マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

会社の体力がある今、新商品開発を!

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第44号] 会社の体力がある今、新商品開発を! 

2019年3月13日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の44】

『10年20年闘える武器を持つ』

今が良くとも景気後退の局面は遠からず訪れる。
そうなったとき業績が落ち込んだことを外部環境のせいにしても詮が無い。
会社経営においては、自分達の身は自分達で守るしかないからだ。

将来も安定して儲けを出すことを念頭に置いたとき、求められるのは「儲かる商品の開発」である。
意識して「相手の役に立つ商品」「将来も儲かる商品」の開発を実践し続けることが、将来の儲けのために絶対に必要だ。

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前回とは違う顧問先様でのお話ですが、引き続き経営会議のお話をさせて頂きたいと思います。

会議の議題「全社視点での話」

今回の顧問先様での経営会議は通常、社長、常務、取締役に加え、3名の幹部とマエサワ税理士法人3名の計9名で行います。社長、常務、取締役の3名は親族であり、幹部3名は現場責任者の方々です。

こちらの顧問先様には2日間お邪魔します。初日に前月分の月次監査を行い、数字をまとめます。部門別管理を細かくされている会社ですので、間接費の配賦などもチェックし、部門別業績まで出していきます。その結果を翌日の経営会議資料に落とし込み、翌日午前中いっぱいを使って会議を行っています。

今回はたまたま2名の幹部の方が営業と新商品開発を兼ね出張されていたので、7人で会議を行うことになりました。会議を始める前に「今日は幹部2名が欠席で、残った幹部の一人は会社の数字を取り纏めている者です。普段より経営的な視点で会議を進めてください。」という話を社長から頂いていました。

この顧問先様では全ての数字を社員に開示しています。普段の経営会議では部門別に担当幹部の方が業績の報告や改善点の洗い出し、その後の状況などをお話されており、我々も部門ごとのお話を聞きながら、前月からの進捗状況の確認などをし、部門別の業績にどのように反映されているか、あるいは今後どのように反映されるかを話し合っています。

ただ今回は現場の幹部が2名欠席されることから、普段より全社視点でのお話をというリクエストになった訳です。

起こり得る外部環境の悪化をきちんと織り込めるか

この顧問先様は卸売業と製造業という2つの事業を行い、売上35億円という会社です。特徴的な外部環境として、原価となる取扱商品に相場による価格変動がある、という点が挙げられます。扱う商品の相場は、低いときは400円を切りますが、高いときは700円近くまで上昇します。つまり仕入について年を通じて一番高いときと安いときでほぼ倍近い差が生じるのです。この会社にとって相場が高値で推移することは粗利益率の悪化に直結しますから、これが事業を行う上でアキレス腱であることは疑いようのない事実です。

事実、前期は相場高が響き、決算直前まで損益トントンに近い状況が続いておりました。最後の2か月で相場が落ち着いてきたので、最終着地は悪くないものとなりましたが、社長を始め社員の皆様もヤキモキすることが多かった1年でした。

今期は前期の終わりに相場が落ち着いて以降、終始相場が荒れることもなかったため、決算を待たずしてまずまずの利益を稼ぎ出しております。

粗利益率を見ると3期前に25%、2期前が23%、前期22%と徐々に落ちていました。今期は今のところ25%と3期前の水準に戻ってきました。まずは粗利益率が戻ってきたことに一同安堵しつつも、結局、相場が安定していた結果、良化したことが明らかだったということも会社の認識としてあります。

景気後退局面を見据えた準備

相場が悪いとき、つまり粗利益率が悪いときには皆、この状況を打開するためにどうしようかといろいろ考えるのですが、良くなった途端気が緩みがちです。でも外的要因で良くなった部分が大きいとすれば、外的要因で悪くなった時にどうするのかを考えなければなりません。悪くなるとどうしても「業界全体が悪い、日本経済が悪い、政府が悪い」というように外的要因に理由を求めてしまいます。確かに景気の影響は大きいですが、それを言ったところで、誰かが助けてくれるわけではありません。自分達の会社は自分達で守るしかありません。

会社業績が良いときに悪くなった時の準備をしておかなければ、本当に悪くなった時にはすでに会社の体力(人、モノ、金)に余裕がなくなりつつあり、社長も本業以外の所に頭を使わなければならなくなり、本業どころではなくなります。しかしこれでは本末転倒です。ましてや新聞を見ていても、いよいよ世界的に景気後退と騒がれつつある時期になってきたようです。

やはり業績がいいときにこそ、5年後10年後の未来を見据えて準備をする必要があるはずです。具体的に言えば、やはり「新商品・新業態の開発」です。新商品や新業態の開発と一言でいっても、それこそ1年や2年で実を結ぶことなど稀な話です。偶然に発見されることもあります。でも偶然が起きるのも、常に頭の中で新商品や新業態を探し求めているから、ある時パッと発見できたり、思いついたりするものなのではないでしょうか。

5年後10年後の未来を見据えた高付加価値な商品開発を

製造業であると新商品開発といっても開発コストがかかります。社員からは「今ヒット商品を持っていてうまくいっているのに、成功するかどうかわからないことにどうしてお金を使うのだ。そんなお金があるなら我々の給料を増やしてほしい。」などと陰口を叩かれることもあるのかもしれません。

しかしどれだけの社員が10年、20年後の会社の将来を考えているでしょうか。少なくとも上記のように言っている社員が会社の将来を深く考えているとは思えません。

やはり10年、20年後の将来を本気で考えられるのは社長とほんの少しの方だけです。20年後も儲けを出す会社でいるためには20年後の儲けに寄与する商品を準備しておかなければなりません。そのための新商品開発であり、将来の儲けのための開発コストなのではないでしょうか。

今回の会議でもこういったことをお話しました。粗利益率が上昇したのは良かったけれども、まず粗利益率25%を安定的に維持するために、つまり相場が悪い方にふれたとしても25%を維持するために商品力のある商品を新たに創りださなければならない、ということです。たとえ相場が高くなっても、売値が十分に高く(=儲けが多く)消費者が買ってくれるような商品の開発を今、すべきだということです。

こんなスーパーな商品あるのか、ということになるかもしれませんが、それに近い商品を創ることができなければ今は良くとも将来生き残ることが困難になるのはわかっているのですからやるしかありません。
今、ヒットしている商品でも早晩、類似商品が出てきたり、さらに安価な商品が出てきたり、消費者に飽きられたりといったことで儲けを出すのは厳しくなります。

ですからなんとか高付加価値商品を開発して、この会社のこの商品が欲しい、というような商品を開発できなければなかなか生き残るのが厳しい現実なのだろうと思います。

新商品の開発は、口に出すのは簡単ですが実行するのは本当に厳しいことです。誰もがやらなければならないとわかりつつも、なかなか捗らないものです。それでも将来のためには絶対に必要なことなのです。

今回も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。