエサワ税理士法人もいかにして顧問先社長の経営に役立つ提案をしていけるかが勝負です。2019年も会社の儲けに焦点をあてた提案をさせて頂きますので、どうぞ宜しくお願い致します。