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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第42号] 特例事業承継税制を見て考えなければならないこと
2019年2月13日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の42】
『事業承継とは「どう儲けるか?」を先へ繋ぐことである』
たとえ家族といえども、先代と跡継ぎは全く別の人間であり、思考も感じ方も一つ一つが異なるものだ。それでも一つの事業を先導する者として、会社の方向性を定め、どう儲けを生み出し、その先に繋いでいくのかという道程はブレてはならない。
いずれは先代はいなくなり、跡継ぎが事業を発展させていくこととなる。限りある時間よくよく話し合い、これまでの会社と社長の歴史を、その思いを共有し、時が経ち「良かった」と息を付ける事業承継にしていこうではないか。
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平成30年度税制改正で従来の事業承継税制とは別に特例事業承継税制が創設されました。この特例事業承継税制は従来の事業承継税制よりも使い勝手が非常に良くなりました。具体的には納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等が変わりました。
今年度の改正ではさらに個人事業者の持つ事業用資産にもスポットが当たるなど、ますます国の本気度が高まっております。
「儲かる会社を残しましょう」が制度の根幹です
以前にもお話させて頂きましたが、過去に儲けてきた会社ほど、自社株の評価額は高くなっています。自社株は当事者以外にとっては価値がないので流通性はありません。にもかかわらず事業を承継するために自社株を贈与したり相続する場合には、莫大な贈与税あるいは相続税が発生してしまいます。
一方で国にとっては、自社株の贈与や相続に際して贈与税や相続税を徴収することは税収確保の観点から軽視できません。
しかし、納税負担が大きすぎるために、儲けが出ている会社の事業承継ができずに会社が消滅してしまったのでは国にとっても本末転倒の話となってしまう訳です。存続していれば儲けが出ることで法人税の税収が長きにわたり期待できる訳ですから。
平成29年10月6日の日本経済新聞の1面に掲載されていました『大廃業時代の足音 中小「後継未定」127万社』という記事をご記憶されている方も多いかと思います。この記事を読んでいくと127万社のうち約半数が黒字の会社だそうです。現在の法人の黒字割合は3割程度ですから、黒字会社ほど会社をたたんでいく可能性が高いということです。
国としては、このような将来の経済情勢を放置しては国力が低下してしまうので、黒字会社の存続を図ることで経済力低下に歯止めをかけようと、新たに特例事業承継税制が創設されたのです。
この特例事業承継税制が創設されるやいなや、我々税理士業界でも非常に良い事業承継税制ができた、ということで多くのセミナーが開催されました。様々な本も出版されております。昨年には弊社でも事業承継セミナーを開催させて頂きました。
しかしこういったセミナーにしても本にしても、「特例事業承継税制」の制度説明だったり、書面の書き方だったり、手続きに関することが話の中心になっています。
事業承継で本当に大切なこととは
そもそも事業承継自体は現社長が次期社長へ事業を引き継ぐために行うものです。現社長が次期社長に事業を引き継いで完全に引退される場合もあれば、会長となられて新しい社長と共に事業を続けていかれる場合もございます。
つまり社長が会長になられて10年20年の後に相続が発生することもあり得るのです。このような場合は、10年20年後に起きるであろう相続を予想して今、特例事業承継税制を利用するか否かを決めなければなりません。
10年、20年後のことなど誰にもわかりません。例えば、今、30歳のご子息がいれば20年後は50歳。20年後のことを今、現社長とごく少人数の方で決めるのです。しかし実際に社長がお亡くなりになるのが20年後とすれば、そのとき50歳になられているご子息は20年前に決まったことをしっかり把握できているでしょうか。
いやいや30歳のときに話は聞いていたわけだし、理解しているはずだ、と思われるかもしれません。しかしまだまだ仕事に携わって数年で現社長と同じだけのご苦労をされている訳でもない30歳のご子息にとっては、20年後のことなどまだまだ他人事のように聞こえているかもしれません。
事業承継には①自社株の承継と②事業(ビジネス)の承継の2つがある、という話をいつもしております。この②事業の承継には非常に重要なことが含まれており、それは何かといえば、先代社長方が今日に至るまでどのように事業を承継してきたか、そういったことを次期社長は理解しなければならない、ということです。会社の歴史そのものです。
思いを次世代に繋いでいくこと、これが実は事業承継の核となる部分であろうと思います。
これを単純に、「特例事業承継税制」を使えば、実質的に贈与税や相続税がかからずに自社株の事業承継ができるから手続としてやっておこう、我々も手続的な面だけを考え、書類を作成して申請しておしまい、などと考えてしまうのはかなり乱暴だと思います。
確かに20年後、30年後のことは誰にもわかりません。しかしそうであっても、20年後、30年後に会社としてどうなっていて欲しいのか、方向性はどうか、その時に会社が利益を出して行くためには誰がいいのか、という観点で現社長は考えを巡らしていくしかないのだと思います。
ですから特例事業承継税制が創設されようとされていまいと、事業承継について本質的に考えていくべきことというのは変わらないのではないでしょうか。ただし、事業承継のうち①自社株の承継については特例事業承継税制を大いに使っていくべきだと考えます。
やはり自社株の承継にあたり、実質納税が免除されるというのは大きいです。ただだからといって将来の事業を考えずに自社株の承継だけを考えていては、事業を上手に引き継いでいくことは難しいのではないでしょうか。
マエサワと一緒に事業承継会議をやりませんか?
マエサワ税理士法人としてもまずは事業をどうしていきたいか、社長の思いも含めて次期社長と一緒に共有させて頂き、その上で自社株の承継について特例事業承継税制を適用させていくのか、違う方法がいいのか、といった会議を当事者皆様がご納得いくまで行っていくのが王道だと考えております。すでに弊社においても、こうした「事業承継会議」を数年にわたり開催されている顧問先様が多くございます。
今後事業承継に悩まれる顧問先様はますます増えてくることと思います。それぞれの会社・ご家族に合った承継のお手伝いが出来れば幸甚です。
特例事業承継税制の適用を受けるためには、平成35年3月31日までに都道府県庁に「特例承継計画」を提出し、確認を受ける必要があります。
あまり悠長に構えていますと、せっかくの使える制度も時間切れとなってしまうかもしれませんのでご注意ください。
より詳細につきましては弊社担当者にご相談ください。今回もお付き合い頂きましてありがとうございました。
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成30年度税制改正で従来の事業承継税制とは別に特例事業承継税制が創設されました。具体的には納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等が変わりました。
今年度の改正ではさらに個人事業者の持つ事業用資産にもスポットが当たるなど、ますます国の本気度が高まっております。
「儲かる会社を残しましょう」が制度の根幹です
過去に儲けてきた会社ほど、自社株の評価額は高くなっています。自社株は当事者以外にとっては価値がないので流通性はありません。にもかかわらず事業を承継するために自社株を贈与したり相続する場合には、莫大な贈与税あるいは相続税が発生してしまいます。
一方で国にとっては、自社株の贈与や相続に際して贈与税や相続税を徴収することは税収確保の観点から軽視できません。しかし、存続していれば法人税の税収が長きにわたり期待できるところを、納税負担が大きすぎるために、儲けが出ている会社の事業承継ができず会社が消滅してしまったのでは本末転倒です。
国としては、このような将来の経済情勢を放置しては国力が低下してしまうため、黒字会社の存続を図ることで経済力低下に歯止めをかけようと、新たに特例事業承継税制が創設されたのです。
事業承継で本当に大切なこととは
事業承継には①自社株の承継と②事業(ビジネス)の承継の2つがある、という話をいつもしております。この②事業の承継には非常に重要なことが含まれており、それは何かといえば、先代社長方が今日に至るまでどのように事業を承継してきたか、そういったことを次期社長は理解しなければならない、ということです。会社の歴史そのものです。思いを次世代に繋いでいくこと、これが実は事業承継の核となる部分であろうと思います。
これを単純に、「特例事業承継税制」を使えば、実質的に贈与税や相続税がかからずに自社株の事業承継ができるから手続としてやっておこう、我々も手続的な面だけを考え、書類を作成して申請しておしまい、などと考えてしまうのはかなり乱暴だと思います。
確かに20年後、30年後のことは誰にもわかりません。しかしそうであっても、20年後、30年後に会社としてどうなっていて欲しいのか、方向性はどうか、その時に会社が利益を出して行くためには誰がいいのか、という観点で現社長は考えを巡らしていくしかないのだと思います。
その上で、事業承継のうち①自社株の承継については特例事業承継税制を大いに使っていくべきだと考えます。やはり自社株の承継にあたり、実質納税が免除されるというのは大きいですから。
マエサワと一緒に事業承継会議をやりませんか?
マエサワ税理士法人としてもまずは事業をどうしていきたいか、社長の思いも含めて次期社長と一緒に共有させて頂き、その上で自社株の承継について特例事業承継税制を適用させていくのか、違う方法がいいのか、といった会議を当事者皆様がご納得いくまで行っていくのが王道だと考えております。
すでに弊社においても、こうした「事業承継会議」を数年にわたり開催されている顧問先様が多くございます。
それぞれの会社・ご家族に合った承継のお手伝いが出来れば幸甚です。